16 危険なおばあちゃん
病院に行くなどおばあちゃんを桐子が車でどこかへ連れて行くときは思いがけないことをやらかしてくれるので気が抜けない。
あるとき、おばあちゃんを病院に連れて行った帰りに、後部座席に座っているおばあちゃんが、急に右の方にあるクリニックに寄りたいからおろしてくれ、と言っていきなりドアを開けようとしてガタッと音がした。
幸いにしてロックされていたのでドアは開かなかったが、車は普通に走っている最中であり、おばあちゃんは後部座席の右側に座っていて、すぐ右側のドアを開けようとしたので、それは道路のセンターラインのところであり、もしロックがかかっていなかったらおばあちゃんは車外に投げ出され、他の車に轢かれてしまうところだった。
また目的地に着いたところでいきなりドアを開けようとすることもあり、それでは隣の車にドアパンチしてしまう可能性がでてくるので、駐車場が近づいた時にはベルトを外さないように言って、車を止めたら、まだ降りないように何度も言っておばあちゃんのドアのところへ行き、ドアを開けたら、特に隣の車との空間が狭い時などには絶対にぶつからないように桐子がドアを支えて注意しておばあちゃんが降りるのを見守る。
実は桐子は高齢者の患者が多い整形外科に何度かおばあちゃんを連れて行った際、ドアパンチされてしまったことがある。それも新車でだ。
自分がいる時にドアパンチされても厄介だろうが、その時は当事者は既にいなかったのだ。ディーラーに持って行くと、相手は軽自動車で、車間距離は割とあったのに恐らく無造作に勢いよく開けたので、ドアの先が鋭く私の車のドアにぶつかったのだろうと推察され、絶対に本人は気づいているはずだということだった。
恐らく周囲のことなど気にしない高齢者がぶつけ、やばいのでトンズラしたのだろう。高齢者だとドアを開ける時に押さえていられないということもあるとディーラーさんが言っていた。
だから風が強い日も心配だ。ドアを開けた瞬間、強風でドアが開いてしまうことがあるし、スーパーのゴロゴロ転がすやつを駐車場の自分の車に持ってくる人も時折見かけるので、ドアを開けて買ったものを車に入れている時にゴロゴロを隣の車にぶつけてしまう可能性も大いにある。
だから桐子は車を駐車する時にはできるだけ遠くに止めるようにしている。それもできるだけ端っこに置くようにしている。端っこなら、ドアパンチされる確率が50%になるからだ。
ところでおばあちゃんは更に想定外のことをやってくれちゃうので気が抜けない。おばあちゃんは目的地に到着した時に、家の鍵をポケットから出して手に持つ癖がある。それは家に着いたらドアを開けるのに鍵を使うからだが、目的地が家でなくても鍵を出して握ってしまうので、車から降りる時に自分の体を支えるために鍵を持ったままの手で車体に触れることに気づいた。
慌てて鍵を預かった。鍵は金属なので、車体に傷がついてしまう恐れがあるからだ。




