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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第七章:未来人 田中 地球(たなか そら)

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①召喚技術


宇宙船から降り立ち、伸びをする。

まぁ、ケンカ上等で目立つ場所に着地したのだけど。

周りを取り囲む兵。緊急招集で来たって感じのまだ少数。

これから時間の経過と共に増えるのだろうな。

「ねぇ。神官ライオネル様が居たら話をしたいんだよね。」

叫んで声を掛ける。言葉は通じる前提。

俺の先祖は、この世界で言語を学ばなかったから。

「そちらの名を告げよ!」

当然か。

「俺の名前は、田中たなか 地球そら。聖女様の子孫だ。ライオネル様は、俺を知らないかもしれないけどね。」

聖女様を語るのは、命懸け。

ライオネル様がいないとか、聖女とはなんだと言われたら終わりだな。

遠巻きに取り囲んだ人垣。そこを割って登場した騎士。

もしかして。

「あんた、もしかしてフリック様?」

「そうだ、お前を王城まで案内するよう命を受けた。」

設定どおり、乱暴な物言い。

楽しめそうだな。

騎士フリックの監視の元、馬車に乗せられて移動する道中。

「ねぇねぇ、聖女リセは知ってる?」

「……リセ様は一度だけ、召喚で来られた聖女様だな。その子孫なのか?」

お、意味深な表情。

一度だけ。その意味も気になるけれど。

「うん、この世界を舞台にしたゲームを作ったんだよ。異世界召喚。そう聞いていたけれど。なんてことはない。選んだ時代の地球人を、宇宙船で誘拐していたんだ。君たちの星の人間が。」

俺は足を組み、フリックがどう答えるのか観察する。

「リセ様は、俺にとって唯一の聖女様だ。帰りたいと泣かれ、それでも役目を全うしようとされた。子孫のあなたにとっては、一歩間違えば存在を消され、未来を失う事態。腹立ちや怒りは当然。」

頭を下げ、謝罪を述べるフリック。

ゲームだと脳筋タイプ。思ったより感情的にならないのだと、意外だった。

「そ。君にとって、唯一と言われる聖女ね。最高の誉め言葉だ。ありがとう。来て良かったよ。他の人にも会いたいんだ。」

そう告げた俺に、悲しそうな表情。

「え、何。幽閉されちゃう感じ?俺、誰にも会わずに裁判的な死刑とか?」

「いえ、丁重な御もてなしを。ただ。この世界は、世紀末なのです。」

「あぁ、魔王復活するあれか。けど、倒す星形のアイテムがあれば簡単なんじゃ。あ、これはネタバレ?知らない情報なの?」

思わず口を手で押さえ。馬車の中なのに、周りを見てしまう。

「星形のアイテムは、クリア必須のアイテムではなく崩壊の序章を告げるものだったのです。」

そこからフリックが、俺に懐かしむように語る。

今、気づいたけれど。フリックは設定より、大人びた年齢に思う。

「始まりは、どこだったのか。魔王は復活し、魔獣や魔物があらゆる国を攻め進行を続けています。後手に回った人間達は守りに徹するのが精一杯。本来、その状況になる前に討伐に選ばれた者たちが旅をしているはずでした。しかし、手を打とうとする度にループしていたのです。それに気づき。今まさに、どう解決するかの会議をしてる最中。」

ループ。それはとんでもない時に来てしまった。

巻き込まれたら、帰れないかもしれない。逃げる準備もしてかないとな。

「これは、きっとリセ様の導き。是非とも知恵をお借りしたい。」

「そう言われても、知っているのはゲームになった設定だけだよ?」

先祖のリセから見れば、かなり発展した後代の未来とはいえ。

この星の町並みは古代の洋風なのに、宇宙船まである。

リセの残した記述。持ち帰った物から検出された星の情報。

それを辿って来てみれば。遠い宇宙の現代。

ここに来るまで、どれほどの年月と開発技術が必要だったか。

ここは異世界といえばそうだけど。宇宙人。同じ人間。

この世界は、人型の世界。数多くの星が存在し、それは天界の使い達によって管理されている。

その管理次第では消滅するのだと、信仰心など希少なものになった時代に。

当然、陰謀論のような混ぜられた情報が交錯し。信じない者たちも存在する。

地球も世紀末がなかったわけじゃない。

日本は国として存続し、田中の苗字も受け継がれ。

名は時代を象徴するように変化するけど、漢字は残り。

俺に、この世界で何が出来るだろうか。

「フリック、あのさぁ。後どれくらいで着く?宇宙船あるんだよね?なんで馬車なの。」

「ふ。バカだな、この世界では急ぐ必要性など……あ。」

そう、宇宙船があれば。空から攻撃できるのではないだろうか。

魔法より、科学の力も使えば。

「宇宙船は、召喚の為のものだからなぁ。考えもしなかったわ。あはは。」

宇宙空間にも耐えられる。時も超える。

ループするなら、その原理を探れば。

その知識、少し分けて欲しい。

宇宙の長旅は可能になったけれど、まだ未来や過去を渡る技術はないから。

「さぁ、城下町に入りましたが。いかがですか、ソラ。感想は。」

何を期待しているのか。

フリックは意味ありげな笑顔。

「ふふっ。昔に聞いた異世界召喚。転移。俺も、この世界を救うために一肌脱ぐつもりさ。」




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