16話 疑心暗鬼
私に予定を聞いてはその日以外は外出しないように言いつけたり、SNSを見ることすら禁止された。
何かがおかしいと直感がそう告げた。
彼が出ている隙をついて私は外へ出てカフェへと向かった。
「いとちゃん、いらっしゃい......って、どうしたんですか?そんなに慌てて」
走って来た為か息が上がっており、そんな私を見て彼女は目を丸くしていた。
「ちせちゃん、ちょっと相談があるんだけど」
そう言って違和感を少しずつ彼女に吐露していく。
次第に彼女の表情は曇っていき、やがて怪しいと口に出した。
「それ、久住くん怪しくないですか?」
「やっぱり、そう思う......?」
「思いますよ!やたらいとさんを閉じ込めようとしてるっていうか、変です。普通なら警察に身柄を預けた方が安全なのに......」
やはり彼女でもそう思うのだから私のこの違和感は間違いではない。
何故ここまで私を護ることに執着しているのか、考えてみてもイマイチ理解できないでいると彼女が思いついたように言う。
「あくまで可能性ですよ。もしかしたらの話なので適当に流してくださいね」
首を縦に振って彼女の話を待つ。
うーん、と暫く首を捻って話すかどうか悩んでいたようだが、言った手前話さないわけにもいかなくなったのか再び彼女は口を開く。
「もしかして、ですよ。カフネって、久住くんなんじゃ......」
えっ、と驚いていると後ろから、
「いとちゃん」
と名前を呼ばれる。
振り返るとそこには凪くんが立っていた。
心配して慌てて探してきたわけではなさそうな様相。
緩く結んだ髪から垂れる前髪の束の隙間から、汗ひとつも無い飄々とした笑顔が垣間見える。
「いとちゃん、やっぱりここに居た。さ、帰ろ」
「ど、して......」
「それは後で話すよ。とりあえず店を出よう」
何を察したのか彼は途中までしか発してない言葉に、的確に返事をした。
さっきの彼女の発言のせいか、その優しさも笑顔も全てが恐ろしく感じる。
手を引かれるまま店を出ると、駐車場へと連れて行かれ車に乗せられた。
「車なんて、持ってたっけ......」
あくまでも平静を装おうと質問すると、レンタカーなんだと答えた。
エンジンを掛けて発進した車は、家とは全く別方向へと向かっていく。
不審に思った私を宥めるように、彼は少し寄りたい所があるだけだと笑った。