古の魔法
$マジリス国政支部国長室$
「この度は、急な要望に応えてくださり、誠にありがとうございます。天界軍全研究所統括研究長の大天使長センキと申します。早速で申し訳ないのですが、人払いをしてくださいませんでしょうか。これからお願いする内容は機密事項ですので」
「はい、分かりました」
マギアのその一言で秘書や護衛が国長室から退出した。
「現在、軍が製造している被使、その殆どが我々が独自に編み出した魔法のみでできています。しかし、ご存知の通り成功率は高く見積もっても20パーセントです。そこで我々は成功率を上げるために一つ提案をさせていただけないかと存じます。――古の魔法を既存の魔法に組み込むことを」
「しかし、被使の創造魔法にあんな物騒なのを組み込み、失敗したら半径5kmの範囲は新たに地図を書き換える必要があります。第一、組み込むことなんてできるのですか?」
「はい、そちらの件に関しては研究の結果、可能であると判明しております」
「分かりました。それでは場所を移動しましょう。古代の魔法をお見せします。――それではこちらに」
マギアが本棚の本を動かすと、謎の階段が出現した。マギアが階段のそばに近づくと、階段に明かりが灯った。しかし、終わりは見えない。
数分かけて階段を下ると、ようやく終わりが見えてきた。しかし、そこにあったのは大きな広間だけ。ただ一つ、ぐるりと何かを囲うように柵がしかれていることを除けば。
「これはマジリス全土を囲んでいる結界、私どもは神代魔法と読んでいます。神代魔法は不可解なことが多いです。唯一の情報であるマジリス建国記にはこう書かれています。――100億年以上も前、この地には何もなく、あったのは広い荒野と吹雪だけ。そしてそんな何もない荒野に冒険者たちがやってきました。その冒険者たちはとある国で英雄と称される方々でした。しかし、そんな冒険者たちでもこの寒さには勝てませんでした。猛吹雪によって視界が悪く、進もうとしても雪によって身動きが取りづらい状態でした。また、食料も底をつきそうでした。もうダメだと思ったその時です。突如、地面に魔法陣が現れました。その魔法陣は結界を形成しました。その中はとても暖かく、地面は緑を取り戻していました。これは神から授かった運命、そう思った冒険者たちはその場所に魔法と結界の国、マジリスを建国しました。以来、その魔法陣には絶えず魔力が供給されています。――この魔法陣には不可解なことが多いのです。まず第一に結界に対して魔法陣が小さすぎるということです。通常、反魔法というのは魔法陣の大きさ=結界の大きさです。しかし、ご覧の通りマジリスを覆っている結界の魔法陣は精々10メートル程度です」
「何らかの方法で結界を大きくしているということでしょうか?」
「はい。この魔法陣には古代に存在した変形魔法というものが使われています」
「待ってください。変形魔法であれば、今でも結界を球体にしたり、形を変えたりする際に今でも使われて使われていませんか?」
「……形を変形するという種類の変形魔法は現在でも使われていますが、それも元々魔法陣に組み込まれているものです。それに変形魔法とは元々、効果を拡大したり、効果を別のところに移したりする魔法のことを指しました」
マギアは少し離れたところにある本棚からだいぶ古びた本をセンキに見せた。
「これは古代の魔法に関する分類が書かれた書物になります」
確かに魔法文字で(魔法分類指南書)と書かれていた。著者は過去の統一戦争で活躍した20柱の一人であるリザールという天使だ。マギアはとあるページを開くとポケットから現在の魔法の分類が書かれた紙を取りだし、比較した。
「古代ではこのように変形魔法や聖天魔法などのような現在、無所属魔法に分類されている魔法は個々として分類されていました。つまりは昔より魔法技術が衰えているのです。なので、センキ様が探し求めている魔法も古文書を物色すればあるかもしれません。それでは移動しましょう。古の書物を観に――」




