うすい
キャラクリ、思ったよりも時間が掛かったな、さっそく始めるか
「ご飯できたよー!」
一階からお母さんの声がする
うーん、ここできり悪く終わらせるのも…
まぁキャラクリに時間かけて疲れてたから休憩がてら一回やめるか、
父「最近駅の近くにできた定食屋行ったんだけどさ」
母「あー、あのテレビで紹介されていたところ?」
いつもお父さんとお母さんはご飯の最中、中良く話しいる。
俺は黙々と食って親が知らぬ間に自分の部屋に戻る、それが日常で、今日もいつも通りそんなふうになるかと思っていた
なんと言えばいいか、黙々と食って部屋に逃げる動作は同じだったけど、そうじゃなくて ほんの少し昔の事を思い出したから、「いつもと違う」
駅の近くにはそういえばもう一軒3年前にできた定食屋があったと親の会話で思い出す。
記憶にあったその会話にはその食卓には、高校生の兄が箸を持って隣の椅子に座って、テレビを観ながら「あそこに今日は友達と行ったんだよ」と楽しく話していた姿。
数十日後にはもうそんな日常は無くて、兄から俺は一人暮らしをすると話されて、長い喧嘩の末 やはり勝てず、自分の部屋には元々あったうざさや楽しさは無くなって暇ができてしまう
学校から帰った時には机の上に少しのお金と兄が部活の大会で取ったメダルが一つ置いてあって、本当に兄がいたと気づいたのはこの瞬間だけだった
兄は当然知らないだろうけど今はもう、俺は食事中うるさく喋らなくなったよ
そういえば兄は高校生活が辛くて辛くて、でも結局楽しかったと話していたな。
普通、いつも通りの日常
裏返せば何も無く、つまらない日だったってこと。
明日は何かあると信じて毎日寝る
そうすればいつかの自分は学校に行くと思うから
「今日は学校いくの?」
「ねぇ起きてる?」
「おい」
「無視が一番腹が立つ」
「ねぇ起きなさいって」
「せっかく弁当作ったのにさぁ無駄だよ」
「約束は守りなさいって」
数十日前の朝の事が今夢にでてきた、最悪だ。
お母さんはもうここの部屋には毎朝こなくなったし、いつの間にか、お父さんと俺は次第に学校のことについて話す機会も多くなった
自分でもこんなことは終わらしたいと思っている、ただ学校に行く覚悟が無い。
毎日自分の部屋で8時を過ぎるこの瞬間に自分はひどく緊張して、悲しくなる
唯一救われている点はまだこの辛さがあるということ、
この辛さが無くなった時に自分が学校にいなかったら
気分転換に小説を読んでいた
この人が書く小説はどこか神秘性を感じたりノスタルジックを感じる場面がある。ストーリーは単に、一方向に前へ歩くのかと思うとまさかの後ろ歩きや、いきなり道のない方に向かって海に着くような、予想ができなくて面白い。
自分もこれくらい創造力が豊かであれば人生は楽しいのだろうか
答えは結局表せないままだけど、いつか大人になった時にわかるはず
小説はあらかた読んで、スマホを開いてショート動画を見ていた、つまらない物も有れば少し笑える物があるけど、笑うたびに喪失感を覚えて、何をしているんだろうとも感じてしまう。
無意識に開いていたショート動画が20本近く回ったときに、ある動画が流れてきた。それはピアノで「ある曲」を弾いていた動画だったんだけど小学生の時に聞いたのか、いつ聴いたのかわからないけど、懐かしくて懐かしくて心にしがみつく雨のような辛さがあった動画だった。思えば今まで言葉にはできなかったし、恥ずかしくて自分でも考えたく無かったけど、結局
【青春がしたかった】と言葉にした
まだ不登校からでも良いのなら
まだ願いが叶うなら何でも捧げよう
24時を過ぎてから、あたりは一面雪が降って何も見えなくなってしまった。近くにあった光は電車が来る時刻表を映した横長のモニターと、たまに見える車のライトにだけしか目が反応しない。電車を待っている間にスーツのポケットの中から出したタバコに火をつけながら、タバコに雪が当たらない様に手を覆い被せていると、そんな仕草から嫌な奴を自分は思い出す。
高校2年生だった時の俺に始めて話しかけてくれた奴。それは高校2年生の自分が数年越しに駅前まで行った時のことだ
青春のために自分は決意を迎えて、今ここに立っている。俺はこの目で友達と海に行く青春王道風景を観たい!
そのためにはまず、学校に行くための交通機関に身体を慣らして行こうと思う。これから狭山駅に歩いて向かう。
覚悟が決まったのはあのショートを観てからの出来事で、父に自分の部屋にあった家庭用ゲーム機を一つ壊されて、一ヶ月以内に不登校をやめなければスマホを壊すと脅されたからである。
いつもはそこで泣いて、窒息したかの如く横になるのだが、その時だけは何故か、ショート動画の影響なのか立ち向かう事が出来たのだ。
結局ショート動画に出てきたあの曲の名前はわからずじまいだったが