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⑫異界世紀末記―最後の聖女―  作者: 邑 紫貴
第一章:召喚 真木野 理世(まきの りせ)

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①起:出会い

終焉。

物語は、ここから始まったのです。


目覚めると、そこは自分が普段使用していたベッドの上。

手は震え、全身を伝う汗。熱が奪われるような寒さ。

思い出せるのは、手を伸ばした先に居る婚約者と聖女。仲睦まじく寄り添い。

自分に向ける婚約者の視線は鋭く、怒りの表情で。

声を張り上げて告げる。婚約破棄と、断罪の言葉。

否定する間もなく、そこで意識は途切れた。

一体、自分の身に何が起こったのか。


「お嬢様!あぁ、目覚めたのですね。」

ベッドで身を起こした私を見つけ、侍女が歓喜の表情で駆け寄る。

婚約破棄された私に。まだこの家にとって、私の価値などあるのだろうか。

あんな断罪を大勢が目にし、噂もあっという間に広がっただろう。

「そうだわ、皆に知らせなければ。主治医も呼んで……」

取り乱し、慌てて走り去る侍女に問う時間もなく。

私はあの後、気を失ったのだろうか。

しかし何か違和感がある。

汗を拭おうと、手をこめかみに当てると髪の毛先が腕に触れた。

横髪が短い。血の気が引くのが自分でも分かる。

髪を切られてしまった?いつ。どうして。

理解できない状況に言い表せない恐怖。

ベッドから降り、鏡の前に走って向かう。

化粧台の鏡。目にしたのは幼い顔の私。

手を両頬に恐る恐る。

指先が触れる感覚。

込み上げた感情に伴う叫び声が、部屋に響いた。

……私は時を遡ったのだ…………





どこか浮遊するような、目が回るような違和感。

意識の朦朧とする中、目を開いて見えたのは白いシーツ。

私は寝ていたようだけど。

自分の部屋でも家でもない。病院?ではないよね、薬品の匂いがしない。

体に痛みはない。学校の保健室で、このシーツの管理や維持は無理よね。

手触りの良い……

そこで意識がはっきりと。

身を起こして、周りを見渡す。まるでお城の中の一室。

日本家屋にはない広さと、大きな窓に高級な家具。ベッドもシングルではない大きさ。

ここはどこ?

まさかこれが。異世界転生?

洋風だから、外国の過去の可能性も。

転移?どこに。何故。

最後の記憶は、両親と弟妹が珍しく揃った夕食。

部屋でいつものように眠った。

これは夢?

両頬を勢いよく手で挟むように叩く。

衝撃音が耳に響き、頬は痛みが生じて熱を発した。

「痛い。」

その音が発端なのか、ドアにノック音。

「失礼します。」

相手の言葉が分かる。

けれど入ってきたのは、異国の外見をした女性。

色白く、髪色は茶色で目は青い。きっと個人差はあるのだろうけど。

「リセ様、お目覚めになって驚いていると思いますが。王がお待ちです。準備をお手伝い致しますので。」

王。いきなりだな。

言葉が所々、違和感があるのは翻訳の関係か何かだろうか。

理解できるように、私の語彙力に合わせているのかもしれない?

それにしても何故、私の名前を知っているのだろうか。

ベッドを降り、自分がパジャマ姿なのを確認し、やはり一日を終えて普通に寝た後のことなのだと思う。

痛みはあった。夢ではない。

疑問は頭一杯。

私の身の回りを忙しく動き回っている彼女に、手足を止めてもらうこともできず。

自分一人では着られない形のドレス。

こんな体験、二度と出来ないだろうな。

手触り良く、レースが幾重にも縫製されて。

髪を結い、顔にほんのり化粧をされて。

香水なのか上品な香り。

特別な何者かになったような気分にさせる。

身支度を終え、案内されるまま歩き。

王って言っていたから、お城なんだろうな。

長い廊下に塵一つなく。外からの光。太陽みたいなのがあるんだよね?

寝るベッドがあるってことは夜があって、睡眠をとるわけで。

異世界?

ラノベとかでは違和感ないけれど、何故、同じ環境なんだろうか。

獣人の表現はあるけれど、人型。

会話して。基本的な衣食住。

考え事をしていたら、大きな扉の前。

両脇に見張りの騎士。イメージ通りの鎧。

開かれた扉、中には数人の学者風の人達。

護衛の騎士。貴族風の煌びやかな服装の人達。

何らかの決まりがあるんだろう配置で、私を見つめる。

歩みを進め、緊張などしていないような無感覚。

ここは膝をつくのが正解かな。

ドレスが汚れるから違う?

少しの迷いに、それを読み取ったのか王様が口を開いた。

「よい、そのままで。移動して共に食事をしながら話そう。」

また移動なのか。

食事。きっと食べられる違和感のないものが出るんだろうな。

美味しいと嬉しい。

通された部屋には、豪勢な料理が並び。

他の席には、イケメンの王子様。その隣には綺麗な女性。

婚約者だろうか。もう結婚しているんだろうか。

視線が集中していたからか、王子様から挨拶。

「はじめまして。私はユーリス。隣は婚約者のエルティナ。」

とりあえず会釈して。

「よろしくお願いします。」

きっと上手い具合に変換されると信じよう。

食事マナーなど知らないし。

座るように促され、隣に立った男性に目を向けると。

「今後、あなたの警護をするフリックです。」

警護?何から守ってくれるのか。

私は命を狙われるの?

「ふ。心配はいらねぇーよ。これから結界で守られた学園に入るんだからな。」

意地悪な笑み。それも一瞬。

周りには聞こえないよう、耳元に。低くて良い声。

『結界で守られた』『学園に入る』

それは決まったシナリオのように。強制的に決まったもの。

私の意見は?

乙女ゲームをしたことがないのだけど。

これは、何かのゲーム世界の可能性もあるのだろうか。

料理が運ばれて、進められるまま。説明を受けつつ食す。

美味しい。

ナイフとフォーク。スプーン。箸はない。

パンに肉。野菜。見た事のない形や色だけど。違和感のない味。

食事の最後はデザート。ケーキやクッキー。見た事のあるもの。

添えられたティーセット。中身は紅茶。香りはベルガモット。アールグレイだな。

ミルクは牛かヤギだろうか。

「さて、聖女候補リセよ。」

聖女?候補?……私が?

王は言葉を連ねて説明をどんどん進める。

スクロールした覚えなどないのに。

要約すると。

明日から王子や側近の騎士と学園に通い、優秀な先生から魔法を学ぶ。

学園の休みには、聖女として教育補佐をする神官からも学ぶことがいっぱいあるみたい。

預言された魔王の復活に備え、勇者を支える聖女として冒険に出るのだとか。

シナリオが充実していますね。

私の休みは?


「あなたは聖女として選ばれ、ここに“召喚”されたのです。」


選んで欲しいなど願っていない。

むしろ帰りたい。

でも預言された魔王が復活するとこの世界は滅ぶ。




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