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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第四章:無適性 ガーネット

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④結:視える者は破滅を招く


廊下を走って、殺意を向ける者が居る場所に向かう。

学園にいない。いてはいけない年齢。

何とも不思議な巡り合わせ。

殺気がしたのは学園の裏庭。誰にも気づかれない場所。

そこに面した窓だったから、もしかしてと試した結果。

釣れた。優秀な人。そう、あのユニアミに触れた一瞬で。

結界の施された、この学園に誰にも悟られることなく侵入したのだから。


息切れ、額の汗を拭う私に姿を現し。

殺意は消えて、不機嫌ではあるけれど。

残念、ユニアミと仲良くしていると思われただろうか。

「で?確か適性なしの双子の出来損ないって噂のガーネット。何が目的だ?」

まぁ、封印に触れられたら起こるのは当然で。

それを壊すでもなく、ユニアミの敵でもなく。

知りたいのは目的。だろうな。

「そうね、私を殺してくれるかと期待した。残念。……いえ、そうでもないかしら。交渉次第では。」

まだ私には手がある。自分を殺してくれる方法を模索する。

目の前に居るのはユニアミの兄ロレイン。

「交渉ねぇ。しかもガーネット、君を俺が殺すとか。それではユニアミの近くに居られなくなるじゃないか。……まぁ、もう手遅れかな。俺が何もしなくても、ユニアミは魔王討伐に付いて行くだろう。」

この人の役割は終わったかのように。沈んだ表情。

面白くない。もっと願えばいいのに。

自分を解放して、自由になればいい。

「ロレイン、あなた復讐をしたくない?」

そう。あなたの願いはまだ、叶えるものがあるの。

簡単に終わらせない。私が死ねないのに。

「……俺が復讐?する相手……」

なんて頭の良い人だろうか。

少しの言葉、情報で答えを探す。

ユニアミ、あなたも頭が良い。そんな人は面白いから、とても好き。

無駄に生きている時間を忘れてしまえるから。

「キサマか?」

あぁ、また芽生えた殺意。

このまま殺されてもいい。心地良さ。酔いしれる。

きっと私は笑っていたと思う。

「違うな、学園にいるとすれば。……なるほどね。で?その確証は?」

殺意の中の冷静さ。

素敵な人、ただ妹を守るために生きてきたのだろうか。

優秀なのを隠して、ただの冒険者の一人。

勇者に選ばれなかった理由は。

きっと魔王など興味がないから。それでも旅には同行しないのね。

「ふ。なるほどって、答えが出ているじゃない。そうね、私の願いは叶えてくれる?」

「無理だね。君の妹が、すでに俺を狙っている。」

「はぁ。残念ながら、妹オリアンヌだけは視えないのよね。呼んでもいい?どうせ、何もしないわ。分かるでしょ?あなたと同類なのだから。」

そうロレインは妹を守るために生きてきた。

私の妹オリアンヌは、姉の私を守りたいと言う。同類。

呼んでもいないのに、オリアンヌは腰のある剣に手を当てたまま。

無表情で近づいてくる。

「オリアンヌ、いつからいたの?」

「ずっと。」

ずっと。無表情のまま平然と。

「ふ。ククッ。」

何がおかしいのか、和んでしまっては殺意など程遠く。

「これから、あなたはどうするの?」

きっとロレインは全てを把握して。

答えが出ているのだろう。

「何を?」

何を。どうするか。

「私の興味のない事まで含まれても。……ユニアミは、魔王討伐に付いて行くのね。」

「そう。あの子は優しい。宿命だと思っているようだ。俺が、どれだけの邪魔をしても。覆らない。……優柔不断な王子ユーリス。甘くて見ていたんだ。お菓子を渡すだけで、満足しているようだったから。」

私にも、ユニアミは国母など望んでいないように見えた。

それなのに。この世界の未来を左右するモノを所持している。

曇りのない決意の視線。まるで聖女のように。

私を見ていない。

彼女が見ているのは、この世界での生活。身近な人との幸せな未来。

「だから止めないのね。……あぁ、嫌だ。ここが転換点なのかと、気づいてしまった。私に意味など求められても困る。」

私は文句を言っているのに。ロレインはその場から消える。

オリアンヌは剣から手を放し、空を見上げた。

私も見上げる。

学園に施された結界。完璧な魔法。

「寮に帰りましょう、オリアンヌ。……あなたは魔王討伐に行くの?」

私の後ろを歩くオリアンヌは質問に答えなかった。

迷っているのかな。私の未来が分からないから。

あなたに分からないことは、私にも分からない。


その数日後、魔法使いマリーは行方知れず。

学園に施された結界は消えた。

補うように、神官ライオネル様が同等の結界を施し。

何事もなかったかのように、日々は過ぎて。


私達は学園を卒業した。

予告された魔王の復活。王命を受け、魔王討伐に向かう一行。

私は城門の人だかりに紛れて見送る。

勇者ジークハルト様を先頭に。王子ユーリスと、側近の騎士フリック。そしてユニアミ。

学園で魔法を教えていたレジェス先生。妹オリアンヌ。

私は行かない。オリアンヌは死なないから。

傍観者、だと思っていたんだけどな。

違った。それは、どこから決まったことなのか。

「ガーネット、どうして行かないの。君がいないと。」

気配なく現れたロレインは旅の準備が万端。

ユニアミを遠くから見守るのだろう。

「あなたには、もう私を殺して欲しいなんて頼まない。……あの子は渡さないわよ。」

私は、まだ死ねない。







to be continued


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