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役立たずの恵愛

作者: アン・シャーリー

ある時天使は、地球に落ちてきました。




天使の羽は落ちた時にひどく傷つき、飛べそうにありません。

そのまま天使は電線に引っかかって気を失ってしまいました。



ある時死神は、地球で働いていました。

生きるのに苦しむ人間を死に誘うため、

ここで仕事をしています。

死神はこの仕事を毎日何十回も

行わなければなりませんでした。

そのため死神には感情というものはありません。

感情をもつ死神は仕事の効率を悪くするため、

伊邪那美(イザナミ)によって地球から

追い出されるのです。

ひとりの臆病で優しい死神は、

それをひどく恐れていました。

そのため、伊邪那美や周りの死神にバレないように、

毎日せっせと仕事に励みました。


そんな死神は、今日も誰そ彼の街を徘徊していました。

すると電柱のそばに何やら白い輪っかが落ちているのに

気づきました。

その輪っかの白さは、まるで触れてはいけないもののように

異様な明るさを放っていました。

死神は輪っかに触れるのを恐れ、

そのまま通り過ぎようとしました。


その時、「助けて」と微かにつぶやく声がありました。

声がしたのは、その電柱の真上からでした。

そこには、真っ白な天使がひどくボロボロの様子で

電線に絡まっていました。

死神は急いで電線の絡まりをほどいてあげました。

天使はお礼を言い、空に帰ろうとしましたが、

羽が壊れている上に、

お腹が減っていてとても飛べそうにありません。

死神は、ご飯を食べさせ、この天使が飛べるまで、

世話をすると心に決めました。


それから死神は、仕事がない合間に

天使の羽を治す薬を作ろうと勉強を始めました。

天使は、そんな優しい死神のことが大好きでした。

2人はしばらく地球で共に過ごしました。


まだ冬の風が残る冷たい朝、死神は仕事が終わり家に帰ると、

天使がいないことに気づきました。

焦った死神は急いで町中を探しました。

天使は高いビルの屋上で風にあたっていました。

早く帰ろうと顔を覗き込むと、天使は目の前のビルから

飛び降りようとしている人を見つめていました。

ぼーっとしたその瞳に光はありません。

天使は、最初は弱っていたものの、

元気になってからはよく笑う元気で明るい天使でした。

死神は、その瞳を見た時、最初に天使を見つけた時と

同じ気持ちに襲われました。


天使「君はあの人の背中を押しにいくんだよね。」


そうです。それは死神の役目であり、宿命でした。


天使「僕天使でいるのに疲れたんだ。

だからわざと地球に落ちたんだ。

 死ぬのは怖くなかったから、

あのまま電線に引っかかって死んでもよかった。

  でも君は助けにきた。君は死神なのに。」


死神はうつむいたまま黙り込んでいました。


天使「僕を殺してくれるね。」


死神はその光のない目を見つめました。

けれど天使の背中を押すことはできませんでした。

死神は天使を優しく抱きしめました。

これが最後の優しさです。

死神は天使と出会ってからたくさんの感情を

持ってしまいました。

途中から自分でもそれを分かっていました。

私は死神失格です。

たった今、伊邪那美が屋上に迎えにやってきました。

役目を果たせなかった死神は

地球の外に出なければいけません。


死神を見つめる天使の目には悲しみの涙が溜まっていました。

天使の願いを叶えられない無念を残し、

死神は遠い空の彼方へ向かおうとしました。

すると、死神の背中を追うように、

天使はビルから飛び降りました。

振り向いた時には、天使の姿はありませんでした。


ふと左腕に違和感を感じました。


死神の腕には白く光る天使の輪がはめられていました。


本当の闇を抱えていたのは死神でも伊邪那美でもない、真っ白な天使だったのかもしれません。


最初は気味悪がっていた天使の輪ですが、

最後には死神の腕にはめられていることに気づいて貰えたら嬉しいです。

2人の心の距離が近づいていた証拠です。


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