詠唱
投稿が遅れてしまい申し訳ございません。私生活で新たに覚えることが山積みで執筆に時間を割けられずにいたことが原因です。
今まで【ーー】だったものを【――】に変更しました。
「森羅万象を掌握せし、我が皇よ。我に伍の力分け与へよ。邪之神気伍の滅。天滅紅矢雨」
ドウラの左腕に(貳參)という文字が刻まれ、そこから邪悪なオーラが放たれる。ドウラはそのオーラを自らの右手に集めると、「古之魔法陣」といい、天空に放つ。すると、四角形の刻魔法陣が展開された。それも紅色。
「一体、何なんだあの文字は…………魔界の文字でもねえし、ましてや天界のでも無い。どこの世界だ?」
「あれは、古来の和で用いられていた字だ。あの部屋にあった本に書いてあった」
「お前、あれを読んだのか……マジか」
「ちゃんと、ルビエルの許可は貰ってるぞ」
「当たり前だろ」
「てか、なんで、長詠唱を使ってるの……」
アナはその場に座り込んだ。長詠唱は神より授かった詠唱で神を信仰することにより、その対価として、神の力を借りれる。その為、先程神を馬鹿にしたドウラが何故使っているのか驚いている。
「はあ……だれが長詠唱と言いました? 莫迦ですね。流石は天使様と言ったところでしょうか。長詠唱を使うのは私のプライドに罅が入ってしまいます。無能な貴方方の為にお教えしましょう。先程私が使った詠唱は、邪神詠唱です。長詠唱が一等詠唱ならば、邪神詠唱は最上級詠唱と言ったとこでしょうか。邪神詠唱とは我らが王、ルサノ様がお持ちしている世界創造主の力を一部お借りすることで、我ら魔使を一時的に強化できる魔法です。詠唱によっては創造魔法だって使えます」
「そんなの今まで報告されてなかったぞ!」
「そりゃあ、下等魔使には使えないですから。邪神詠唱は王より選ばれた魔使のみ使える詠唱です。下等な魔使がこの詠唱を見様見真似で使ったところで、身体が持ちませんし、大抵魂が消滅します。――そろそろでしょうか。彼の地に創れし、天滅紅矢雨よ我がしるしに着弾せよ」
ドウラの詠唱で天空に展開されていた刻魔法陣が光り、ゆっくりと時計回りに廻り出した。廻る速度が上がると、刻魔法陣から無数の矢が現れた。その矢は、刻魔法陣の中央に集まり、一つの巨大な矢となった。
「彼の者等を彼の地より創たし、創循ノ矢よ、今一度我に従ひたまへ。着弾!!」
ドウラは腕を天高く伸ばし、乞えるように詠唱した。その瞬間、天空にあった巨大な矢が放たれた。
「不味いな……これが効くか分からないが、やっておこう。全員俺の所に集まれ! 反魔法 邪滅結界貳」
ルドルフは危機を察知し、自らの周りに対魔使用に開発された邪悪な力を遮断する結界の一つ、邪滅結界貳を展開した。
紫色の結界が全て展開される前にアナとセンキは結界の中に入った。
「正直、邪滅結界貳だけではあの矢を防ぐのは、難しい。一応、センキ。あれを準備しといてくれ」
「ああ、解った。全て起動するまで凡そ251秒だ。それまではアナ。修復を頼む」
センキは息を吸うと、爪で左腕の皮膚を切り、血を地面に垂らした。
「聖神を纏いし我が守護神よ、我を彼の魔法から守護せよ。彼の者は大罪を犯した。今が報いる時。我に守護神たる権能を分け与えよ」
詠唱した途端、地面に垂れた血が波紋のように刻魔法陣を描く。
$100秒後$
刻魔法陣が描き終わると、センキは詠唱を再開した。
「反魔法 神界結界! 伍式改」
刻魔法陣から神々しい光が現れ、ルドルフが展開した邪滅結界貳の内側にその神々しい光が結界を創った。
「結界生成まで残り130秒、生成中に一度でも攻撃を食らったら暴走する……水の泡だ。ルドルフ! 邪滅結界參を頼む」
「反魔法 邪滅結界參」
邪滅結界貳の外側に新たに青色の結界が展開された。
ドウラが放った巨大な矢は少しすると、矢が分裂し、少し大きい矢になり、5つに増えた。その矢はルドルフ達を護る邪滅結界貳目掛けて、超速で落ちてくる。しかし、ルドルフから40m高さで落下が止まった。生身の天使であれば、その風圧で内蔵が破壊され、死亡するであろう。しかし、邪滅結界貳基邪滅結界參のお陰で、風圧が邪滅結界參から微量ながらも放たれる魔力によって相殺されている。邪滅結界貳や邪滅結界參のような魔法は結界から放たれる魔力は使用者の魔力に由来する。その為、一般の少尉程の魔力だと、ドウラが放った矢の風圧を相殺できない。魔力が高いルドルフだった為、今回は相殺できた。
「結界生成まで残り100秒、95、90。いけるか……?」
「さぁ、御仕舞いです。大天使長である貴方方の魔法では到底、天滅紅矢雨の威力を落とすことさえ不可能です。天使にしては良く私の攻撃を交わしました。褒めてあげましょう。しかし、所詮天使です。我らが王の魔法を受け止める等――出来ません。楽しかったですよ。然様なら。天滅紅矢雨〆」
ドウラが放った5つの矢の魔力が急激に上昇し、邪滅結界參から放たれる微量な魔力だけでは相殺できなくなった為、矢が再度落下し始めた。
センキはその場で頭を下げ、「ダメだ。もう終わりだ。あれは止められない……」と絶望した。その為、結界生成に必要な魔力が供給されなくなり、結界の生成が一時中断された。
「諦めるな! 何度も言った筈だ。お前がやらないでどうする? これは、お前にしかできないものだ。誓っただろあの時」
「だからなんだ! もし仮に矢を止められても、その後をどうする。被使らを使う気か? そうだな、被使らを使ったら、戦況が変わるかもしれない。しかし、奴を見てみろ、あの余裕そうな表情を。真の強者は奥の手を隠しもってると聞く。奴があの詠唱で魔力をさらに増大させたらそれこそ、俺らは負ける」
センキは一瞬理性を失いかけ、ルドルフの胸倉を掴んだが、理性を取り戻し離した。
「――結界生成まで残り85、80、90……!? 戻っただと」
「啼き。喚き、かくて時之神と化す。我に拾の分け与へよ。邪之神気拾の癒。時戻改」
ドウラの詠唱一つで創りかけの結界に罅が入り、バリンッという音とともに結界が割れる。
「そんな……ば、かな――。長詠唱が無効化されただと」
「センキ。結界が破壊された今、俺らにできることはただ一つ。自らの力で矢を撃つ。ということだ」
「どうすればいい? じゃしん詠唱とかいう詠唱はまだ隠し持って可能性があるのに。一体どうれば……」
「俺に一つ考えがある」
「まさか――! よせ、それをすると貴様はもう……」
「ああ、そうだ。全魔力を使う。センキ、大天使長ノ志一章一項を言ってみろ。全ては天界の為。この身を犠牲にし……」
「…………全てを捧げること」
ルドルフは魔法で天剣を出し、慣れた手つきで帯刀した。
「それじゃあ、始めるか」
そっと、ルドルフは帯刀した天剣の柄を握り、魔法陣を描く。
「斬術を鍛えし、我が剣神よ。其方の力、彼の者を炎滅却する神力をこの身に分け与えよ。剣技魔法 神斬技。反滅第1章 起」
先ほど描いた魔法陣が赤色に光り、周辺の温度が上昇するとともに、鞘から赤色の光りと熱波が溢れ出す。
ルドルフは「いってくる」と言い、一人でドウラの元に向かった。
〈奴との魔力差がありすぎて、前に進めない……仕方ない少し解放するか〉
ルドルフがいくら長詠唱で神の力を借りているとはいえ、ドウラとの魔力差が桁違いに大きい。しかし、それは神の力を鞘に収めているから。剣技魔法 神斬技。反滅第1章 起の精髄は鞘に収まっておいた神力・魔力を一気に全開放することで力を増幅させること。その為、ルドルフは鞘に収めている魔力のほんの一部を解放した。
「成る程……見る感じ、神力とやらを剣に浸透させ、通常の魔法よりも遥かに高い威力を出して、天滅紅矢雨を斬ろうとお考えのようですね。しかし、甘い。天滅紅矢雨は空気摩擦によって表面温度が10000℃以上になっています。いくら魔力が高かろうが到底斬ることはできないでしょう」
ドウラは嗤い、塵を見る目でルドルフを睨む。
「さあ、この醜い戦いも終わりにしましょう。天滅紅矢雨即着弾!」
ドウラが放った矢の速度が更に増し、大天使でも風圧によってこの場に一秒でも居たら内臓が押しつぶされ、破壊される。そして……死ぬ。
「タイムミリットハは残り1分といったところでしょうか」
「剣技魔法 神斬技。反滅第2章 承」
ルドルフは一度止まり、深呼吸をした。〈落ち着け。心臓の鼓動を抑えろ。チャンスは一度きりだ。これで終わらせる〉そう決意したルドルフは真剣な眼差しでドウラを睨んだ。
「もう使えるかわかんねえから良く見ておけ。これがてめえが莫迦にした天使の実力だ」
鞘を思いっきり握ると、ルドルフは勢いよく抜刀した。刹那、周囲にあった草々が一瞬にし燃え尽き、灰になった。
「てめえはさっき、神斬技が神力を剣に浸透させると言ったがあれは間違いだ。剣技魔法 神斬技。反滅の力は神力をこの身に纏い、身体能力を飛躍的に上昇させ、更に通魔付与の威力を上昇させる効果を持つ。これで終わりだドウラ。剣技魔法 神斬技。反滅だい、3……」
ルドルフはその場に倒れこみ、剣を離してしまった。
全ての長詠唱は通常の魔法より、魔力使用量が数倍ある。その為、邪滅結界貳や邪滅結界參を使った後のルドルフの魔力では精々、30秒が限界だ。
「魔力が消えて……いく。これが長詠唱か、やっぱりあれを持たないといけないのか」
「終わりです! 大天使長。いや天界でしょうか。大天使長はここで全員死ぬ。さすれば、直ぐに攻略できるでしょう」
ドウラは倒れこんだルドルフの元に行き、天剣を拾った。
「これが天剣ですか。流石は魔剣と渡り合えるだけの魔力を有していますね。しかし、この天剣はここで終わりです。一緒に葬ってあげましょう」
ドウラが放った矢は上空5mのところまで接近した。後一秒もないだろう。しかし、コンマ1秒以下。全員の視界にはさっきまで落下していたはずの矢がいきなり消滅していた。こんなことをできる者はこの場に一人しかいない。
「…………剣技魔法 神斬技。反滅第3章 転」
「まさか、!?」
ドウラは声のした方に視線を寄せる。すると、そこには羽でバタバタと飛んでいるサンが居た。
「クロが殺られましたか。しかしそれも想定内。次の手を使うまでです。それにしても共同詠唱とは卑劣な事をしますね。あの時から一向に変わっていませんね」
「知っているか? 神斬技。反滅は四部構成だ。第1章・起では鞘のまま神力を収める。次の第2章・承ではその神力を一気に解放し、この身に纏う。そして次の第3章・転では上昇した身体能力と剣を使って相手を撃つ。最後の第4章・結でその神力は我が物になる。神力と魔力は融合し、新たな力となる。――剣技魔法 神斬技。反滅第4章 結。これで――終いだ!」
投稿を私生活が落ち着くまで週一投稿から月一投稿(3000文字~5000文字)に変更させて頂きます。
それでは、また次回。




