15 ババアー?
ボン・クラージュの誤解が解けた後はフランソワーズはお客さんたちと楽しく会話していた。桐子は今夜はフランソワーズの指導係なのでもっぱら話しを聞いてばかりで、いつもと違って自分自身は話さないのだが、これはこれで楽しかった。
少し空いてきた時にフランソワーズに休憩させてあげようとママさんが提案し、必然的に桐子も休憩することになった。
洗い場のところで二人で休んでいると、そこにいた3人の女子がコップや皿などの洗いものをしたり、スマホをいじったりしながらおしゃべりしているのだが、その中でも年長者の加代さんが特に大きな声でしゃべりまくっていた。
するとフランソワーズは加代さんの方を向いて
“ Elle est bavarde. “ (エレ・バヴァルドウ)
とつぶやいた。
その瞬間加代さんは血相を変えて
「ババアーですって?いくら私が年長者だからってババアーはひどいんじゃない?」
またもや誤解だ。桐子は
「加代さん、彼女はエレ・バヴァルドウって言ったのよ。フランス語で「彼女はおしゃべりね」っていう意味なのよ。
「あっ、私、早とちりなところあるから、大きな声を出してごめんなさい。私の教養の無さが暴露されちゃった感じで恥ずかしいわ」
さっきから特に新人で外国人のフランソワーズに特に注意していたママさんは
「桐子さんのおかげで誤解がそれぞれ解けて良かったね。ありがとう」
ママさんに褒められたし、ちょっと異文化理解に貢献できたような感じがして桐子はうれしかったし、これまでフランス語を勉強してきて良かったと思った。
そういえばポルトガル語を学習していた友人がこんなことを言っていたっけ。日本でサッカーのW杯が行われた時、強豪のブラジルチームの選手たちがバスから降りてホテルに向かっている時、大勢の日本人フアンたちが集まっていて選手たちに向かっていろいろと呼びかけたが、選手たちは声援に全く反応しないで黙々とホテルに向かっていた。
そんな時、友人がポルトガル語で話しかけたら、何人もの選手が振り返って笑顔で応えてくれたそうだ。その時彼女は選手たちが反応してくれたことがとっても嬉しかったし、ポルトガル語を習っておいて本当に良かったと心底思ったそうだ。




