④結:使命
「これは追放である。天上での存在は途絶え、消滅となる。これから地上に転生し、同様に転生した者を見つけて裁きを下すのだ。それが使命。」
追放。消滅。転生。
人間となる。そして転生者を探し出し、同じ人間になった者を殺す。
それが使命。
神は人類に、人を殺してはいけないと告げた。
禁じられた行為。
人殺しは死をもって償う。それなのに。
転生して人となり、殺人が使命だと告げる。
天使・人間・動物に感情を与え、生と死を司り。絶対的存在。
与えられた使命。
永遠を生きる天上の使い達の消滅とは。
肉体を持たず、透体の存在の途絶え。
人間の死は命の灯が消える事。
追放。転生。
人は死ぬと肉体を捨て天上にくる。
しかし天の使いとは別の存在。のはず。
成り立ちが違う。そう教育を受けた。
「使命を全うする事を誓います。」
そう、命令は絶対。
反逆もまた無だから。
追放されたのに。これから人を殺す。
愛も裏切りも……
「命は灯。風によって揺らいで消える。」
人間と違って痛みはない。肉体がないから。
天上での存在は途絶え。消滅。
そして転生。痛みと有限の命の肉体を持つ人間に。
人として生まれ、双子として育つ。
聖女の適性があると言われ、当然だと思った。
ガーネットに素質がないと告げられ、私の中に答えのない疑問と違和感。
ガーネットを守らなければ、そう思った。
「オリアンヌ、あなたの魔法を見せて欲しい。」
何故、ガーネットがそんな事を言ったのか。
本人も興味本位で、意味などなかったかもしれない。
私が選んだ魔法は水だった。
畑に居て、水まきをしている途中だったから。
省略した詠唱と適当な魔法陣。
手のひらを上にして、水の球体を形作る。それを上空に揚げ、分散するように魔力を込めた。
雨のように降り注ぎ、それが光を受けて虹が生じた。
「綺麗。」
ガーネットの笑顔。
そして私には、水魔法を失った自覚。
生じたのは言い表せない恐怖。
今思えば。自分に刻まれた使命。それを補おうとしたのかと、ガーネットを見つめ。
その時から抗う事は止めた。
ガーネットに奪われない剣技。
それを極める方が先だと思ったから。
魔王の復活。この世界、レティッシラ。
あぁ、私達が管理していた星。
女神レイラリュシエンヌ。名は消滅したはずなのに。
倒さなければならない魔王。リューテサッセウス。あなたを殺すのは私。
この世界の秩序は乱れている。世紀末。
最後の“女神”が、この世界を救う。
「オリアンヌ、暇か?」
「暇に見えるか?」
「あぁ、だから聞いている。」
神殿の書物庫。
過去に、ここで魔王討伐に関する記述が発見された。
それは魔族による病の蔓延に関するもの。
対抗する効力のある薬が書かれた巻物。その複写を読んでいる最中。
剣を私に向け、不思議そうに首を傾げる騎士フリック。
「はぁ。フリック、少しは巻物を読め。」
「え、無駄だよ。だって読む暇があるなら、少しでも動いた方がマシ。」
無駄ではないだろ。
こっちが首を傾げたい。
「で?暇より、動いていない今は無駄な時間ではないと?」
「一人で動くより、有用な人材を連れてきて戦った方が効率も良い。」
即決力と行動力。それと。
「フリック、あなたの望む聖女はいない。私は聖女ではないし、期待されても困る。」
「オリアンヌ、君には素質があるけれど。俺の望む聖女ではないことぐらい、見ればわかるさ。ほら、気分転換に来いよ。迷いがあるのはお前だ。」
見透かされているとは。
ため息を吐き。
「手加減はしない。傷が増えても、面倒がらずに治せよ。命取りになるぞ。」
「わかった、約束するから早く行こうぜ。ほら、時間が惜しいだろ。」
急かされるようにして、その書庫を後にする。
手には写しの紙一枚。それを懐に入れた。
日々は過ぎ。
学園生活を終え、魔王討伐の冒険が始まる。
活躍の期待された魔法使いマリーは行方知れず。
補填として学園の魔法を教えていたレジェス先生が呼ばれた。
すると。レジェス先生は、ガーネットを推薦する。
周りの誰もが言葉を失った。
私はガーネットに適性が無いと言われて、油断していたんだ。
神殿も適性を否定していなかったのに。
ガーネットは断ると思っていた。
希少な双子と言われて舞い上がっていた両親でさえ、ガーネットを押し留めようとしたのに。
「行くわ。オリアンヌは誰にも渡さない。」
それは私の言葉。
オリアンヌを置いて行くと誓ったのに。
勇者ジークハルトは、私を見ない。彼も決意を新たにしただろう。
王子ユーリス。聖騎士となったフリックと私。
同行するユニアミを遠くから見守るロレイン。
旅は予定が決まったように順調で、魔王の城まで後一歩。
最終決戦の前夜。
「オリアンヌ、寝ないの?」
私一人の見張り場に、姿を現したのはロレイン。
神官ライオネル様が施した結界の向こう側。
「私に殺されに来たの?それとも私を殺す?」
「迷っているよ。オリアンヌ、俺の探し物が見つからない。もしかすると魔王が持っているのかも。」
「……ロレイン。それなら、私はあなたを殺しても意味がない。あなたは私の探している物を持っている?」
「持っているのはユニアミだよ。そろそろ発動する。今回も、違った。揃わなかったんだ。」
私達は繰り返す。
to be continued




