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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第三章:転生者 ユニアミ

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10/31

②承:未来回避


お昼を知らせる鐘が鳴る。教会に集まる幼少の者達。

まだ学園に入っていない兄も一緒に、教会に向かう。

パンと飲み物を受け取り、整備された庭に座る。

芝生のような柔らかい草が絨毯のように心地よく。その管理をしているのが孤児の子たち。

この国の脅威は予告された魔王だけ。

近隣諸国も存在するけれど、魔物や魔獣を協力して討伐しなければ存続できない環境だからか戦争もなく。

ある意味、地球より平和なのかもしれない。

女神レイラリュシエンヌ様の加護。

宗教など意識したことはないけれど、これほど平和であれば。

生まれて繰り返してきた崇拝行為も違和感などない。

食べ物に感謝を捧げ、家族の安寧を願う。

「ユニアミ、俺は食べ終わったら狩りに行くよ。ギルドの人が誘ってくれたんだ。」

私は咄嗟に兄の手を掴んだ。

行かせたくない。

「大丈夫、無理は絶対にしないと誓う。母さんとユニアミを置いては死ねない。」

私の手を握り返し、微笑みを向ける。

そして額に口づけた。

「お兄ちゃん?今のは何?」

ゲームで魔法使いレジェスが聖女にするのを何度か見た記憶。

それに意味があるのかと知りたくなった。

ただの好感度の表れかと思っていたから。

「無詠唱の加護だよ。数人しか使えない魔法だから、秘匿されているんだけどね。誰にも内緒だよ。いつか詳しく教えてあげるから。」


無詠唱の加護。

それが、兄が私に施した魔法の封印だったのだと。未来で知る。


食べ終わった兄は立ち上がり、私に手を振った。

私も手を伸ばして振る。

「いってらっしゃい。必ず帰って来てね。」


まるでフラグ。

けれど冒険者にまざって危険な場面に直面しても、兄に何かあることはなかった。

だってゲームのシナリオで、死ぬのが決まった未来があったから。


昼からはある程度の年齢に分かれて、歴史の簡略な物語を読み聞かせ。

文字の書き方。計算の仕方。大工仕事。裁縫作業。年齢に合わせた教育。

この国を支える人材作り。

適材適所。将来、困らないような教育が施され。

ヌルゲーだと思った世界は、意外な秩序で成り立っていた。

この世界でずっと平和に暮らしたい。

何か貢献できるのであれば。


「ユニアミ、何か質問ですか?」

出会ったのは、同年代の神官見習いのライオネル様。

あぁ、まだ疫病の流行る前だ。

疫病は、ライオネル様が最年少で神官になった後の事。

「家にはない薬草の本を読みたいのです。」

この出会いも女神レイラリュシエンヌ様の加護に違いない。

見つからない薬草を探すには、神殿の中にある……

そうだ、あのアイテムも手に入れておかなければ。

「国内に数名しかいない薬剤を扱う者。貴重な家系のユニアミ。私と共に神殿に来なさい。」

私は教会の人に兄への伝言を頼み、一度家に帰って母にも伝えた。

神殿に入るのに相応しい服など無く、お母さんは戸惑っていたけれど。

私は普段着で向かった。


ライオネル様が出迎え、神殿に集められた本や巻物のある書物庫に案内された。

ゲームではここの描写がない。

聖女がどうやって薬を見つけたのか。

ゲームでは蔓延しきって、多くの犠牲を出した後。

それでも希望の薬だと、人々は感謝した。

今なら大勢救える。最小限に抑える事が出来る。

誰も死なずに済むかもしれない。

家で読んだ本を避けていく。

表紙では判断できず、中身を確認して。

地道な作業。

古い巻物を手にし、そこに答えがあるのだと謎の自信。

そこには絵と効用が事細かに。

そして過去の疫病災害として記述があった。

前回の魔王復活と同じ時期。

子どもの好奇心が、偶然に見つけた大発見。

ライオネル様に告げると、それはすぐに現神官の元に届く。

これは魔族からの攻撃だったのだ。

聖女の足止めだったのだろうか。

そして気づく。

その薬草は、初心者の森にはないもの。

けれど私のアイテムボックスに、種と葉、花と実が沢山あった。

それは紫蘇に似ていて、種まきから一月程で収穫できる。

栽培可能。

寒い季節の前で良かった。

ジュースにも出来るし、料理にも使える。

安く大勢に平等に供給できる。

「あぁ、女神レイラリュシエンヌ様の加護に感謝いたします。」

無意識だった。

その姿を見て、ライオネル様は特別な許可を得て私を礼拝堂に入れてくれた。

「少しの時間、ここに留まる許可を頂きました。祈りなさい。女神レイラリュシエンヌ様の祝福が、あなたにあるように。」

祈りを捧げ、目を開けると好都合にもライオネル様は不在。

そっと像に近づき、足台に触れる。

設定の通り。隠し扉。

そこには世界を救う星形のアイテムが存在した。

それを胸元に隠し、借りた本を抱いて礼拝堂を後にする。


これで世界は救われた。

魔王を倒せる。


けれど私は持ち出したことを後悔する。

何故なら、この世界での私は聖女ではなくモブだから。

聖女が現れたら渡そう。時が来たら、渡せなくても使えばいい。

今、返せば何らかの罪に問われるだろう。

隠し場所を変えられ、厳重に保管されて聖女が見つけられないかもしれない。

信用を今、失えば。

私が救える命も消える。


本来、種と葉・花と実のアイテムが手に入るのは、病が蔓延した後だから。

これからこの世界の病で死ぬはずだった大勢を、私が救う。




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