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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第六章:転移者 マリー

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②承:存在意義


私は監視対象なのか、寮に入り学園生活を強いられた。

ここにいる意味。そんなの私が知りたい。

来たくて来たわけじゃない。

本当に?

ラノベを夢見た。異世界転生。異世界転移。冒険にチート。

転移者になれた事、ここに来られた事が嬉しかった。

けれど現実は違う。

もし転移が私の能力であれば、望めば帰れるはず。

どんなに願っただろうか。

本当は分かっている。これはゲームではない現実。

では、誰が?


『女神レイラリュシエンヌ様の加護を受けし者が世界を救う』。

私には加護がない。

それどころか、秩序を乱したかもしれない。

勇者の年齢が違う。

神官見習いのライオネル様。レジェス先生は設定でいけば、年齢が近いのだろうけど。

勇者ジークハルトは、私と同じ15。学園に通える年齢。

それなのに。まだ勇者として発見されず、任命も受けず。

入学のチャンスは流れた。

聖女は召喚される。秘匿された情報。

それはいつ?

私は、聖女適性の検査結果が出たと呼び出され。神殿に向かう。

聖女ではないと、レジェス先生に言われてしまったのに。今更。

「適性があることが判明しました。さて、あなたは火を怖がるそうですね。過去、初心者の森に火災が生じたのですが。それはあなたが原因ですか?」

「ごめんなさい、転移したばかりで。魔法が使えるのだと思うと嬉しくて。向こうの世界で知った知識を、軽い気持ちで試しました。」

「そうですか。幸い、誰も被害に遭いませんでした。レジェスが実習で、近くに居たのですよ。倒れたあなたを救護したのは彼です。」

レジェス先生が。

あの火災で誰も被害がなかった。

考えもしなかった。あの炎で、自分が死ぬかもしれない恐怖で。

誰かが死ぬなんて思いもしなかった。

「適性がある?でも聖女様は召喚されるのでしょう?私ではない。」

「それを決めるのは、女神レイラリュシエンヌ様です。」

私が聖女に相応しくないのは明らか。

転移に浮かれ、安易に森の中で火の魔法を使い。制御も出来ず。

対処もせずに気を失った。

それから火の魔法を使うのが怖い。

周辺の木を一瞬で覆い尽くしたように、自分もそうなるのではないかと。

「来なさい、制御を教えます。応用すれば、あなたの防御魔法は聖法として結界を施せるでしょう。」

いつからいたのか、レジェス先生が扉の前に立ち。

私を呼び、待つこともせずに背を向ける。

あぁ、推しに嫌われてしまった。

私に出来る事。

ゲーム『レティッシラの聖女~女神の加護を受けし者は世界を救う~』。

何度も周回して、推し以外の攻略もした。

お気に入りのスチルやシナリオが頭にある。

アイテムも魔法もあるのに。お金だけを使い、自分の生活に充てた。

私が何の為にここにいるのか?

そんなの私が楽しむ為だと思っていた。

だって、ラノベでも王命が嫌で城から逃げ出してスローライフ。

代役が居て、本来の役目から外れて自由になるじゃない。

チートで誰からも好かれ、可愛いモフモフに囲まれて。

このゲームだって。

現実は違った。

私は誰かを殺していたかもしれない。

もう元の世界では生きられない。人殺しなど許されない。

私は魔法の制御も出来ず、チートにもなれない。


ナゼ、コノセカイニキタノカ。


「マリー。あなたの本当の名は?」

私は顔を上げる。

レジェス先生の後を付いて来て、辿り着いたのは学園の屋上。

自分の情けなさに、目に涙が溢れ。視界が霞む。

零れ落ち、頬を伝う涙は熱を伴い。外気に触れて、冷たくなって地面に落ちた。

伊井田いいだ 真理まり。背が低いけれど、学園に通える年齢。冒険者登録も、読んだ創作の物語に感化された。ごめんなさい。この世界がゲームだと、私の知っている情報だけで楽しく生きられるのだと思った。ごめんなさい。……私の役目。もし聖女になる事を求めるのであれば、責任をとって生贄になる。」

真理まり、それは言ってはいけない。聖女の役割は、そこで終わりではないのをあなたは知っているはずです。」

これはゲームじゃない。

クリアに必要なアイテムが手元にない。設定の場所になかった。

この世界は滅びてしまうかもしれない。

私は。帰る場所も、家族もいないこの世界で死ぬ。

「ふう。真理……いえ、魔法使いマリー。あなたが選んだのは聖女ではなく、魔法使い。それならば、魔法を教える教師である私は、あなたを立派な魔法使いに仕上げる義務があります。さぁ、涙を拭って。空を見上げなさい。」

渡されたハンカチを目元に当て、少し涙も乾いてきたように思う。

目を上げ、空を見つめる。

地球と同じ。名前は異なるけれど、日が沈み。夕焼け。

「綺麗。」

「この世界を、救う一人に。なってくれませんか?」

この世界を救う一人に。

そう。冒険に。勇者と一緒に魔王を討伐する為に。

ゲームに登場した王子、騎士、神官ライオネル様。そしてレジェス先生。

きっと一緒に来てくれる。

私が、その一人に相応しくなれば。

「なりたいです。私がこの世界に来た意味。もう元の世界に戻る資格もないと覚悟したから。火も、使いこなしてみせる。」

「ふふ。火は使わなくてもいいですよ。私が補佐するので、不足などありません。」

私は、この世界を救う一人になる。




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