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アイディール騎士団の役目


 ◆ ◆ ◆


 三日後、私はギルに頼まれていたものを持ってアイディール騎士団の療養所を訪れた。騎士団が出来てから、町に近付く魔物退治など危険な仕事も増えたらしい。だから、仕事で怪我を負った騎士たちの傷を癒したり、疲労を回復してもらうためにこの療養所が最近作られたのである。


「こちらです」


 受付の男性に連れられてギルのもとに向かう。


 療養所はまるで大きな宿のようだった。見方によっては病院っぽくも見えるかもしれない。そこに会議室や食堂、訓練所などが入っているらしい。


 団長室もあって、そこが私の目的地でもあった。そして、男性に扉を開けてもらって中に入る。団長の椅子に座っていたのは……


「お、エラちゃん、ようこそ」


 シルバだった。


 彼が「ごくろう」と言うと、受付の男性は団長室から去っていって二人きりになる。


「あの、ギルは……?」


 私はちゃんと「ギル副団長に会いたい」と受付で言ったはずだった。でも、どうしてシルバのところに?


「びっくりしたよな? ごめん、ごめん。誰が来ても俺のとこに通すように言ってあるんだ。——ただ……、ちょっとギルは今、手が離せねぇかもしれない。俺もすぐに向かわねぇと」


 シルバは謝りながらも罰の悪そうな顔をした。どうやら外で何か問題が起きたらしい。


「どうしたんですか?」


 尋ねて良いのか分からなかったけれど、シルバの雰囲気がいつもと違って、少し緊張しているようだったから、とても悪いことが起こっているのではないかと心配になったのだ。


「隣町との間で大型のイノシシに似た魔物、ボイダーが大量に出現しているらしい。突進されて直撃すると魂が抜けてしまうと言われている。まあ、実際に魂が抜けるわけではないが、衝撃で脳をやられるのか目覚めなくなる危険な魔物だ」


 脳を揺さぶられるほどの衝撃とは、話を聞くだけで背筋がゾクリとする。でも、待って、もしかして……


「まさか、アイディール騎士団はそれを退治しに行っているんですか?」


「その通りだ。この町も危険だからな。でも、エラちゃんは危ないから来たらダメだぞ?」


 椅子から立ち上がったシルバは、まるで小さい子に言うように、優しく私の頭にぽんっと手を置いた。


「おっと、ギルに怒られるな。——じゃあ、エラちゃん、またあとで」


 ニコッと笑って、シルバは団長室の窓を開き、そこから飛び降りた。ここは三階だというのに、だ。


「……っ!」


 びっくりして私が開きっぱなしになった窓から外を覗くと、シルバはすでに別の建物の屋根の上を走っていた。まるで忍者みたいだ。


「どうしよう……」


 手に持ったカゴに視線を落としながら、私は呟いた。

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