クロとフォレス
「そうだな。数十年振りか。見覚えのある顔もある」
クロはサンを睨む。そして、サンもクロを睨む。
「ドウラ。俺はあの剣使を殺る」
「分かりました」
クロは上空に赤黒い魔法陣を描く。
「久し振りだな、中尉君ーー違うな。今は大天使長か。ワースの時は世話になった。恩返しだ」
クロがパンッと手を叩くと、赤黒い魔法陣から紫色の炎が現れた。
「炎魔法 魔炎天鏖滅」
クロが詠唱すると、紫色の炎がサン目掛けて放たれた。
サンは神剣エルを横に持つ。
「剣技魔法 炎攻撃防御反射」
神剣エルから青い光が溢れだす。その光はサンを覆うように集まり、紫色の炎を受け止めた。それだけなく、その炎を反射した。
「反魔法 炎耐性」
クロの目の前に青色の結界が張られる。その結界は紫色の炎を受け止め、無くしてしまった。
「俺とワースは部隊配属からのバディとして長らくやってきた。だが、貴様ら剣使によってそれは終わってしまった……」
クロは怒りに任せ、背中に背負っていた剣を抜き、サンを斬ろうとする。
「俺はっ! あの時、総帥に助けてもらわなければとっくに死んでいた……王だけだ俺を分かってくれるのは。だから、王の命令は絶対に遵守する! 例えこの身が崩壊しても」
「クロ! 貴様らの理由は何だっ!?」
斬りかかって来たクロを神剣エルで跳ね返し、訊いた。
「俺らは王の意のままに任務を遂行する。これは、新兵に言っている言葉だ。俺も将統括に成るまではその理由を聞かされてなかった。一つ言えるのは、王はこの世界を欲しがっていないという事だ」
「それは一体!?」
「続きを聞きたくば、俺を倒してみろ。魔剣魔法 炎舞」
クロの持っていた剣の剣身が燃え始めた。クロが剣を振ると、燃えた検診から炎が放たれた。サンはその炎を交わす。しかし、クロはサンに休憩の隙を与えずに攻撃する。
「これで終わりだ……」
クロは剣を地面に刺す。すると、その地面が燃え始め、それはサンの所まで延焼した。流石のサンもこれには敵わず、直撃してしまった。
「はっはっはっ……ワース。お前の仇は討ったぞ。安らかに眠れ」
「お、俺はまだ……フォレスの事を忘れていない!!」
$23年前、第1剣使部隊部隊舎隊長室$
隊長に昇格したサンは第1剣使部隊部隊舎隊長室のいすに腰かけて居た。サンの目の前には襟に金色の星2つと縦線が一本入った階級章をつけた天使が立っていた。
「事後報告書を読ませて貰った。この報告書は本当何だな? フォレス」
「はい! その報告書に書かれている内容は事実です」
「分かった。この報告書は俺の方で総隊長に渡しておこう。お前は下がーー」
『緊急命令。フェスト地区周辺に多数の魔使反応を確認。ただちに第1剣使部隊、第2部隊は現場に急行せよ。繰り返す。緊急命令。フェスト地区周辺に多数の魔使反応を確認。ただちに第1剣使部隊、第2部隊は現場に急行せよ』
アラームが鳴り終わると、サンに音声通話が掛かって来た。
『第1剣士部隊はフェスト基地に到着後、魔界軍の討伐を頼む。お前ならやれるだろう。サン少将』
「畏まりました。第1剣使は全員でしょうか?」
『今回の数は三個中隊ほどだ。全員出動させろ』
「はっ!」
サンは敬礼し、音声通話を切った。
「フォレス。ただちに全第1剣使部隊員に出動命令を。拾時卅分に演習場に集合。出動できるように準備と通達しろ」
フォレスは「畏まりました」と言い、第1剣使部隊部隊舎隊長室を出た。
「最近、若くして中佐になったとされる奴が創った設置型音声通話は凄いな」
サンは感心しながら、出動準備をした。
$拾時卅分、第1剣使部隊演習場$
100を超える隊員が全員班ごとに集合していた。サンは朝礼台に立ち、概要を言った。
「先程、アラームがあった通り、フェスト地区で魔使の出現が確認された。そして、魔使討伐を我々第1剣使部隊が任された。皆、準備は良いな? では、転移!」
サンら第1剣使部隊はフェスト地区へ転移した。
$同時刻、フェスト基地$
転移した第1剣使部隊は、サンの命令を聞いていた。
「八班は羅故方面を担当。エルド班、一班はフェスト基地周辺を担当。二、五班は方正方面を担当、三、四班は花瑠方面を担当、俺とフォレスそして、六班は佐向方面を担当する。では、各自班長の指示の元動け」
「「「はっ!」」」
全員敬礼し、各班ごとに分かれた。
「よし、佐向方面に先ずは向かう。俺についてこい」
サンらはフェスト基地を出て、佐向へ進んだ。
「分かってはいたが、森しかないな……」
フェストの佐向は、森林地帯。その為、サンらは常に周囲を警戒している。
「カサッという音ですら聞き逃すな。後ろから襲われる可能性があるぞ。怪しかったら、俺にウンと言え」
サンらは森林地帯を抜ける為、歩き続ける。20分ほど歩くと、平原に出た。
「一度、ここで小休憩を取る。交代制で見回りを実施」
六班の班員らは、地面に座り、水筒の水を飲んだ。
小休憩はおよそ5分ほどの休憩で、軽食を食べる時間すら無い。しかし、水を飲める為、班員らにとっては、至福の時間である。
5分後、サンら休憩を止め、歩き始めた。すると、サンは後ろ側に気配を感じ、咄嗟に「全員、反魔法を使え」と命令した。




