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ちょっと、お兄ちゃん


 次の休み、私はイマリアとマーカスを連れて隣町に来ていた。フルーツティーポーション、略してフルポと名付けた例のものを量産するために入れ物が必要なのだ。


 そう、結局私はまたギルのお願いを何の文句もなしに聞いてしまったのである。これは恩返し、それにギルのためだけじゃなくて騎士団のためだから、と思いながら。


 隣町には商業ギルドがあり、フルポをギルドに登録すれば、自分の作った商品として全国で売り出すことが出来る。でも、私の目的はそちらではなく、フルポ専用瓶を大量に発注してこちらに回してもらうことだ。フルポを販売して変に目立ちたくない。


「またギルバートさんからお願いを?」


 二人には「隣町の商業ギルドに行きたいので一緒に来てもらえませんか?」としか言っていなかったため、隣町の中を歩きながらイマリアが何かを勘付いたように私に問い掛けた。


「はい。フルーツティーを大量に作ってほしいそうです」


 さすがイマリア、あなたのお察しの通り、ギルからのお願いごとです。


「どうしてギルバートさんはエラさんにお願いごとばかりするのかしら?」


 可愛らしく首を傾げながらイマリアが言う。周りから見ると、ギルが私にたくさんお願いごとをしているように見えるようだ。


「それが約束だから、ですかね」


 私が家から出ることに手を貸す代わりに自分が王になる手伝いをすること、それがギルとの約束だったから、最近はちょっと都合の良い女だと感じ始めているけれど、仕方がないのだ。彼のために何かをしてあげたい、だなんて別に…………思ってるけど。


「いや、それは、ギルがエラと話がしたいからだろう?」


 急に会話に割り込んできたのはマーカスだった。


「「へ?」」


 あまりにさらっと言われて、私もイマリアも間抜けな声を出してしまった。


「だって、あの性格だぞ? ギルがエラに話し掛けるには何かしらの用事が必要なんだと思うんだ、俺は」


「ちょっと、お兄ちゃん、乙女のトークに勝手に入ってこないでちょうだい!」


 女子トークを兄に邪魔されたと認識したイマリアによって、そこでマーカスの貴重な助言は止まってしまった。お兄ちゃんに恋バナを邪魔されたくない気持ちも分かる。でも、私としては男性の意見ももっと聞きたかった。


 けれど、マーカスはもう「すまん、すまん」とイマリアに謝ってしまっているし、再度、話を掘り返すのはちょっと躊躇われた。


 でも、たしかにマーカスの言う通り、ギルは〝何かを守る〟という話以外、口下手だし、私に自分から話し掛けてきたこともない。彼はもっと私と話したいと思ってくれているのだろうか? そう思うと、なんだかちょっと心が……。


「それより、エラ、ここが商業ギルドだぞ?」


「あ、ほんとですね。入りましょう」


 大きな石造りの建物の前でマーカスに言われて、完全に話は終わりを迎えた——。

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