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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第二章:逆行 エルティナ

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③転:聖女不在


ライオネル様から召喚を否定され、それでも希望を捨てずに聖女様を待ち望む。

この世界を救うのは、私ではないから。

未来を知る誰かがいるから。

もしかすると聖女様は、もうこの世界に来ているのでは。

その可能性もある。


予告された魔王復活。

それに備え、教育されてきた聖女見習い。

そこから厳選された聖女候補。私はその中にいた。

けれど、聖女様の邪魔にならないようにしなければ。

自分に出来る限り支えとなれることがあるなら。



学園の入学式。

制服に身を包み、そこでの2年をどう過ごすのか。

気持ち新たにして。

待ち望んだ聖女様。そこに姿はなく。噂もなく。

それでも回避された最悪の未来は事実で。


聖女様がいない。

そして目に入ったのは。

過去で婚約者だった王子ユーリス。婚約者不在。

側近の騎士フリックと、何故か学園に通うことになった勇者ジークハルト。

未来が変わった。


勇者は学園にいなかった。

見つかったのは2年前。その間に何か違いが。

分からない。

ほぼ神殿で生活し、週一の帰省で町に出、時に長期の休みで領地を巡ることがあったけれど。

もちろん聖女様の情報が得られないかと、情報屋など手を尽くしてきた。

何が起きているのか。

未来は良い方向に変わったのだから、それは良い事。

誰も不幸にはなっていない。

それこそ女神レイラリュシエンヌ様の加護。

召喚のない世界。

これは、どこから変えられてしまったのか。

では、誰が未来回避しているのか。



「ユーリス様、この学園では身分の差もなく話しかけても良いと聞いて。これ、食べてください!」

勇気のある人もいるんだな、そう声の大きさに思わず目を向けた。

そこにいたのは、料理レシピを国民に流布しているという女生徒ユニアミ。

そう、過去にお母様が病で亡くなるのを回避した。

病に効果のある薬草を使った料理のレシピを作った人。

「あぁ、君はユミアミだね。ありがとう。立場は学生として同じなんだけど、どうしても毒見は必要なんだ。それでもいいなら、頂くよ。」

「もちろんです!私が入れなくても、誰が悪意を持っているかも分かりませんから。一口でも、食べた感想を下さい。」

私も帰省した際には、彼女のレシピを使用した専属の菓子店から買ったケーキやクッキーを食べた。

とても甘く、美味しかった。

悪意などないだろう。

薬草を使った料理も苦みなく、安価で誰もが食せるように配慮されたと伝え聞いた。

彼女が聖女なのだろうか。


ユミアミと目が合うと、私に向けたのは笑顔なのだけど違和感のある表情。

聖女様ではない。私は、そう思った。

私には関係のない人達。私は、私に出来ることをする。


学園には結界。

それは最近、勇者と共に行動している魔法使いが施したのだと聞いた。

魔法使いマリー。出身地不明。

初心者の森で原因不明の火事があり、その時に水魔法で大災害にならずに済んだ。

その後に、近くの町で冒険者登録。

勇者として認定を受ける前のジークハルトと出会い、パーティーを組んで依頼を受けていた。

学園の魔法の試験で一番の成績。

魔法は座学ではどうしようもない。生まれ持った才能、能力。

座学では一番をとれるけれど、同点の優秀な生徒もいる。

この国では歴史的にも珍しい双子。

姉妹の妹の方、オリアンヌ。

姉には魔力がなく、妹と双子で能力が開花しないとも言い切れず学園に二人で入学の許可が出たのだ。

オリアンヌは、以前の無表情だったライオネル様に似ている。

能力のない姉を虐げていると噂されているが。噂は噂。


私には関係ない。

ここには聖女リセ様がいないのだから。

聖女不在。

召喚はない。それが何を意味するのか。

焦りが生じる。

女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けたのは。


『“あなた”に加護を与えましょう』


私。

聖女は。

嘘だ!私はリセ様を尊敬している。

リセ様以外に聖女などいない。いるかもしれない未来を回避した誰か。

それもリセ様じゃないなら。まして。

あぁ、誰にも告げず。必死で。

逃げていたんだ。

出来る限りを足掻いてきたけれど。

自分が聖女になるなど、許されない。自分が許さない。

けれど。


「エルティナ、体調が悪いのですか?授業は受けずとも、もうあなたには必要ない時間。休むことも大事ですよ。」

なんて甘いことを言うのだろう。

魔王の復活の猶予など、あってないような時間。無駄には出来ない。

ここに居る意味。それは。

「ライオネル様、聖女様がいません。私の待ち望んだ方がいないのです。私は、その方を支えるためにここまで来ました。無駄になるのでしょうか。私は、何も出来ないのでしょうか。」

情けなさ。弱さ。未熟さ。

頑張って来たけれど。

涙が溢れ、零れ落ちる。

それをライオネル様が指で拭い。私の頬に手を当てて。

「私はあなたに何度も言ってきました。これから何度でも言います。あなたが聖女です。もう見習いでも候補でもありません。女神レイラリュシエンヌ様の加護により、決定した正真正銘の聖女。……聖女エルティナよ、涙はこれが最後です。次に流すのは、この世界を救った喜びの涙しか許されません。」


この世界にリセ様はいない。

『あなたに加護を与えましょう』

世界を救うのは私だった。




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