私の背筋は一瞬で凍りつく
◆ ◆ ◆
「無事に取引が出来て良かったな」
ギルドから出て、数メートル進んだところでマーカスが一番最初に口を開いた。そこで緊張の糸がやっと切れる。
「マーカス、イマリア、本当にありがとうございました。二人が居てくれて心強かったです。一人では無理でした」
私は丁寧に二人にお礼を言った。大袈裟のように聞こえるかもしれないけれど、実際そうなのだ。二人が居てくれたことで、精神的にも身体的にも助かった。
「別に気にすることないわ。私とお兄ちゃんはいつだってエラさんの味方なんだから」
そんなことは当たり前、みたいな冷たい言い方をするけれど言葉の意味はとても温かいです、イマリア。もしかしたら、兄にフルーツティーを入れる役目を取られて拗ねているのかもしれない。
そんなイマリアが急に〝異変〟に気が付き「ねぇ、なんだか周りが騒がしくないかしら?」と足を止めた。
——まさか、私たち、ギルドを出るときに何か悪いことをしでかした?
イマリアに言われて、私はそんなことを考えてしまった。けれど、すぐにその騒がしさが自分たちに向けられたものではないと気付く。
しかし、その代わり、私の背筋は一瞬で凍りついた。
誰かが言い放った「アルジャーノン様だ……」という言葉によって——。




