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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第五章:適性者 オリアンヌ

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②承:聖騎士


父から剣を受け継いだ。

腰に帯を締め、鞘を納める。

常に警戒し、ガーネットを守れるように。剣に手を当て。誓う。

「オリアンヌ、今からでも遅くない。聖女見習いに立候補するんだ。」

父の隣に、母が立ち。圧力のつもりだろうか。

「聖女になるには自発的な気持ちがなければならない。私は聖女ではない。」

適性があるのは。ガーネットも同じ。

双子の姉に適性がないと神殿が決定を下したのなら、それは聖女ではないということ。

能力が開花される可能性を否定しないとはいえ、学園での扱いは双子の姉。

適性のある私の姉であり、希少な双子だから。

何も分かっていない。



「おい、集中しろよ。普段から無表情だからって、俺には分かるんだからな。」

ここは神殿。騎士見習いとして呼ばれ、任命の儀式。

隣に居たのは王子と、幼い頃から一緒にいるというフリック。

「悪かった。気を引き締める。教えてくれて、ありがとう。」

「おう。」

切り替えの早い男だな。

それくらいでないと騎士として、生きていけないだろうから。

それから何を気に入られたのか、訓練以外の自由時間。

練習に駆り出され、逃げても見つかる。

「いい加減、配慮してくれないか。私は女だぞ。それに、姉さんが気になるんだ。」

「俺たちが守るのは、家族じゃない。」

「おかしなことを言う。お前は、王子の側近になるのだろう?」

「だから?この世界の為なら、王子だろうと。家族同然に育ったユーリスだろうが、見捨てる。」

決意の視線。何がそうさせるのか。

「意外そうな顔だな。珍しい。ふはっ。笑わすな。」

こちらとしては、何を笑われているかも分からない。

フリックは空を見上げ、口を閉ざして目も閉じた。

私も空を仰ぐ。すると穏やかな風が通り抜けた。

「オリアンヌ、君は。いや、関係ないか。……俺は聖女を待ち望む。きっと死ぬとすれば、聖女の為に命を懸けて死ぬだろう。」

予言のような言葉。

「フリック、君の決断力は随一だ。王子ユーリスにとって、救いとなっているだろう。見捨てるなんて言うな。……君は、聖騎士。私もそこに並びたいと願う。」

「聖騎士か、お前が言うと重みが違うな。さ、オリアンヌ、剣を取れ。」

「嫌だよ、何度言わせるのさ。姉さんを探さないと。」

フリックは首を傾げ、笑顔で剣を振り回した。

真横に私がいるのに。避けるのを前提で。

「聞こえないなぁ。俺は、お前の姉を過小評価しない。お前は何を恐れている?」

私は剣を鞘から抜いて、応戦する。

野性的な勘が鋭いのだろうか。

「お前みたいなのに見つかるのが怖い。厄介だからな。」

「あはは。それはそうだな、俺は逃がさないぜ?」

連続の流れるような剣技。フリックの天性のもの。

私は剣で攻撃をかわし、ため息を吐く。

「嫌な予感がするんだ。」

するとフリックは剣を払って、鞘に納めた。

「先に言えよ。手伝わないぞ、俺は。行け。」

「何度も言った。」

不満げな私に、追い払うような素振を見せ。冷めた視線。

本当に切り替えの早さだけは。

フリックに背を向け、走る。

ガーネットは教会に居る時間帯なのに、嫌な予感がする。

私がいないから、また抜け出したのだろう。

一体、どこに。

教会付近を見渡し、中央広場の噴水まで走りながら探して見つからず。

立ち止まる。

この気配は。魔物?まさか。

弱弱しい気配を辿り。

行きついたのは結界の施された学園。中にいるはずがない。

壁に沿って歩き、行きついたのは学園の裏側。

壁の小さな隙間に、入っていく人影。

私はその後を追うように、中に入った。

まだ道が出来る程の行き来はないのか、手入れも杜撰な覆い茂る草木。

人がかき分けた跡が少し。

方向感覚が分からなくなるのは、結界のせいだろうか。

自分と同じ年頃の、男の後姿。背中に矢筒。

片手がそこから矢を一本抜き、弓を構え。静かに音もたてず。

視線を真っすぐ、集中しているのか私に気づかない。

その視線の先に居たのは。

識別したと同時、私は剣を抜いて男の首元に寸止め。

「動くな。」

「……女の子には当てないよ。あれを取り逃がしたのは俺だから。」

あれを取り逃がした?

見つけた姉の先に居たのは魔物。

「っ」

息を呑む。

こいつより、あの魔物を殺さなければ。

剣を首元から離し、構え直して数歩。

彼は進んだ私の手を引き留め。

「待ちなよ。……すごいね、彼女。」

いや、こいつも殺さないといけない。

ガーネットを見つめ、目を輝かせて。

殺す。言い訳などさせない。

「殺気を出すなよ、気づかれるぞ?」

私に目を向けず。

こいつを殺すのは確定で、魔物をどう始末するか。

ガーネットを心配したけれど、手当てをしようとしている姿に、私も見つめる。

水魔法と炎の魔法を同時に、制御も完璧で。無意識の浄化。

私も無意識で。剣を後方に居た奴に向ける。

口封じをしなければ。

「ふふ。邪魔しないでよ。俺だって見たいんだからさ。」

音もたてず、矢を筒に戻す。

私の横に並んで。

「あぁ。噂の双子か。噂と違って、彼女は聖女様のようだね。おっと、だから殺気は出すなって言っただろ。俺は勇者だ。彼女を守りたいなら、殺すな。」

最近、勇者がみつかったと聞いた。

勇者ジークハルト。こいつが魔物を逃さなければ。

オリアンヌを守るのは、勇者ではなく私だ。




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