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「少し外でも歩きましょうか。散歩がてらお話ししながらだと楽しいわよ」


スコーンは先だって歩き出し、玄関扉を開けた。アキが来るのを待っているように扉を手で押さている。開けた扉から外が見えた。外は明るい。暑い日差しではなく春先のように柔らかく見える。

家の周囲は開けて先ほど見た木々は切られ、太陽の日差しも雨もよく降り注ぎ、風は抜けていく。

風邪が抜けるのだろうか、開かれた扉から気持ち良く風が吹き抜ける。


アキはゆっくりと扉に向かって歩き出し、家の外に出た。外は想像していた通り、気持ちがよい。体を通り抜けていく風が吹くとそれもまた寒くなく気持ちが良かった。


「アキさん、先にこれだけは伝えておくわ。ジークに会ったら、あなたはまたマドレーヌに支配される」


やっぱり、、、この前切り替わって自我がなくなったのは、ジーク様にお会いしたせいなのね。


続けてスコーンは話す。


「次の入れ替わりは大丈夫だと思うけど、そう長くは続かないわ。そのうちあなたの自我は閉じ込められ、表面にはマドレーヌが出てくる。そして、、、最後はもう切り替わらない。何度入れ替わりが可能なのか、私にはわからないわ。あなたは、どうしたいの?」


私、、、、私は、、、、、一緒にいたいと願ったの。共に歩んでいきたいと願ったの。


スコーンは、あまり時間はないけど、考える時間はあると言い、正面の道を指さした。


「ここを真っすぐ歩くと。そうね、30分くらいかしら。崖の下に出るわ。そこであなたはミランジェと出会った。そしてその崖の上で、ミランジェの母、マドレーヌが賊に襲われて死んだの。今度ここへ来るときに足を運ぶといいわ。そろそろ、リョウたちが戻ってくるころだから、家に戻らないと怪しまれるわ。二人の時間は名残惜しいけれど、また来ましょう」


家の周囲を一周しながら、スコーンは語っている。アキはそのすぐ後ろをちょこちょことひな鳥のようについて歩いている。

日差しを見るとまだ昼間だ。リョウが帰宅する時間まではまだありそうだった。


「リョウ様がお戻りになるのはまだ先ですよ」


「あぁこちらと、あちらは時間軸が違うのよ。こちらの方が時間が遅いの。きっとリョウの家はもうすぐ6時。急がないと夕食の準備が間に合いそうもないわ」


そんな時こそ、魔法で!とは考えないのかしらマドレーヌさん。

もうすぐリョウ様がジーク様を連れて戻ってくる。ジーク様に会ったら、もしかしたら気配を察したらマドレーヌ様に切り替わってしまう。


アキは考えても答えが出せないまま、先ほどと同様にテレポーテーションでリョウ宅へ戻っていた。



家の前から足音が聞こえる。リョウとジークが帰宅したようで、数秒で玄関前に到着する。アキは前回と同様に頭痛がし始めた。


やっぱり、、ジーク様が傍にいらしたから。また、私の意識がとおの・・・・

あぁ、頭が痛い。立っていられない。


「アキさん部屋に移動させましょうか?今なら精神の交換は行われないわ」


「・・・・・」


アキは椅子に座っていられず、椅子から下り、そのまま床に横になる。とてもじゃないが、この頭痛に座っていられる気力はない。


玄関ドアが開き、リョウが「戻ったぞ」と顔を覗かせた瞬間。


「アキ、どうした??」


アキはリョウに上半身を起されたまま、「リョ・・さ・・・ま」と呟き意識を失った。

次に意識が戻った時には、アキではなくジークの妻 マドレーヌだった。


「はっ!!」

「アキ?」

「リョウ団長様。近づきすぎですわ」


意識は完全にアキからマドレーヌに変わっていた。変化するさまをまざまざと見たリョウとジーク。


「「マドレーヌか」」

「そうですわ。ごきげんよう皆様」


笑いながら二人を見つめるマドレーヌの顔は、アキの表情ではなかった。人格が異なるということは表情も変わってくるということだ。


「ジーク、会いたかったわ。あれから食事はちゃんとできて?」


感極まったジークは思わず、リョウを押しのけアキを抱きしめた。茫然自失しているリョウはアキを抱きしてめていた腕の形のまま固まっている。ジークは言葉がでてこないまま、ただひたすらアキであるマドレーヌの体を抱きしめた。


―― あぁ、やはり変わってしまった。こうなると思ったから俺は・・・もう元に戻らないかもしれない。


リョウは二人の願いだったとはいえ、引き合わせたことを後悔した。しかし、人格が変わってしまった今は、その後悔は遅かった。


「ほら、お離しになって。リョウ団長様も見ているわ。私が亡くなったせいかしら、随分と甘えん坊になって」


マドレーヌはそういい、ジークの額に顔を近づけ頭を撫でる。長年共に暮らしてきた証だろうか。アキの姿をしているとはいえ、二人のその姿は実に自然だった。

リョウは、その姿を目にするのがつらく、目をそらした。そらしたからといって、声は聞こえてくる。リョウにとって聞きたくない会話に身が焦がれる思いを感じずにはいられない。

マドレーヌに言われたジークはハッとし、リョウに誤った。


「すまない。。。団長、もうしわけございません」


「いや、、、」


どちらも気まずい感じでどう会話をつなげていいのかわからない。

ふいにマドレーヌはスコーンを見て言った。


「食事の用意はできていて?お母様」


「「お母様??!!」」


驚いたリョウとジークの声が重なる。ジークの記憶では、マドレーヌの両親は別にいる。結婚する際に挨拶に出向きそれ以外の交流もある。マドレーヌの母親が、ここで働いているリョウの家政婦であるはずがない。


「どういうことだ?マドレーヌ夫人」

リョウはマドレーヌを見つめ状況の説明を促す。何と何が繋がっているのか、二人は見当もつかない。


「お母様、、思い出したの?」


「えぇ。お母様のお陰ですわ」


二人は二人にしか理解できない言葉を交わし、微笑みあった。

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