1 前編のあらすじとプロローグ
桐子は24歳。生まれも育ちも徳島だが、合格した大学が東京だったので上京し、本当は一人で気ままなアパート暮らしをしたかったのだが、両親が心配性で、たまたま東京の神田に住んでいるおばあちゃん方の89歳のおばあちゃんの家で同居して6年目になる。
おじいちゃんは9年前に亡くなったので、桐子はおばあちゃんと二人っきりで暮らしている。
桐子はおばあちゃんを子供の頃から慕っており、仲良しなのだが、流石に毎日同じ階で一緒では気詰まりなので、普段は別々に気ままに暮らしている。
おばあちゃんは1階、桐子は2階で生活していて、玄関だけ共通でキッチン、トイレ、お風呂などはそれぞれの階にあり、食事など別々である。
困った時には助け合うという感じなのだ。
桐子が大学1、2年生の頃はおばあちゃんは大体普通に暮らしていて、杖などなくても何とかゆっくり歩くことができ、トイレも自分でできるのだが、3年生になった頃から認知症を発症したようで、記憶力が極端に弱くなってしまっているので普段の生活が大変になってきたのだ。
毎日おばあちゃんに振り回されてこのままでは精神的に病んでしまいそうで何とかしなければ、と思っていた時、地域のケアマネジャーさんと相談して週に3回、夜の7時から10時までヘルパーさんに来てもらうことになった。
この時間はあるガールズバーでバイトをしている。これが今の桐子にとって唯一の息抜きの場なのだ。
オレンジ色のライトの下でいろんな身の上のお客さんと時々美味しいお酒をご馳走になりながらおしゃべりしていると、現実のつらさを忘れて別世界に来たような感覚になれてリフレッシュできるのだ。
ここはカウンターをはさんで対面でおしゃべりをするところであり、触られたりとか変なことはされない、健全なお店だ。
お客さんたちの話を聞いていると、人間は誰でも何かしら辛さや悩みを抱えていて、でも一生懸命生きているんだなあとつくづく思うし、桐子にとって目から鱗の話があったり、励まされることや刺激になることもあってこの週に3回3時間はためになるし貴重でしかも楽しい、その上でお給料もいただける有意義な時間になっていた。
そんなお客さんの中に常連の桐山さんがいる。桐子が話をしていて一番楽しいのは彼だ。桐子は恋愛に関しては鈍感というかやや奥手のようで、自分では気づいていないが、桐山さんに対して淡い恋心が芽生えているようである。その証拠に桐山さんがいつもリクエスト(指名)する沙耶香さんと彼が楽しそうに話していると面白くないのだ。




