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カフネ  作者: えこ
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5話 流行りのゲーム

「ねぇ葵くん」

「んー?」


カフェのバイトが終わって、自宅までの道を葵くんが車で送ってくれている。

もう20歳になったんだし、一人で帰れるって言っても葵くんは断固として送迎を辞めてくれないんです。

きっと私が幼い頃のままだと思っているのね。

隣で運転する彼の名前を呼んで、先日あった出来事を話す。

こうやって話すのも何だか習慣になっていた。


「この前カフェにいた私の同期がね、"もし自分の大切な人が何かに巻き込まれてたらどうする?"って聞いてきたの」

「この前の......あー、あの髪の長い男の子?」

「うん」

「何か、って例えば?」


万引きとか、盗撮とか、殺人とか。

そう伝えると彼は特に考える様子もなくへぇ、と受け流していた。

身内にそういう人がいるわけじゃないと言っていたが、私はどうにも引っかかっていた。

私の言葉に彼も確かにね、と相槌をする。


「そういえば、最近変なゲームが流行ってるみたいだよ」

「ゲーム?」


信号が青に変わるのを待っている時、彼はそう言った。

どんなゲームなのか気になり話の続きを聞いた。


「カフネってアカウントが主催してるゲームでさ。ターゲットを決めて定められたクエストをこなすと賞金が貰えるってやつ」


私には何だか難しくて、例えを促した。

すると彼は思い出しているようで、んー、と唸っている。

その間に信号が青に変わり、車が動き出す。

1分程して彼は思い出した、と声を上げた。


「ターゲットの子を笑わせたら賞金500円!」

「......それ本当にやる人居るの?」

「居るらしいよ。実際、SNSには賞金貰ったーってポストしてる人もチラホラ居たし」


怪しげなゲームに不信感が増す。

そのゲームが始まって以来、定期的にクエストと呼ばれるポストが投稿されるらしい。

参加者はカフネというアカウントにDMすることが条件なのだと言う。

カフネ本人は顔も素性も知れないらしく、主催者でありながら人前には立たないらしい。

その為か、カフネの顔を見た人は一度も居ないらしい。


「葵くん、詳しいんだね?」

「あー、うん。タイムライン見る度に流れてくるからさ、つい調べちゃって」


そんな話をしていると、気付けば家の前に到着していた。

今日もありがとう、とお礼を言うと、彼はどういたしましてと言って笑う。

昔はちゃらんぽらんなイメージだったが、今じゃすっかり大人だと思わされる。

じゃあね、とドアを閉めると車は走り去っていった。

見えなくなるまで見届け、家に入ろうと振り返った時声をかけられた。


「ちせさん」

「......え、久住くん?」


やっほ、と笑いながら手を振っている。

いつもとは違って、後ろに束ねている髪は下ろされていた。

何か用かと問かければ、少し相談に乗って欲しいと答えた。

表情からして込み合った話なのだろうと察して家に上げた。

少し散らかってる部屋を適当に片付け、リビングに通す。

冷蔵庫からアイスコーヒーを出してコップに注いで持っていった。


「相談って?」


コトン、と目の前にコップを置くと、彼は早速コーヒーに口をつけていた。

大学の同期からの相談なんて滅多にない。

それどころか幼少期から両親が居らず養子に入った私は、周りから少し距離を置かれているように感じる。

大学に入ってから誰とも話していなかった私にも分け隔てなく接してくれる大切な友人の一人だ。

そんな彼が折り入って相談とは、一体どんな話なのだろうと考えていると、漸く話し始めた。


「前にカフェで聞いたこと覚えてる?」

「前......大切な人が何かに巻き込まれてたら、ってやつ?」

「そう。身内にはそんな人いないなんて言ったけど、実はあれ嘘なんだ」


唐突な告白に目を丸くした。

確かに私自身も少し引っ掛かりを感じてはいたが、わざわざそんな話をしに来たのか。


「そうなんだ......」


ならば今、彼の大切な人が何かに巻き込まれているということになる。


「前に君が、"頼りになる大人に相談する"って言ったでしょ。僕の周りで頼りになるのは君くらいだから」


そこまで仲がいいかと言われれば微妙だ。

何せ学部も違う為、校内で会う頻度だって高いわけじゃない。

彼が私を信用に足ると思っているのが不思議ではあったが、困った人を見放すわけにもいかなかった。


「......わかった。話聞かせて」

「ありがとう。実は......」

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