復活
「起きたんだ、よかった……」
アナはベッドの横に置かれているソファーに座り、安堵した。
「ちょっと待ってね、みんなを呼ぶから」
「一度落ち着け、アナ。みんなってあいつら仕事中だろ? それにその血……」
音声通信を使おうとするアナの肩をルドルフは右手で掴んだ。
「あ、これ? 替えの白衣が無くて、洗う暇もない程、今忙しいし」
「一先ず、俺が寝ていた間の情勢を訊こう」
「ルドちゃんが敵を倒してくれたおかげで、敵は休戦状態になったよ。その後、第503部隊を主とする第10師団軍が盗られていたイリア地区と特別封印地区・弍をとりかえした。でも、内戦は逆に悪化してしまった。その主犯格は自称神の子である特定犯罪組織堕天使之救。構成員は一万人以上の大規模組織だから、疲弊している軍だけでは対処しきれないから、準軍事組織である政の治安維持課にも協力してもらって、一応今は優勢状態になっている」
「堕天使之救は数十年前に解体されたのではなかったのか?」
「うん、昔にテロ行為を起こして堕天使之救は勇ノ集会によって永久解体されたけど、今の堕天使之救は昔にあった堕天使之救とは別組織。今の堕天使之救は昔より悪化している。彼らの目的は多分、堕天使の自由。いや、違う。堕天使の地位を一般天使より上にして、天界を支配すること」
「そういやぁ、二十柱の件はどうなった? 英雄、勇者と謳われている二十柱の伝書が紛失したと世間に知られれば今まで以上に内戦が悪化するぞ?」
「レプリカを用意してるから、多分大丈夫。それにあの戦いについての書物も元々複製品だからスペアはあるよ」
「彼の戦か……俺もこの目で拝めれるのであれば拝みたい。そして、二十柱と一度でも良いから戦ってその強さを実感したい」
「はぁ、何妄想してるの? 90億年前の話なんだよ? 無理に決まってるじゃん。今の事に集中して。そんな妄想できるほど暇じゃないんだから」
「ああ、分かった。それであいつらは今どこだ?」
アナはルドルフの問いに答えるために、魔法で天界全土の縮尺地図を出した。そして、そこに色々と書き込んでいった。
「今、私たちが居る場所が、本部だからここだよ。そして――」
地図の約3割をアナは黄色のペンを使い、塗り潰した。
「これが敵を倒す前の状態。黄色の場所が内戦が起こった場所。見ての通り、主に戦場となっているのは、本土帰還魔法陣が設置してある周辺。そしてこれが今の状況」
更に、アナは青色のペンを使い、塗り潰した。
「これは……!? まさか」
「うん、これは文献通りでいくらなら、あれと酷似している。更に堕天使之救は本土以外に最近はヘブン・エンターでも活動を開始しちゃった……。それに対抗するためにサン君は新しい戦力の育成に取り掛かっている。センキちゃんはずーっと被使の研究に没頭してて、研究所から出てこない。ミクロラちゃんは戦いの事後処理をしているよ。そして、私はここの所ずーーっと、患者の手当で2、3日は寝てない……、今、なら、寝れそう…………」
アナは気を失うように壁にもたれかかり、寝てしまった。
「ったく、しゃーねぇな。風邪ひくぞ」
ルドルフは自分の毛布をアナに掛けた。
「さて、どうするか……。アナの情報を整理すると、魔界軍の侵攻が止んだが逆に内戦が悪化した、と。堕天使之救に9を使うのは勿体ない気がするし、かといって、他の部隊で対処できる規模ではない。そして、いつ魔界軍が侵攻を開始するかも分からない状況で、前線を担当している第1部隊を外すのは危険すぎる。戦いを指揮できるやつは……エルはルビエルの代理として政の運営で精一杯。センキもサンも無理、アナもこの調子なら無理そうだな。大天使も内戦も戦力として使われている現状を踏まえると、俺しかいなくなる。てか、完治まで一体どのくらいだろう?」
$同時刻、研究所内第8エリア$
そこに一人、暗闇の中で何かの装置に映っている地図を監視している天使がいた。大天使長兼天界軍研究所総所長であるセンキだ。
「この反応は……やっとあいつが起きたか。だが少し妙だな。あいつの魔力反応としては数値が低すぎる。まぁ、アナのことだ。何か理由があるのだろう。それより、あいつが起きたことをサンに伝えるか」
センキは音声通信を使い、サンと通信した。が、前までなら数秒、遅くても数十秒で応答したが、今回は数分しても中々応答しない。
「さて、どうしたものか……サンの奴、一体何してるんだ? ――こんなことしてる余裕はねぇっていうのに。もう直ぐだ。あぁ、やっと復活する。古ノ時代に失われた例のブツが……」




