7
スコーン、マドレーヌの関係は?
二人の関係とアキの今後はどうなるのか?
続きが気になる~と思った人は、ぜひ いいね ぽちっと、お気に入り登録をお願いしまーす。
これからストーリーが佳境に入っていきます!
「今日はジークを連れて帰ってくる。ジークもお前と話したがっているし、状況を整理するのがいいと思うんだが。大丈夫か?」
リョウの出勤前には必ず、玄関の外まで見送るのがアキの日課になっていた。目が覚めてから2日経ち、リョウにジークを家に連れてこようと思うと話をされたのが昨晩。二つ返事で了承したものの、何をどう話せばいいのかアキにはわからなかった。
目覚めてからはジークの妻マドレーヌになることはなかったが、ジークに会えば前回同様、マドレーヌに変わる可能性が高かった。亡き妻に会えたジークの気持ちも痛いほどわかった。
とはいえ、次回人格が入れ替わった場合、元のアキに戻れる可能性は誰にも分らない。
リョウはジークに会わせるのを躊躇っていたが、二人からの希望で嫌々了承したのだ。
――何もないといいのだが・・・やはり、魔女殿を探して会いに行くべきだろうか。そもそも。本当に魔女なんているのだろうか
リョウは態度に現さず、不安を自分の胸に押し殺したまま騎士団本部へと向かった。
「団長・・・・おはようございます。その後、アキの様子がどうでしょうか?」
騎士団入り口でリョウを待っていたジークは開口一番に聞いた。
「同じことを毎日聞くな。昨日と同じ言葉しか言えないぞ。奥方には・・・なっていない。アキのままだ。アキもジークと話がしたいと言っている。今晩時間があるか?」
「もちろんです。団長の家にお伺いすればいいでしょうか?」
「そうしてくれ。仕事が片付き次第、あがろう。食事も用意しておく」
ジークは安堵を顔に浮かべた。マドレーヌと再会できたのは幸運であるが、こうなった経緯も知りたいと思い再三リョウに願い出ていた。
もしも、アキの体にマドレーヌが存在し、そのままアキの体として生きてくれるのであれば、共に一緒に歩いていきたいと考えていた。リョウがアキに心を寄せていることがわかる今、この考えはリョウには伝えてはならい。
マドレーヌとの思い出がたくさん思い起こされる。しかし出会ってわずかな時間しか一緒に過ごしていないアキとの思い出もまたいくつも思い起こされた。マドレーヌを求めているのか、それとも両方を求めているのか。ジーク本人も本心が何か気づいていなかった。
「なぁジーク。以前、ウィルフォードが言っていたこと、覚えているか?」
「エクレア村のことですか?魔女の話の」
「そうだ。ちょっと気になってな。どう思う?」
「今、この時代において魔女の話は、、、と思いますが。先日のアキとマドレーヌのことをみても、存在自体はあり得る話だと思います」
「・・・・・そうか・。。。」
「行きますか、探しに」
「アキを連れてか?」
「もちろんです」
二人の意見は一致した。魔女がいるという噂が本当かどうか不明でも、現状の不可解な入れ替わりの説明ができない。通常の人間ではわからないことが、魔女であれば答えを導き出せるかもしれないと二人は思っていた。
エクレア村はジークにとって最悪の思い出が残る場所だった。妻マドレーヌはその付近で襲われた。娘のミランジェはアキの村であるエクレア村で保護されていた。
正直言えば、思い起こす場所にはいきたくはない。できれば行きたくない。
だからといって、目を背け、アキとリョウ二人で旅路へ出かけるのも面白くはない。
「大丈夫なのか?」
ジークの心情を慮ってリョウは尋ねた。エクレア村は事故現場にほど近い村で通過点となるからだ。
「ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ。早くこの問題が片付くなら」
ジークは一度頭を下げ、そのまま自分の執務室へ戻っていった。
一方、そのころ。リョウの家では。
「スコーンさん、お話があります」
「あら、どうしたんですか?じゃ、お茶でも入れましょうね」
穏やかにそう言い、掃除をしている手を止めた。
アキは一大決心をしスコーンに話しかけている。目が覚めて初めてスコーンを見た瞬間、ひゅっと息が止まるのを感じた。
―― 夢で見た、あのお婆さんだ!私をこの世界に連れてきた張本人。同じ人だ。
「大丈夫です。リョウ様がご不在の今、お話をお伺いしたいんです」
アキは先に椅子に腰を下ろし、スコーンが座るのを待っていた。やれやれといった感じで、スコーンは対面の椅子に座った。食事もお茶も茶菓子もテーブルにはない。きれいに片づけられたテーブルに座り、互いに目を合わせた。
「思い出したんです。私をこの世界に連れてきた人は、スコーンさんですね。事故を起こして瀕死の際であなたが現れ、あなたは尋ねた。『うち、くる?』と。そして今、私はここにいるんですね?」
「アキさん?何を言っているのか、わからないわ」
「とぼけないでください。あなたは、なぜ私をここに連れてきたんですか?他でもない、私を」
困ったような顔、とぼけたような顔、少し苛立ったような、入り混じった表情をスコーンは浮かべる。
頬杖をつき、ゆったりとした態度をしている。目はまっすぐアキを見て気だるそうに答えた。
「あなたが、必要だったから。そしてあなた自身も望んだからよ。あなたが事故にあったのは、覚えている?あなたが自ら、車に飛び込んだのよ」
衝撃だった。そこまでの記憶は戻っていなかった。車のヘッドライトが近づいてきたことしか、その前後のことを思い出そうとしても浮かんでこない。
「必要とは、どいうことでしょうか?」
「あなたと私が住んでいた場所に行ってみる?答えが見つかるかもしれないわね」
―― 私とスコーンさんが住んでいた家?ここからだいぶ遠いけど。行ったら何かわかるの?
違う!そうじゃない。怖いんだ、、、私。これから知るすべてのことが。
アキは悩み答えがすぐに出てこなかった。スコーンは「お茶でもいれましょう」と席を立ちお湯を沸かしている。考える時間を与えているように感じる。
―― 怖がっていても始まらない。今、過去を知るチャンスなのかもしれない。この世界のことも日本でのことも。
「行きます!」
―― やってやりましょ!自分探しの旅へ。私が私でいるために。
「はーい。じゃあ善は急げ、テレポしまーす!」
「えっ?!」
目を開けると鬱蒼とした木々。森の中にいた。目の前にはツタに覆われた一軒の家。ずいぶん長いこと誰も住んでいないようで窓枠にもツタが多い、見た目は廃墟だった。
鬱蒼としていても木々の間から光が溢れ、暗いイメージはない。空気は澄んでいて、リョウたちが住む町よりも新鮮でおいしい気がする。
あたりを見渡しても隣家は見当たらず、目の前の家、一軒だけのようだ。ここから町までどのくらいあるんだろうか。
「スコーンさん、ここは?突然テレポーテーションは心臓に悪いです。」
「そう?ごめんなさいね。さぁここが私たちが住んでいた家よ。私は今は、町に居住を移しているからここには殆ど来ないけどね。一緒にここに住んでいたことは覚えているかい?」
一歩一歩家に近寄ってみる。ツタに覆われていたが家の中は今も誰か住んでいるかのように、整理整頓・掃除が行き届いている。部屋の間取りは四つ。リビングに個室が三つ、ほかはキッチンやトイレやバスだ。広い家とはいえないが大人二人が住むには十分だった。
記憶を思い起こし、以前使用していた部屋にアキは向かった。
この部屋は覚えてる。この部屋で私は寝起きしてた。そうだ。私、この世界に来てからこの家で生活してた。日本での生活はすっかり忘れて、スコーンさんと一緒にこの家で。
でもミランジェを保護した時には、スコーンさんは・・・・いなかった。
「スコーンさん、少しずつ思い出してきました。確かに私たちは一緒に暮らしてました。でもミランジェを保護した時はいなかった。どちらにいらしたんですか?ミランジェと共に暮らした時間は、ちょっと外出では済まない時間です」
「募集してたから」
「募集??」
「そう、リョウの家の家政婦のね。アキさんがいずれここへ来るのはわかっていたから、先回り」
「未来がわかるんですか?スコーンさん」
「若干ね。私はね、アキさん。私たちの幸せのために、あなたを呼んだの。ちょうど良かった、希望の年齢で女性。かつ、あちらの世界に嫌気を指していたアキさん。こちらの条件にマッチしたのよ、残念だけど」
言っている意味がわからない。呼ばれた理由が自分たちの幸せのため??
なんて身勝手な。私の生き方を外部から操作されるなんて嫌よ!
「<私たち>ってスコーンさんと誰なんですか?お二人のために私が呼ばれて、勝手だと思います。私の幸せはどうでもいいんですか?」
必然的に声が大きくなる。
スコーンはアキが使用している部屋の扉に寄りかかった。
「もちろん、あなたも幸せになる権利があるわ。そしてそれを手伝うつもりでいる。現に手伝ってるわ。あの雨の日、リョウに保護されて、家に来たのは偶然なんかじゃないわ。私が操作してるの。あの道を通るように」
「なぜですか?」
「あなたとジークが出会う様に。そして、マドレーヌがあなたの体を通じて表に出られるように」
目の前が真っ暗。目の前が真っ白。色があるのか、ないのかもわからない。
この人は、私がマドレーヌさんになることを事前に知っていた。私を使ってマドレーヌさんを表面に出したい?私を消したい?私はその・・・・器・・・・
スコーンの表情は読めなかった。無表情と言っていい。あえて、感情を表出さないようにしているようにも感じられる。細々とヒントを与え、アキの記憶が戻るのを手伝っているようだった。




