18 桐山さんの辛い恋愛経験(2)
私たちは2人ともそうした声は気にしないようにしていたんだけど、私にはある悩みが生じていたんだ。
それは両親の古い考え方だ。父も母も受験と恋愛は両立しないと普段から豪語しているのだ。もちろん両方ともうまくいったら最高だ。
お互いに教え合って楽しく勉強し、しかも成績が伸び悩んだりしている時にはお互いに励まし合って共に困難を乗り越え、共に合格する。通う高校が別々だったとしても連絡を取り合い、時々デートしたり、それぞれの学校の文化祭の時には一緒にいろいろな展示などを見てまわり、アイスやたい焼きとか模擬店で美味しく楽しく食べる、そんなことができたら最高だ。
だけど今のままではきっと恋愛にどっぷり浸かって溺れてしまうような気がしたんだ。
『二兎を追う者は一兎をも得ず』と言うでしょ。受験と恋愛のうちどちらかを取るとしたら、自分は男だから100%受験だ。受験に失敗することは絶対できない。
このまま恋愛にのめり込みながら受験して失敗したら絶対後悔することになる。そんな風に考えてみると彼女とはお別れするしか道はないという結論に達した。
彼女はとっても可愛いし性格もいい。とっても惜しい。けれどもその時の自分は受験に100%集中しなければならなかったんだ。考え抜いたあげく、とっても辛いけど彼女を冷たく突き放すことにしたんだ」
「えーっ、嘘でしょ?」
「その日はまたいつものように放課後教室で二人っきりで勉強会をすることになっていた。私は教室にやや早めに来て本を読んでいた。
そこに彼女がルンルン気分でやってきて笑顔で話しかけてきたけど私はわざとそれを無視した。
彼女は私が本に夢中になってて聞こえなかったのだと思ってもう一度話しかけたが、私はまた無視した。
彼女は3度、4度と話しかけたのに私は応えなかった。そして遂に私の気持ちに気づいた彼女は泣きながら教室から出ていった。
「無視するなんてかわいそう!酷すぎる!桐山さんて冷たいのね!」
「何とでも言えよ。私だって辛かったんだ。心の中で泣きながらそうしたのさ。でも私は第一志望の高校に合格し、一流私立大に現役で行けたし、彼女も東大に現役合格したから、それで良かったんだって自分に言い聞かせるようにしてるんだ」
「でも、彼女が東大に合格したってどうして知ってるの?友達とかから聞いたの?」
「本人から聞いたのさ」
「本人ってどういうこと?涙のお別れしたんでしょ?」
「そうだね」
「よくわかんない。ちなみに彼女の名前って聞いてもいい?」
「いいよ。フルネームを言おうか?」
「知らない人のフルネームを言われても意味ないけど、でもどんな名前なのか興味あるな」
「彼女の名前は◯◯◯◯だよ」
「えっ!」
桐子はあまりの驚きに頭がクラクラしてしまった。




