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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第六章:転移者 マリー

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①起:魔法使い


私の名前は、伊井田いいだ 真理まり

この世界は、お気に入りのゲーム『レティッシラの聖女~女神の加護を受けし者は世界を救う~』。

転移した場所は、初心者の森だった。

ラノベ大好きな私は、すぐに悟る。これが異世界転移だと。

「ステータスオープン。」

漫画で見た事があるような透明の画面。

浮かび上がったように見える文字。

並んだ属性の違う魔法。スキル一覧。

あぁ、私は魔法が使えるんだ!

それにお金やアイテムがゲームをやり込んだ時のまま。

この世界で生きていける。

私は手のひらを前に向け、叫ぶ。

「ファイアーボール。」

火球が一直線に、森の中を突き抜けた。

その線上、並んだ木々が炎を纏い。一気に燃え広がった。

茫然とする。

急速な熱の上昇。息苦しさ。

これはゲームではなく、現実。

混乱と恐怖。

私はその場で意識を失った。


神殿の礼拝堂。

女神レイラリュシエンヌ様の像の足台。

そこに隠し扉があり、その中にはゲームをクリアする必須アイテムがある。

星の形をした石。

それは使用時に眩く光り、魔王を一撃で倒せるのだ。

ヌルゲー。だってこれは乙女ゲーム。

重要なのは、誰と仲良くなってハッピーエンドを迎えるか。だから。

私の推しは学園の魔法を教えるレジェス先生。

だからこの世界で魔法使いになる。

他のキャラが嫌いなわけない。

聖女が召喚され、誰かと結ばれる。

でも、その役割は生贄。

私は転移者だから、自分の好きに生きる。

お金は十分にあるから。この世界の知識も。

誰と誰がハッピーエンドになるのか、私の関心はそこだった。

異世界を満喫するには、王道の冒険者登録。

推薦の必要がない年齢は15。

背が低いから登録時に疑われたけれど、小説や漫画で見た嘘を吐いていないか調べるアイテムが反応せず。

冒険者カード発行時、私の血液で表示された登録情報。

公に見える情報で、実年齢は証明された。

後は学園にどうやって入るか。

勇者ジークハルトは分岐で、学園に通うルートが少ない。

私の推しは、レジェス先生。他はどうでもいい。

ジークハルトと同じ依頼を受けたりすれば、一緒に学園に入れるかもしれない。

お金には困っていないし、アイテムもある。

火の魔法は怖い。他の魔法で魔物を倒そう。

数人で討伐する依頼を受け、防御や攻撃力を上げるバフ担当の魔法使いとして参加し、攻撃魔法を使う人から学ぶ。

場数を増やし、依頼とは別に誰にも見られない場所で、弱い魔獣を倒す練習をした。

レベルはカンストして経験値など必要ないのに。

現実は手が震える。魔力の調整も出来ない。

勇者と認められる前のジークハルトを見つけ、積極的に行動を共にした。

防御魔法が認められ、私は神殿に呼ばれた。

神官見習いの幼いライオネル様。かわいい。

あれ?勇者ライオネル様と年齢に差がある?この世界は。

聖女の適性を調べられ、礼拝堂に入ることを許された。

チャンスが到来した。

膝をつき、女神レイラリュシエンヌ様に祈る。

像に近づく許可を頂き、隙を見て隠し扉を探したけれど見つからなかった。

焦って見逃すようなものではない。

隠し場所が違うのか、そこにクリア必須のアイテムはなかった。

ゲームと違う。クリアできないかもしれない。

その恐怖。


その後、学園に連れて行かれ。

推しに出会う。魔法を教えてくれるレジェス先生。

ゲームの設定より若い。

「来なさい、結界を施せるか試そう。」

学園の中庭。先に準備が整った手書きの魔法陣。

その中央に立つように促され。

「手を出しなさい。平を上に。魔法使いでありながら、あなたには基本知識がない。出生場所不明。あなたはどこから来たのですか。」

それは言ってもいいのだろうか。

「違う世界から。多分、召喚される聖女様と同じ場所。私は転移者。」

レジェス先生は私を見つめ、真偽を確かめようとしているのだろうか。

「召喚、まだ秘匿の情報です。あなたが聖女ではないかとも言われている。転移。そうですか。それなら、出来るかもしれない。」

ゲームで見た。私の望んだスチル。

レジェス先生から額にキスされるシーン。

あぁ、眼福だわ。

もったいないけど、目を閉じる。

唇の柔らかさと温もり。触れたまま。

ずっと続けばいいのに。そう願ってしまう。

その時間も終わり。

レジェス先生が私から離れ、手のひらを重ねる。

これはこれで嬉しい。

「集中しなさい。」

怒られてしまった。

気を引き締め、手のひらに集中する。

すると生じたのは恐怖。

「いやぁ!」

推しを突き飛ばしてしまう失態。

「あの、ごめんなさい。火だけは怖いの。」

「……あなたは聖女ではない。召喚されてもいないあなたが、ここに居る意味はなんでしょうか?」

レジェス先生の冷たい視線。

ここにいる意味。存在意義。私は。

ゲームに私、魔法使いマリーは存在しない。

ラノベであれば。この世界を救うのは私?

クリア必須のアイテムは、設定された場所にはなく。

私が、ここに来た意味は何かと問われても。




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