②逆行とループ
俺の登場により、会議が一時中断。
魔王討伐が失敗すれば、またループしてしまう可能性もあるというのに。
そもそも、何故ループするのか。
いや、時間軸を歪めたのは、リセの召喚。宇宙船による時間干渉。
「待たせてすまない。君が聖女リセの子孫と聞いた。」
王との謁見。
しかし俺はこの世界の人間ではなく、被害者遺族。
リセが生きているから俺がいる。
もしループの中に死んだ世界があるなら、俺は存在しない。
「あぁ、失礼承知で言わせてもらう。時間に干渉した責任を、どうとるつもりだ?」
「この世界の消滅。それが神の望む結末であれば、滅びをもって償うことになるだろう。」
異界世紀末。それは神に抗って世界を救うということか?
「この世界は、女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けた者が救うのでは?」
それがゲームの根幹。
リセの記したシナリオ。アイテム一つで覆る。
「女神レイラリュシエンヌ様は人に転生し、この世界にいる。当人が聖女ではないと言うのだ。……繰り返されるこの時間を、共に生き。魔王が何なのか。最後の聖女が誰なのか。きっと今回で終わりを迎えるだろう。」
王は表情暗く。言葉を連ねていく。
そのどれも、俺には理解できない事だった。
アイテム一つでゲームクリアできるヌルゲー。
それは。この現実とはかけ離れたもの。
女神が人に転生して、存在する?加護を与える立場が。
人になれば、加護は?
この世界を救う聖女ではない。ここにリセはいない。
何度か繰り返す中。この世界が滅ぶなら。星が消滅するなら。
魔王とは何だ?
「そなたの怒りは当然だ。一度、リセはこの世界で死んだのだから。申し訳ないと思っている。学園で魔術を教えていたレジェスが、リセに加護の魔法を与えていたのだ。そのおかげで、リセの元の世界と切り離され……」
あぁ。あの額にキスを受けていたのは。
あれはリセを、この世界から切り離すためだったのか。
この世界を救う為なら、どんな手を使っても。それは誰しも願う事。
誰かを犠牲にしても。
それが魔王なのか聖女なのか。女神なのか。
俺には何が出来るだろうか。
「王よ、一度はこの世界の聖女になったリセ。その子孫として、何が出来るだろうか。ここに来られたのも、何かの縁。運命の歯車になるだろうか。」
「きっとなるだろう。リセは選ばれた聖女なのだから。」
誰に選ばれたのだろうか。
女神レイラリュシエンヌ様が人になっているなら。
神はこの世界、星を消滅させようとしているのなら。
繰り返す意味は。
世紀末を超えるエンディングがあるのかもしれない。
王との謁見を終え。
食事を勧められて、場所を移動した。
ゲームで見た光景。
大きな机に、様々な料理が並び。見た事のあるお菓子や、昔のリセ時代の料理。
まさか、こんな形で食べることになるとは。
会議に参加していた人も来ると言っていた。
ゲームで見た人も当然いるだろう。そして女神から転生した人も。
ドアが開き、次々に入ってくる人。会釈に応じ。
椅子に座るように勧められたので、席に着く。
「冷めないうちに、どうぞ。遠慮なく食べてください、ソラ。」
王子だろう。その隣にいるのは、婚約者?
スチルとは違うような。
「私はユーリス、隣に居るのは婚約者ユニアミ。この並んだ料理のレシピを考案した者だ。」
この料理を。外見は明らかに日本人ではない。
この世界の住人。転生者。
「後ろで待機しているのは、さっきソラと一緒に居たフリック。この国の騎士。他の者の紹介は、食べ終わった後にしよう。会議に、君も参加して欲しいからね。」
俺は料理を口に運び、味わう。
美味しい。俺達が過去に失ったもの。それがここにある。その意味は。
俺に出来る事。後でユニアミからレシピをもらおう。
きっと俺たちの世界の未来を変える。ここに来た意味。
リセは一度、この世界で死んだ。
ゲームじゃない。俺は。
食事を終え、会議の場所に誘導される。
その道のり、移動する人達を観察する。女神から転生したのは誰だろうか。
背中を走る寒気。
足を止め、視線の感じるその場に目を向けるのも戸惑う。
「おい、リセ様の子孫に何かしたら許さないからな。」
「ん?ふふ。牽制は必要かな、と。」
牽制ってレベルじゃない殺気。
女性の注意のおかげか、和らいだけれど。
今後に注意が必要かと、恐る恐る目を向ける。
当然、こちらを睨んでいただろう。
目が合って、思いっきり逸らす。
ゲームの登場人物にはいない。
視界の端に見えた女性も、見覚えがない。
会議の一室に入り。
目の前が急に暗くなるのを感じ。俺はそのまま意識を失った。
料理に何か入っていたのだろうか……
この世界、俺は部外者だから?
この世界を救えずに死んだリセは、最期に何を考えただろうか。
ゲーム作成に携わり、シナリオを書いた。彼女の夢は叶ったのだと。
エンディングの最後に流れた。彼女の記憶は、この世界レティッシラを救ったのだと。
生き残って、元の世界に戻ったのだと。後世に残っている。
実際は違った。
クリア必須のアイテムでは、この世界は救えなかったことになる。
魔法使いマリーが持っていたアイテム。それは。
この世界を救えなかったのだとすれば。救えるのは。




