表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第七章:未来人 田中 地球(たなか そら)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/31

③神の領域

ゲームでは、王子ユーリスには婚約者のエルティナがいた。

けれど隣に居たのは、現世記憶のあるユニアミ。転生者。

『そう、リセが戻った世界の少し未来に生きたユニアミの前世記憶。それがゲームであり、その知識がこの世界の人々を救う事に繋がる。全てに意味があるなら。この世界は消滅ではなく…………』

あぁ、これは魔法なのか。

ループで何があったのか。聞くよりも。

百聞は一見に如かず。確か、そんなことわざがあった気がする。





目覚めると、そこは自分が普段使用していたベッドの上。

手は震え、全身を伝う汗。熱が奪われるような寒さ。

思い出せるのは、手を伸ばした先に居る婚約者と聖女。

仲睦まじく寄り添い。自分に向ける婚約者の視線は鋭く、怒りの表情で。

声を張り上げて告げる。婚約破棄と、断罪の言葉。

否定する間もなく、そこで意識は途切れた。

一体、自分の身に何が起こったのか。

「お嬢様!あぁ、目覚めたのですね。」

ベッドで身を起こした私を見つけ、侍女が歓喜の表情で駆け寄る。

婚約破棄された私に。

まだこの家にとって、私の価値などあるのだろうか。

あんな断罪を大勢が目にし、噂もあっという間に広がっただろう。

「そうだわ、皆に知らせなければ。主治医も呼んで……」

取り乱し、慌てて走り去る侍女に問う時間もなく。

私はあの後、気を失ったのだろうか。

しかし何か違和感がある。

汗を拭おうと、手をこめかみに当てると髪の毛先が腕に触れた。

横髪が短い。血の気が引くのが自分でも分かる。

髪を切られてしまった?いつ。どうして。

理解できない状況に言い表せない恐怖。

ベッドから降り、鏡の前に走って向かう。

化粧台の鏡。目にしたのは幼い顔の私。

手を両頬に恐る恐る。指先が触れる感覚。

込み上げた感情に伴う叫び声が、部屋に響いた。

……私は時を遡ったのだ…………



これは何度目だろうか。

王との謁見。

「エルティナよ、今回は記憶があるか?」

「はい。幾度となく繰り返した記憶があります。リセ様はいない。繰り返す原因は私。偶然見つけた星形の石。それに願ったのです。やり直したいと。」

「やはり。女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けたのはエルティナ、そなたであったか。」

「それでも私は聖女ではありません。リセ様以外の誰かを聖女と認めることなど、出来ません。」

「聖女リセがこの世界に来ることは、二度とない。一度、この世界の犠牲になったのだ。それを救ったのも、エルティナの願い故。もう繰り返す必要などない。間違いを犯したのはユーリス。悔いている。繰り返す度に。許してやってくれないか。」

私は首を振る。

許すなど。私の犯した罪の方が、余程。

「私に出来ることをします。ユーリスには、相応しい女性が現れました。聖女リセ様の意志を継ぎ、未来を回避した女性。私に救えなかった国民を救ったのです。」

「ユニアミが転生者だと知っていたか。」

「リセ様に近い存在だと思いました。未来を回避したのですから。それから何度目かに、魔法使いマリーが言っていたのを聞いたのです。召喚。転移。転生。前世。神の領域。私は、女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けたのではありません。魂に触れたのです。自分の願いを叶えてしまった。その結果が……」

私の死を回避し、リセ様の死を回避したとはいえ。

繰り返す意味は。もうない。

「エルティナよ、希少な双子を覚えているか。」

「……ガーネットとオリアンヌ。魔王討伐に参加したのを記憶しております。」

「前回、勇者ジークハルトから報告を受けたのだが。女神レイラリュシエンヌ様の加護の生まれ変わりが、オリアンヌだと判明した。」

聖女の適性者。オリアンヌが。

「しかし、彼女は。」

魔法を使う事を減らし、剣技に没頭していた。表情も無く。

姉、ガーネットを守るように。常に。

「では、姉の。双子の姉のガーネットは何者ですか。」

「勇者ジークハルトが言うには、ガーネットとジークハルト。オリアンヌと、ユニアミの兄ロレインは。天使から人に転生した者たちなのだと。……オリアンヌは女神レイラリュシエンヌ様であり、ロレインは魔王と呼ばれるリューテサッセウス。しかし、魔王は別にいる。もう人知を超えた領域なのだ。それが今回、どう影響が出るのか未だに分からぬ。」

王は頭を抱え、過去に戻って若返っているはずなのに。

心労なのか老けて見えた。

神の領域。私は触れてはいけないものに触れてしまった。

前に聖女は生贄だと、魔法使いマリーが言っていた。それは。

「わかりました。今回、私が聖女になりましょう。決して逃げません。魔王討伐に向け、私がこの世界を人として。担うはずだった国民の為に命を掛けます。進んで生贄になりましょう。今回で最後。必ず、終わらせてみます。この世界を救うのは私エルティナ。回避した死をもって、この世界の為に死にましょう。」

私の決意。

これが神の領域だと言われても。

この世界で生きているのは私達、人だから。

例え滅んでも、消滅するにしても。

最後まで諦めずに、抗ってみせる。この世界の為に。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ