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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第四章:無適性 ガーネット

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①起:適性なし


珍しい双子。

前例が古い巻物に記されただけの貴重な存在。

周辺諸国にまで噂が広がるほどだったと、両親は常に語ってきた。

そして褒めるのは優秀な妹。

私は常に妹と比べられ、見下げられてきた。

それでも私は私。

出来ないものは諦める。時間の無駄だから。


お父さんは冒険者。

この城下町、職と言えば専門職か冒険者。

私には何が向いているだろうか。

妹オリアンヌは何でもできる。表情は常に無。

何が面白いのだろうか。努力もせず、言われたことをそのままに。口ごたえもせず。

お父さんは、オリアンヌに剣の扱いを教えた。

みるみる上達をし、すぐにお父さんを倒せるまでになり。

お母さんは、オリアンヌに生活魔法を教えた。

それを吸収し、応用して見せ。

私は見ているだけだった。

教えてもくれない。

話しかけると怒られる。オリアンヌの邪魔をするなと。


オリアンヌの邪魔をしているのはあなた達だ。

自分の能力もないのに、教えてすぐに抜かれて。

それを喜ぶ意味が分からない。

もっと良い先生を与えてあげればいいのに。

まぁ、冒険者の父では無理な話。


それでも最低限の生活の中。

私とオリアンヌは、お昼に教会に向かう。

そこで振舞われる料理。

最近では、濁ったような色だけど水のように飲める甘いもの。

不思議な味。どこか元気になれるような。

「オリアンヌ、昼からはどこにいくの?」

「神殿。」

「そっか。聖女見習いになるの?」

「ううん。ならない。なれないよ、私は。私が守りたいのは、お姉ちゃんだから。」

目も合わせず、遠くを見るように無表情で。

私を守る?何から。

むしろこの冷遇された生活は、オリアンヌがいるから。

普段、あまり会話もないのに。

この時だけだ。まともな会話をしたのは。


食事を終えたオリアンヌは立ち上がり、振り返りもせずに去っていく。

私は年齢によって区切られた教育をその他大勢と共に受ける。

頭が悪いわけでもない。動きが鈍いわけでもない。

普通か、オリアンヌを見ているから普通よりは上のような気がする。

それでも両親にとって、オリアンヌより劣る価値のない双子の片割れ。

そう。双子だから生きているのだと思う。

お父さんの稼ぎでは、両方とも学園には通えない。

けれど、双子で入学する意味。

私に死なれると困るのだ。


珍しい双子として、神殿に呼ばれ。

予告された魔王の復活に、私達への期待はあったのだろう。

適性の検査がなされ、妹オリアンヌは選ばれたのだ。

私に下されたのは。適性なし。

オリアンヌは聖女見習いを辞退した。

それは強制ではなく、奉仕だから。

女神レイラリュシエンヌ様の加護を得るのは、強制されたものではなく自発的な自己犠牲の精神を持った者。

それが聖女。

もしオリアンヌが聖女なら。私は何だ。

もう少し大きくなれば、学園に通い。

もっと周りからの比較を受けるのだろうか。


帰りが遅くなっても、誰も心配などしない。

学園の周りを巡る途中、整備が行き届いていないのか壁の綻び。

そこに手を当てると、呆気なく崩れて。

小さな私一人が通れる隙間。それを潜り抜け。

学園の建物の裏側。木々や草が覆い茂る。

背丈ほどの草をかき分け、好奇心にどんどん切り開くように進む。

何か聞こえる。小さな鳴き声のような。

それは小さな魔物。生じたのは恐怖だった。

見た事のない生き物。

普段、お父さんが狩って持って帰ってくる食用などではない。

姿は醜く、色は闇を模した毒々しいもの。

しかし訴えるような鳴き声に、違和感。

屈んで、そっと近づいてみる。

覗き込むと、足だろうか。鳥のような細長い足と爪。

いくつもの深い切り傷のようなところから、赤黒い液体。

地面にも広がって、血だろうか。

触れない方が良い気がする。

魔物は暴れる様子もなく、力尽きて死ぬ間際のような弱り方。

独りぼっちで死んでいく。

今の私に重ねた。

手を恐る恐る近づけるけれど、攻撃するような動きも警戒するような素振もなかった。

教会で教わった水の魔法。

傷口を洗い流し、地面は丁寧に水で囲って血を集めるように包む。

害のある毒があると、私が死んでしまう。

押し広げて、この地が汚れるといけない。

どう処理するのが正しかったか、記憶にはあるはずだけど。

教会で学んだ。疫病の知識。病を蔓延させない方法。

吐しゃ物を拭き取った布は燃やす。この汚れた水を燃やすには。

お湯を沸かすときのようにすれば、どうだろうか。

水と違う火属性の魔法を使い、両方維持しつ、少しずつ近づけて。

火力が強かったのか、汚れた水は一瞬で蒸発した。

傷を焼くには火力が強すぎる。

まして。この草木の覆い茂る場所で火を使ったことが今更。

危うく災害を生み出すところだった。

初心者の森の火災、あれの犯人を私にされていたかもしれない。

人が死んだのだと聞いた。

お父さんと同じ冒険者、同じ年頃の子がいると。

誰かが死ぬのは見たくない。

弱い魔物。私が見放せば死ぬ存在。

私が救えるのは魔物。




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