報告書
「まずは、現状の確認だ。センキ頼む」
「現在の天界軍の総戦力はおよそ200万人。それに対して、魔界軍の戦力は確認されている数でざっと100万人以上。人数ではこちらが勝っているが、技能面では劣勢状態だ。それに加え、ドウラとの戦闘において、邪神詠唱という長詠唱のような詠唱も確認された。即戦力として期待されている、被使の製造に関しても停滞状態だ。また、こちら側の被害は、総合部隊第2部隊の総隊長が王の右腕と名乗る者によって殉職。、藁那に方面にある、ヘブンエンター特別行政区画第10区画および第8区画の一部が陥落。そして、人的損害はおよそ10万人以上だ。我々が与えた魔界軍への人的損傷は、およそ4万人だ。これは全て今回の第4次侵攻での話だ。以前までの侵攻を踏まえると、やや優勢と捉えてよいだろう」
「半年でこんだけやられたら、いつかは破れてしまう。第2部隊の総隊長は次期大天使長として名高く、全大天使の中でもトップに君臨していた。実力で言うなら私より強かった。そんな彼女が右腕と呼ばれる者に殺されてしまった」
「不意を突かれたか、本気で戦って負けたかのどちらかだ。――どちらにせよ、その右腕は警戒した方が良い。現在の右腕の情報は?」
「全く……ゼロに近しいほどだ。唯一あるのが、その時の記録に一切右腕使ったとされる魔法の反応が無かったことのみ」
「……魔法の反応が無いだと!? それはおかしいぞ」
ルドルフは驚き、センキに訊いた。
「我々の魔法検知はどんな小さな魔法でも大きな魔法でも力量は計れないものの、検知できる。それは通常の属性魔法に限った話ではなく、治癒魔法や破壊魔法、精神魔法、剣技魔法、ましてや起源魔法までも検知することができる。そして、剣の召喚や魔法で物を取り出すことさえも検知できる。――つまりは、一切魔法を使わずに彼女を殺したということだ」
「…………それは……可能、なのか?」
「不可能ではない……とだけいっておこう。俺も雑兵相手になら剣だけで倒せる。しかし、総隊長の実力を踏まえるとあまりにも現実的ではないということだ。可能性は1パーセント未満だろう」
「内戦は、さっきサンが言ったとおりだ。まぁ、一つ補足しておくと、堕天使之救一人一人の戦力は将校以下だ」
「戦力自体は少ないが、数が多く、疲弊した部隊では対処が厳しいと……」
「それに奴らは全員が堕天使で、バックに魔界軍がいる。万が一負けた時のリスクが大きすぎる為露骨に動けないのも現状としてある」
「そういえば、エルは?」
「エルは現在、大天使官長代理として政に出向いている」
ルビエルの妹である、エル・セカンド・エンジェルは大天使長として日々働いているが、現在天界の実質的なトップの大天使官長が不在のため、その代理として天界政第一本部で働いており、一時的に軍の活動をストップしている。
「ヘブン・エンターに居座っている魔界軍の動きは監視出来ているか?」
「ああ、もう直ぐ拾弐時だ。そして、偵察隊からの報告があがってくる頃だ」
十数分すると、情報本部から、サンに伝言通信で偵察隊からの報告書が送られてきた。
「報告書を読み上げる。
第5部隊敵地偵察隊定例報告書。
王の左腕と呼称するキロ・ドウラの死後、魔界軍本部では混乱が起こっている。魔界軍の心得手帳には最高幹部が殉職した場合、侵攻を止め、他の最高幹部からの指示に従えと書かれている。混乱の隙に王の間と呼ばれる場所に潜入した。そこには百を超える魔法陣が重ねて描かれていた。念の為、定点監視装置を設置。数週間に及ぶ監視をした。魔法陣は日に日に光を増していった。監視開始から3週間後の映像には魔界軍のトップである王ことルサノが魔法を詠唱しているところが映った。少しすると、幾百の魔法陣の光が王の間全体を包んだ。その結果、定点監視装置の映像が途切れたが、音声機能は健在であったので、その音声を添付する。
以上」
サンは引き続き、報告書に添付されていた音声を流した。
「『――幾千、幾万、幾億の魔力よ。我の呼応に応じ、彼の者に魔力を注入したまえ。深淵魔法__!』
『ここは一体?』
『久しぶりだな。キロ?』
『は、はい! ルサノさ……ま』
『貴様がやったことは分かっているな? 貴様はこっちの奴らと戦い挑み敗北した。それに加え、死亡した。しかも、あの詠唱を使ってだ』
『この度は、その、申し訳ございませんでした。次は必ず、仕留めますので、どうかご慈悲を……』
『まあ、今回は天使の長が四名と戦ったことと、それまでの成績を加味し、許すが……。貴様はもう何もするな』
『それはどういうことでしょうか?』
『なに、簡単な話だ。キロ・ドウラ、貴様は一度、魔界で統合指揮官の命令を受け、訓練しろ。もう転送の手筈は済んでいる。早くしろ』
『分かりました。どうすればまた戦いに……』
『そうだな、あの作戦が終わった時に貴様の素の力だけで魔晶石を破壊できたら、考えてやる』」
音声をここで途切れており、所々ノイズのようなものが入っていた。魔法陣の光による影響だろう。
「まて、一体、どういうことだ!? ドウラが生きているだと。駄目だ頭が混乱する」
「――だが、この音声で得られたことは大きい。ドウラの件もそうだが、魔界軍の情報もだ。この件はエルにも伝えておかないとな。それと全隊に侵攻警戒を発令させないと」
「一旦は、解散で良いか? 情報本部に伝えてこないといけないし。それにアナは診療もあるだろ。後ルドルフの回復もまだまだだし」
「それも、そうだな。一先ずこれにて臨時会議を終了する。各自、必要部隊及び機関に今回の件の報告を頼む」
「アナ、俺の完治にはどれくらい掛かる?」
「ドウラと戦う前くらに戻すんだったら、後2か月くらい」
アナ、センキ、サンは入院室を出た。一人になったルドルフはセンキから貰った新たに開発された、魔力を回復することのできる気体を吸った。
ルドルフは焦っていた。魔界軍の侵攻はおよそ半年周期だ。つまり後2か月程度。ルドルフが回復するのが先か、魔界軍が侵攻するのが先か。
前回以前にもありましたが、____は、登場人物が聞こえなかったり、途切れたりして分からない言葉です。




