表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第七章:未来人 田中 地球(たなか そら)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/31

④聖女エルティナと神官ライオネルと誰か


私は聖女見習いに立候補し、神官ライオネル様の元でまた学ぶ。

「聖女エルティナよ。」

「ライオネル様、まだ私は見習いですよ。」

そう答えると、ライオネル様は少し口元を緩め。

「私にとって、聖女はあなた一人だと告げたのを覚えておられるでしょうか。」

覚えている。決して忘れない。

けれど。

「いいえ、私の中で聖女はリセ様だけです。誰が、何と言おうと。だから。あなたには聖女と呼ばれるより、ただの見習いエルティナでいさせてください。」

聖女は生贄。私のこの恋心は、永遠に叶わない。

あなたの為にも命を懸ける。あなたはこの国の神官。未来を担う一人だから。

「私を守って死ぬなど、決して言わないでくださいね。」

ライオネル様は口を閉ざし、私をじっと見つめ。

「わかりました。」

表情の読めない顔。それでいい。

「エルティナ、ギルドからの報告がありました。ユニアミとロレインの父、そして勇者ジークハルトの父親を含め、冒険者数名を無事保護。火災による被害は最小限に止めることに成功したとの事です。」

火災は必要。

魔法使いマリーには悪いけど、少しのトラウマは我慢してもらわないと。

転移者だからか、マリーにはループの記憶が残ることがなかった。

私にしても、残ることが希少。

全てを覚えていたのが王子ユーリス。

私の願いの元凶だからか。それも神の領域。

「今回の未来回避、ユニアミの全面支援を行うように。」

ユニアミしか知らない方法。所持できない種。

それは聖女リセ様からの支援。

「エルティナ、あなたが望むのはユーリスなのですか?」

「いいえ、私が望むのは国民の未来。ユーリスには、挫けている暇など与えてあげないわ。贅沢よ。望む者を常に隣にいるようにしているのですから。」

ユーリスはこの国の王に相応しい。

本当に国民の事を優先できる女性を見つけたのだから。

幾度と繰り返し、記憶に残る中。手放してあげることもできるのに。

ユニアミが、この世界で生きることを望むから。

私は聖女として生贄に相応しいだろうか。

罪を償う必要がある。許されない罪を犯し。

ライオネル様は神官。女神レイラリュシエンヌ様に使える。

人として転生したのなら、オリアンヌ様の元で仕えたいのではないのかしら。

「さぁ、エルティナ。記憶があるとはいえ、聖法の訓練はやり直しですよ。」

手を差し出され。私はその手を取る。

「神官ライオネル様、お手柔らかに。」

これくらい触れるのを許してくれるかしら。

あなたとの時間。自分が聖女に相応しくないのは理解した上で。

聖女リセ様に少しでも近づきたい。だから、この想いは。

「神官ライオネル様、私が臆病になったら。また逃げようとするなら。あなたが私を殺して欲しい。」

手を引く後ろ姿のライオネル様は、足も止めず。

前を見つめたまま。返事はなかった。

私はもう涙は流さない。泣いても未来は変わらなかった。

死ぬ度に繰り返すけれど。それももう終わり。

聖女リセ様は、この世界に一度しか来ていない。

それならあの人は。

誰…………



「エルティナ!」

名を呼ばれ、霞む視界。

倒れたのか、横になっている自分。

神官ライオネル様の腕に抱かれ、上から注がれる視線。

その表情が悲しくて。

思わず手を伸ばし、ライオネル様の頬に触れた。

「ごめんなさい、疲れが出たのかも。前にも、顔色が悪いと注意を受けたような気がするわ。駄目ね、体調管理も出来ないなんて。」

「いいえ、まだあなたは幼いのですよ。記憶を積み重ねているとはいえ。無理をさせてしまったのは私です。」

腕の中。この時が少しでも続くことを願ってしまう。

駄目だ、私に願う権利などない。

「ライオネル様、あなたには役目がありますよね。ユニアミの未来回避。行ってください。時間を無駄にしないで。」

もう二度と繰り返さないと誓ったから。

国民の誰も死んでほしくない。回避できるのなら。

私は目を閉じ、聖法を唱える。

回復の祝詞。

「……エルティナ、私はまだ神官になっていない時期なのをお忘れなく。」

口に何かが触れる感触。

目を開けると、間近にあるのはライオネル様の顔。

触れたのは。

「な、何を。そんな事をしては。」

「ふ。だから言いましたよね。まだ、私は神官になる前の見習いだと。きっと女神レイラリュシエンヌ様も許して下さるでしょう。いえ、許して下さらなければ彼女の邪魔をするのも良いでしょう。」

何を言っているのか。

見習いだから許される事ではない。

「ライオネル様、このことはなかったことにします。」

「いいえ、起こってしまったことを取り消すことなどできません。でしょう?」

そう。なかったことに出来るのなら。

けれど、それとこれは。

「ふふ。さぁ、あなたをベッドまで運びましょう。残念です、神官にならない未来なら。」

「聞こえないわ。何も聞こえない!」

この幼い一時を。私は願ってしまいそうになるから。

優しくしないで。この想いは絶たねばならない。

キスなど。忘れなければ。

ライオネル様は神官にならなければ。

これ以上、未来を変えるわけにはいかないから。

願ってはいけない。手に入れない。

……あれは偶然手に入ったものではない。

誰かが意図して私に持たせた。

それが誰だったのか、私の記憶にはなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ