19話 裁判
「弁護士の三木海斗と申します」
今日私の目の前に座っているのは、ちせちゃんではない。
彼女が何度も何度も提案しに面会に来てくれているのを見て根負けした私は、彼女の知り合いである弁護士に依頼することを決めた。
三木さんは名刺をアクリル板に立て掛けながら名乗っている。
「早速ですが、事件当時のことを詳しくお話いただけますか」
何やらノートとペンを取り出しメモを取るようだった。
私はゆっくりと話し始める。
「あの日は、ちせちゃんのカフェに行きました。大体13時頃だったと思います。彼女に相談する為に走って店まで向かいました」
「相談......なるほど、どんな相談か伺っても?」
「はい。幼馴染の久住凪くんについての相談です。私は大学を卒業して就職してから嫌がらせに遭っていて、その嫌がらせの首謀者が彼なのではないかと疑ったんです」
「それは何故ですか?」
「事件が起きる一週間前くらいから、彼の様子がおかしくて......」
私は警察の事情聴取の際、身柄を警察に預けて安全な場所に住まないか提案されていたことを話した。
そして彼はそれを酷く拒んだ。
その話をした直後から私が勝手に外出しないようやたら釘を刺してきていたこと、カフネというユーザーのポストに関しても話した。
自分が受けた嫌がらせとポストの内容が一致していたことと彼の変な様子に、疑いたくなくても疑ってしまったのだ。
「彼には黙って外出したんですけど、店に迎えに来たんです。でも慌てた様子はなくて......まるで初めから私がカフェにいるのをわかっているような感じがしました。それから彼がレンタカーをしてきたと言って私を車に乗せて......」
思い出すだけで息が苦しくなってくる。
見かねた三木さんは、私に深呼吸するように言った。
「ゆっくりで大丈夫です。少しずつ話せる範囲で構いませんから」
「すみません......それから、山の奥にある人目につかないような小さな倉庫に連れて行かれました」
そしてそこで私はあの忌々しい記憶を辿り、話した。
涙が止まらなかったのを覚えている。
あの日に感じた恐怖と、刃物から伝わる肉の感触が蘇るようだった。
「......ありがとうございます。今日はおしまいにしましょう。嫌なことを思い出させてしまって申し訳ありません。雛笠さんも疲れたでしょう」
そう言って帰り支度を始める三木さんに、私は問い掛けた。
「あの......どんなに頑張っても有罪、ですよね......弁護の意味なんて」
「弁護の意味はありますよ。仮に有罪だったとしても、不当な刑罰を避ける為でもありますから。それにお話を聞いた限り貴方に非はないです。必ず無罪を勝ち取りましょう」
三木さんは、証拠を集めて必ず私を無罪放免にすると言ってくれた。
それだけで何だか救われるような気がして、気持ちは楽になったと思う。
そしてついに裁判の日を迎えた。
傍聴席にはちせちゃんや葵くん、私の家族が見守る中、裁判は始まる。
「雛笠いとさんでお間違いないですね」
「はい」
「ではこれより裁判を開始します」
検察官が私の罪状を読み上げた後、事件当時について三木さんからの質問に答える形で話すことになった。