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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第四章:無適性 ガーネット

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③転:観察


聖女とは。

聖女見習いは自発的な申し出が基本条件。

強制されてなれるものではなく、神殿に奉仕し、女神レイラリュシエンヌ様に使える事。

規則正しい生活。清廉潔白。絶対条件は、ある程度の魔力を持った者。

聖女の適性がないと言われたなら、私に魔力はなかったことになる。

けれど、水の魔法と火の魔法。生活魔法の浄化。

特に最後の浄化は聖法の基本。

私が妹オリアンヌから奪ったもの。

奪った記憶がない。

いつ、どのように?私が聖女?

いいえ、聖女は私にとってユニアミ。

ただ彼女だけが相応しいと思う。


魔物が死んで、オリアンヌはギルドに報告をした。

死体を片付けたのは、王から一任された家系。

聖女見習いに実子が立候補したと。

魔物を手当てした布は剥がされていた。

私が匿っていたのは、ユニアミしか知らない。

約束を守って、誰にも告げなかった。優しい人。

ユニアミのお兄さん、オリアンヌが魔物を殺さなければ、学園に居たのなら被害にあっていたかもしれないのに。

聖女見習い。彼女にも同学年に兄がいた。

なんて巡りあわせだろうか。

私が殺したかもしれない人々。

その被害を食い止めたのは、私の双子の妹オリアンヌ。

私は聖女じゃない。

なれない。なってはいけない。罪を犯したから。

未然に防がれたからといって、それがなかったことにはならないから。

私は私。ユニアミの魔法が封印されているなら、私も魔法を使わない。

どうせならオリアンヌに返したい。私には必要のないものだから。


少し興味が湧いた。

きっとユニアミを聖女にしたくない誰かが封印した。

それが害を成すものなのか。

もしそうなら、命を懸けて邪魔したい。

とても優秀な人。

私もユニアミを、みんなの聖女にしたいわけじゃない。

けれど、聖女として認められた彼女を見てみたい気もする。

矛盾するこの気持ちは何だろうか。

なんて楽しいのだろう。

授業などどうでもいい。

魔法の授業をするレジェス先生。

魔法の適性がないと言われたのに、きちんと授業を受けるオリアンヌ。

本当に魔力がないのだろうか。嘘はついていないと思う。

私が奪った記憶はない。ユニアミのように、誰かに封印されている様子もない。


封印、触れたらどうなるかしら。

きっと尻尾を出すに違いない。

あぁ、私は殺されてしまうかも。


『私が守りたいのは、お姉ちゃんだから』


まさか。私の片割れ。どこまで私を先読みしたのか。

憎い。邪魔させない。

今度こそ。私を確実に殺してくれる人を探す。

誰でもいい。一番の願いは。叶わないから。



観察を続ける。

魔法の授業。試験の座学や実践。それで一番の成績なのは魔法使いマリー。

得意の魔法は何かしら。

この学園の結界を施したと聞いた。

防御系。聖法にも通ずる。なのに、聖女見習いにもならず。

見つかった勇者と魔獣や魔物を倒して、予告された魔王を倒す旅にも同行するのだとか。

欲がないようで、目的が不明。

欠点は火が怖い事。炎の魔法を使わない。

使えないわけないよね、だって私には視えるもの。適性の魔法が。

そう。きっと特別な人に違いない。

聖女候補者なのだろうか。

全て視えるならもっと楽しいのに。

私に視えるのは数名。

この能力がなんなのか知らない。

双子の妹オリアンヌには、きっと別の能力がある。

視えないけれど、片割れだからこそ感じる何か。


お昼、学食で食事を終えて次の教室に移動する廊下。

そこでユニアミから声を掛けられた。

「ガーネット、もしよかったら。試作のお菓子を食べて、感想をもらいないかな。」

観察していたのを感づかれたのかな。

近づきすぎたかもしれない。

「ありがとう。」

差し出されたお菓子を手に取り、口に運ぶ。

上等なバターの香り。口に広がる甘さ。

「美味しい。これも王子様に渡すの?」

嫌味など言ったつもりはないのだけど。

ユニアミは曖昧な笑顔。

「そうね。食べてくれると嬉しいのだけど。」

「婚約者が邪魔なら、私が何とかしようか?」

私の願いが叶うなら。

聖女のようなユニアミを悲しませるのが、誰だろうと。

「ふふ。あなたは強いのね。私が思ったよりずっと。」

言っている意味が分からない。私が強い?

首を傾げた私に。

「あの人に婚約者がいない。不思議よね。予告された魔王の復活が近いなら。」

婚約者不在。それは。

「ユニアミ、前髪に何か付いている。取るから触れてもいいかしら?」

「え、うん。お願い。」

私は手を伸ばし。

封印の施された場所に、そっと近づけた。

ジリッと痺れるような痛み。

あぁ、私の願いを叶えてくれるかしら。アナタは。

湧き上がる歓喜。

口元が緩んでしまう。

指を前髪に二回ほど払うように触れて。

「くすくす。ユニアミ、これからは誰にも触れられないようにするべきよ。油断は禁物。何をされるか分からない学園。そうね……けど何かあれば、私が助けになるわ。あなたは秘密を守ってくれたから。」

私は気づく。あぁ、この人は魔物を助けたかったんじゃないのだと。

そして、窓の外。私に向ける殺意の視線。

なんと心地いいのだろうか。

アナタは私を殺してくれる?

もう、ユニアミは必要ない。

私の邪魔をするとすれば、妹オリアンヌ。


ユニアミと別れ。

外に向かう。

私が願うのは死ぬ事。




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