表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第七章:未来人 田中 地球(たなか そら)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/31

⑤レジェス・魔法使いマリーと勇者ジークハルト


初心者の森。

ここでの火災を最小限に抑える。しかし邪魔はしない。

双子の姉、適性のなかったガーネットが膨大な水の魔法で消火するのを見守る。

幼いマリーは、手のひらを上にではなく。真っすぐ前に向け。火の魔法を発動させた。

試し打ち。それでも魔力の多さに、炎は木々を呑み込んでいく。

前もって偽の調査の依頼で集めた冒険者たちに、指示を出す。

事前に調査の為、周辺に近づかないように勧告もあった。

被害は最小限。

火災と水魔法での消火。これは、病蔓延の薬を繁殖させるには必須条件。

なくてはならないイベント。シナリオ通り。

初めて魔力を使い、火災を目にして。

幼い頃のマリーには混乱と恐怖の出来事だっただろう。

倒れたマリーを抱え、ギルドのある町に戻る。

旅館の一室を借り、ベッドに寝かせた。

「本来なら、あなたもこの世界に来られないように遮断する事も可能。ですが、私が選んだのは。この世界にあなたを留める事だった。あの火災で、本来なら多くの冒険者が犠牲になり。その原因が魔法と知った私は、あなたに憎しみを宿した。死して当然と思う事も。……幼いあなたを目にし、生じたのは後悔。出来れば災害を起こす前に、あなたに出会って。何の障害もなく自由に魔法を使ってくれるのなら。……火災によって、結果的に病の蔓延を防ぐ薬が育つ環境が整った。火災による死傷者は回避できる。火災で亡くなった父のかたきとして殺されるなど。俺が許さない。」

何度も繰り返し、記憶さえあれば回避できたであろう最悪の結末。

なんとかしてあげたいと、願うほどに。

マリーは恐怖があろうと魔法を使う事を選んできた。

それは純粋さ故。

この世界で生き。本当は帰りたいと願ったのを知っている。元の世界に。

君が帰ることを諦めたのを目にしても、俺は何も言えなかった。

誰かが自分の使った魔法で死んだと、理解したから。

その怒りを買って殺され。それでも。俺が君を願ってしまったから。

俺達を誰が引き合わせたのか。


初心者の森。マリーが立っていた場所に、他の者の使用した魔法痕。

それは宇宙船による召喚ではなく。転移の魔法。

誰かがマリーをこの世界に呼んだ。

そして過酷な運命を背負わせた。

許さない。見つけ出して、俺が殺す。

「レジェス先生、殺気立ってるねぇ。」

「君は。」

声がする方に視線を向けると、小さな少年。

弓矢を背負い。

「俺は将来、任命されるかどうか分からない勇者候補の一人。ジークハルト。まぁ、なりは子どもだけど。記憶がある分、年寄り臭くなるね。」

そう言って近づき、俺が調べていた魔法陣の痕に触れる。

「ふん。使いの仕業だな。」

「知っているのか。」

詰め寄る俺に、冷静になるよう手で押され。

「殺せないよ、あなたには。肉体がない神の使い。天使の力だ。よく見ろ。魔法陣に似ているけど解読できないだろ。……本来、人は魔法を使えないはずなんだよね。魔術は神に禁じられている。」

その意味は。何故、そんなことを知っているのか。

魔法について長年研究してきた俺が知らない情報。

しかも魔法の適性が無いジークハルト。勇者候補に挙がったのは知っている。

「ジークハルト、君も繰り返しの中に居るのか。」

「あぁ。どんなに足掻いても、繰り返す。その結果、見つけたよ。君と同じように守りたい存在を。ずっと探していた“人”だ。あ、心配しなくてもマリーじゃない。これから依頼を一緒に受けるのは俺だけど。彼女にとっても俺は手段でしかない。……さて、どうするか。」

ジークハルトは空を見上げ。睨むように見つめ続ける。

どうするか。この魔法陣がジークハルトの言うように、天使によるものなら。

神の領域。俺には殺せない。

この状況を受け入れるしかないのか。俺に出来る事は何か。

「マリーを、この世界から解放する方法はないのか。」

「するつもりもないくせに。よく言うよ。」

最初に生じた怒りで、追い出しておけば良かったのだろうか。

それでも俺の魔法では限界がある。

「ジークハルト、君はどうするんだ?」

「そうだね。今回は勇者になれるだろう。それなら決まっている運命に従って、魔王を討伐するよ。」

俺に視線を向けたジークハルトの表情は、暗く見えた。

迷いでもあるのだろうか。

「明日、マリーは疑問もなく冒険者登録をする。幼さ。純粋さ。この世界を救うのだと。……残酷な希望を持たせて、吐き気がするね。この物語は佳境だよ。」

ジークハルトが言うように、マリーは純粋。

元の世界で得た知識。読んだ情報。最悪な状況など頭にもない。

だからこそ。

「マリーには火を使わせるな。手に入れようとするアイテムは、今回、本来の持ち主に渡す。……魂。炎の灯。触れて暴走するなど、マリーは知らないからね。」

あぁ、繰り返しの度に。

この世界を救えるのだと。入手して発動させた後は。魔力暴走。

「俺は、マリーを救えるかな?」

「救うのは、この世界だろ。」

「この世界が滅んでも、彼女を救う。俺が命を懸けて。」

「やめろ。言葉には力がある。それが魔法なんだ。……先に言う。俺はマリーを守らない。共に冒険をするのは、マリーが組み込まれたシナリオだから。」

マリーを救うのは俺だ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ