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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第五章:適性者 オリアンヌ

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③転:死を望むのは


ガーネットが望むのは死。

魔物の手当てをするのは同情や優しさではなく、自分を殺してくれるモノを確保したいだけ。

「なぁ、……確か双子の。オリアンヌ、それに適性なしのガーネットちゃん。」

ガーネットは時間を気にして、先に帰ってしまった。

魔物は弱り果てているのか、眠っている。

私達の殺気も分かった上だろう。

私は剣を構え直し、勇者だろうと容赦はしない。

殺気立ち睨んだ私に目も向けず、ガーネットが去った方角に視線をまっすぐ。

「なぁ、何故ガーネットは死を望む?君が死を望んでいるからじゃないのか。」

私が死を。望んでいる?

今まで私の方を一切、見なかったのに。

勇者ジークハルトは探るような視線を向け。

「やっと見つけた。隠していたのはお前か、オリアンヌ。」

「……勇者ジークハルト、お前はまさか。そんな、どうして。」

隠してきた。誰にも見つからないように。

巡り会う運命。

私も望んだ死。

この世界を救うため、勇者ジークハルトは選ばれた。

私も魔王の討伐に向かうだろう。

姉ガーネットを置いて行く。

私達の目的は同じ。

「あいつは見つからないのか、オリアンヌ。殺せ、それが神からの命令。忘れたとは言わせない。」

忘れていた。お前に会うまで。

だから死を願った。

神からの命令だったからこそ。死を望んだ。

「予告された魔王の復活。まだ時は来ていない。オリアンヌ、あの魔物はお前が殺せ。ガーネットを守れ、命を懸けて。俺もオリアンヌを守るから。」

簡単に言ってくれる。

魔物を殺せ?無理だよ、お前はそれが分かったから引くんだろ。

ガーネットが守護を与えた。

自分を殺すモノとして、誰にも害を及ぼすことが出来ないように。

いくら私でも近づけない。

学園に被害が出るとしても、ガーネットの守護が解除されることがないかもしれない。

そう私は思った。

けれど、数日後。

料理を与えると約束したユニアミに心許し、その守護が解除された。

近づくことが出来なければ、餌を与えることが出来ないから。

無意識だろう。

だから隙が出来た。

私は魔物を殺す。

ガーネットに悲しみはなかった。

自分を殺せるモノを失った怒りだけ。

そう、ユニアミがガーネットに向けたのは。殺意。

だからガーネットは油断したんだ。

きっと心地良かっただろう。

ユニアミの優しさだと思ったんだ。

なんて悲しくて純粋な願い。

ガーネットは消えたいと願い、その願いを叶えようとするユニアミの殺意。

優しさと勘違いするなど。

まだガーネットはあきらめていないのだと気づく。

生きる事。

死を願う私がそばに居てはいけない。

そっと距離を置いて見守る。

勇者ジークハルトは魔法が使えないけれど、みつけたオリアンヌを見守るために学園に来た。

最終的に、私も魔法が使えなくなった。

魔法の試験の度、違う魔法で対処してきた。

それを適性だと先生方は喜ぶ。

その都度オリアンヌに奪われているとも知らず。


そして学園の結界が張り巡らされた中。

突如として望む。恐怖。

勇者ジークハルトは不在。

ガーネットが狙って呼び寄せた。

私が殺す相手。

見つけた。時が来たんだ。

ユニアミの兄、ロレイン。

オリアンヌに向けた殺意。誘発したオリアンヌ。

あぁ、なんて巡り合わせ。


「……君になら、殺されてもいい。」

私に言って、その場を去ったロレイン。

そう。あなたを殺すのは私。

私もあなたになら、殺されてもいい。


「オリアンヌ、あなたは魔王の討伐に行くの?」

勇者と共に行く。けれど、その未来は。

私はガーネットに答えることが出来なかった。



その夜。役目を忘れるなと、警告のように夢を見る。

私の奥深く刻まれた使命。


大きな扉がゆっくり開いて、私の入った場所は何もない空間。

無限に広がる光に満ちた影のない神聖な場所。

地面ではないけれど、足場の確保された道。

後ろで閉じた扉は音も無く消えた。

もう戻れないのだと、私は思った。

とても静かで、他の気配はない。

一面光の中にいると言うのに、感じるのは孤独。

道を真っすぐ進み、円形の足場。

その中央に立つ。

どこからか聞こえてくる声。

「今後、その名を使うことを禁じる。故に消滅する時は本当の名が刻まれることもない。その覚悟があるか?」

ワタシは目を上げて答える。

「はい。新たな名で、与えられた役目を全うすると誓います。」

自分から言い出したこと。

その覚悟は、あの時に決まった。

「では、あなたの望んだことが成るように。」

これは反逆。

それなのに何故、送り出すかのような言葉を?

円形の外側から足元に迫る闇。

恐怖もなく、ただ目を閉じた。

「待て、私は許さないぞ!愛するモノに存在を奪われて、消えることが喜びなんて間違っている!」

あぁ、こんな時まで正論とは。

こんな風に別れが辛くなるし、決して理解してくれないと判っていたから内緒にしていたのに。

ごめん。もう決めたんだ。

ずっと共に居た君とも、永遠の別れだね。

許しは請わない。それが自分に与えられた役目だから。

あの時、決めたんだ。

私たちは必ず、また同じ時を繰り返す。

次こそは助けてみせる。

例え、あなたが私を殺すとしても。


一人で全うすると誓ったのに。

共に生れたのは、止めに入った君。

ガーネットは私が守り切る。




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