3人の遠吠え
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次の日、子供にあまり興味が無いのかと思われた無愛想なギルが、まるで休日の父親のように朝から店の裏でムムとロロに魔法を教えていた。
それは無理強いしているわけではなく、ムムとロロも楽しくやっているようで、時折、きゃっきゃっと笑う声が店の中まで聞こえてきた。
店の仕込みをしていた私もうずうずして、ついつい裏口の窓から空き地を覗いてしまう。
「わぁ……!」
思わず、声を漏してしまう。空き地の部分だけ、真っ白な雪が降り積もっていたのだ。
そこで雪遊びを楽しむムムとロロ、そして、ギルは犬になっていた。尻尾をぶんぶんと振り回していて、とても嬉しそうだ。人間のときはいつも無愛想なのに。
——ああ、私ダメだなぁ……。
彼らの姿を見て、私は心を入れ替えた。現状、支持率は確かにアルのほうが多い。私は自分に出来ることはないと諦めそうになった。
でも、奴隷だったムムとロロを保護して、絶対にアルを王にしてはいけないと思った。
——ギルを王に。
そう心に誓う。
「わぉーん!」
「わぉーんっ!」
突然、雪の上に転がったムムとロロが、ふざけて順番に遠吠えを始めた。
——あ、ご近所さんのご迷惑になるかも。ギル、ちょっと止めてください。
そう願ったのに、二人につられてしまったのだろうか? ギルも
「ワォーン!」
と遠吠えしてしまった。
「ふっ、何やってるんですか」
裏口の戸を開けて、私が笑いながら出ていくと、誰かの視線を感じた。
「え?」
店の陰から見知らぬ少女がこちらを覗いていたのだった。




