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14 フランソワーズ

今夜もいつものようにガールズバーに来ている。最近はおばあちゃんの血圧計測で振り回されていて頭がおかしくなりそうだったので、とにかく別世界であるここで、おばあちゃんのことは忘れてリフレッシュしたいと思っていた。


もう誰でもいいから話したい、と思ってコップを洗ったりする洗い場の方を見ると見慣れない女子がいた。日本人ではない。イギリス人だろうか?すると彼女はニコニコしながら桐子に近づいてきた。


ややたどたどしい日本語で

「はじめまして。私、フランソワーズです。よろしくお願いします」


フランソワーズはフランス人だった。赤いチェックのスカートがよく似合う美人だ。ママさんから、彼女は今日が初めてなので、彼女がお客さんと話している時には彼女の隣にいてわからないこととかあれば助けてあげて欲しいと言われた。


そんな風に言われると、桐子はちょっとしたベテランというかここでの仕事ぶりがまあまあ良く評価されているような気持ちになってちょっとうれしかった。


それに今夜は自分がお客さんの相手をするのではなく、隣で助けてあげればいい、それは多分お客さんの日本語がわからなかったりする時だろうと思われた。


実は桐子は大学でフランス語を専攻していて、あまりできる方ではなかったが、今でもラジオのフランス語講座を聞いているのだ。


桐子はテキストが無くても放送の内容はほぼ理解できるのでテキストは買わない。昔は150円とかで気楽に買えたが、昨今は600円くらいするのでとても手が届かないということでもある。


 フランソワーズはニコニコしながら、やや日本語のアクセントがおかしかったりはするものの、けっこう語彙力は豊富で、うまくコミュニケートしていた。


桐子は安心して話を聞いていた。お客さんは最近仕事で失敗をして上司にひどく叱られて落ち込んでいるというような話をしていた。するとフランソワーズはそれまで日本語で話していたのに急にフランス語で

“ Bon Courage!”(ボン・クラージュ)

と言った。


するとそれまでボソボソと下を向いて話していたお客さんが急に興奮して立ち上がり、フランソワーズに向かって叫んだ。


「人が落ち込んでるのにボンクラとは何事だ!」


ここは桐子の出番だ。

「お客さん、彼女はボン・クラージュって言ったんです。フランス語で「元気出して!」っていう意味なんですよ。お客さんを励ましてるんですよ」


「あっ、そうでしたか。急に怒鳴ってごめんなさい」

フランソワーズは若いのに怒鳴られても全く動揺することなく笑顔だった。


そして

“ Pas de problème.”

と笑顔でつぶやいた。桐子は

「問題ない、大丈夫って言ってますから気にしないでください」

とassistすることが できて嬉しかった。フランソワーズは日本語で喋っているが、たまにポンとフランス語が飛び出してしまうようだ。

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