19 フィアンセがいても愛を貫く?
「彼女の名前は泉川真奈だよ」
「えっ、真奈ちゃんと同じ中学だったの?」
「うん。もう永遠に会うことはないと思ってたけど、何と沙耶香さんが辞めた後、偶然に入れ替わるかのように入店したのが真奈ちゃんだったんだ。それも最近」
「いつも彼女をリクエストしてるみたいだし、楽しそうに話してるじゃない。ひょっとして長い時を経て恋が復活するのかな?何てロマンチックなんでしょう。それにこんなことって普通ありえないでしょ。運命ね」
「恋の復活は100%ありえないね。再会したのは本当に奇跡的だけど、私はあくまで彼女のただのお客さんに過ぎないのさ。それも人気の彼女の数多くのファンの一人ってわけさ。
それに彼女にはもうフィアンセがいるって言ってたし。昔彼女を振った私なんかと違って、私に振られた彼女は今は輝きを放っているのさ。眩しいったらありゃしない」
「フィアンセがいるってことだけど、略奪愛は?」
「他人事だと思って面白がってるでしょ。そんなことできないよ」
「以前NHKの朝ドラ見てたら、カッコイイアメリカ人のフィアンセがいる女の人が、日本の学校で働いているうちに、同僚の男の先生とだんだん恋仲になって結局フィアンセとは婚約解消して、結局同僚と結婚するって話があったわ。
人生は一度きりなんだから、好きだったらアタックしちゃえば。だってこれって絶対運命よ!」
「あのね、一昔前は多くの女の子は結婚に憧れていたさ。そしてディズニー映画とかでは、愛し合う男女、それが王子様とお姫様だったりするんだけど、幾多の困難を乗り越えて結ばれてめでたし、めでたし、なんていう映画を量産していたらしいけど、今はそういう映画はあんまりないんじゃないかな。どうしてか分かる?」
「私はいつか結婚したいな、と思ってるけど」
「結婚する相手に向かってよくお幸せにって言うわけだけど、実際は結婚してからが長いし、いろいろあって大変なわけで、誰もがそう感じてるってわけさ。結婚したら、あとはずっと楽しい幸せな日々になるなんて誰も思ってないんじゃないの。桐子ちゃんは結婚したら後はずっとハッピーだと思ってるの?」
「いや、そう言われると困っちゃうけど、だからこそ、結婚につながろうとつながらなかろうと彼女に愛を注ぐっていうのも素敵なんじゃないかな。生きてるって感じで。
それに婚約してるって言っても結婚はしてないんだから、その意味ではいわゆる不倫にはならないでしょうし」
「見かけによらず随分大胆なことを言うんだね。まあ、話としては面白かったけど、この話はこれでおしまいにしようね」




