個人練習 day6 ver.サン【2】
$1時間後$
サンはため息をつき、ルドルフが寝ている木影に近寄った。ここの練習場は手入れが殆どおこなれておらず、木の根や草が生い茂っている。その為は、サンが歩く度にガサッという音が響き渡る。
ルドルフの元に近寄ると、サンは剣を鞘ごと持ち、その剣でルドルフの脛を思いっきり叩いた。
「いってえええええええぇぇぇぇ!! ふざけるなサン!」
ルドルフの反応が予想外だったため、サンは「ぷっ」と笑った。
「いってぇ……まじでふざけんな」
剣で叩かれた場所は赤く腫れている。
「……ま、まぁ良いじゃないか。そこは後でアナに治して貰え。それより練習を再開するぞ。もう時間が無い」
現在、拾肆時。明日は作戦会議の為、夜通し練習はできない。残りの練習可能時間は多めに見積もっても5時間ほどしかない。
ルドルフは立ち上がり、練習用の木の人形を創った。
「あれが、ヴィファだ。それであっちがワト。好きな方を選んでくれ」
「そうだな、じゃあ俺はワトにしよう」
「了解だ。一応、ワトもヴィファも体力はかなり多く創ってあるから、そう簡単には倒れないはずだ」
サンはワトの前に着くと、少し距離を取り、腰に佩いていた天剣を鞘から抜いた。神々が扱うとされる神剣にも劣らない神々しく、そして嘗ての魔天戦争時に活躍したとされ以降、代々大天使長が継承してきた幻の天剣ーー天剣エル。一振りで小隊を壊滅し、二振りで大隊をも半壊させたという逸話がある。
サンは深呼吸し、走る体制を取る。そしてーー
「天剣魔法大天!」
天剣エルの剣身が光の粒子を纏い、槍状に変化した。
サンはワトを突くため、持ち方を変えた。いきなり、後1mというところで結界が発生した。対剣用廿結界である。対剣用廿結界は対魔剣用に開発した魔法で、剣による攻撃を軽減できる反魔法が20展開するという魔法。
「対剣用廿結界か……ならっ!」
サンは天剣エルの持ち方を変え、「剣技魔法 突増」と詠唱。詠唱と同時にサンの周りに赤色のオーラが纏う。そして、サンは天剣エルで対剣用廿結界に突く。すると、「パリンっ!」と鳴り響いた。対剣用廿結界の一つが割れたのである。サンは先程よりも力を入れる。そして、次第に2枚目、3枚目と割れていき、最後の1枚も「パリン……」と割れた。
「はぁ、はぁ……対剣用廿結界は割れたようだな。後はワトだけだ」
天剣エルを地面に刺す。傍から見たら、異質な光景だ。しかし、サンには考えがある。
天神召喚。剣使部隊の隊員なら誰もが知っている魔法だ。一時的に天剣を神剣に昇格させるという人智を超えた魔法。天剣ですら扱いが難しいのに、神剣ともなると、操作は困難を極める。事実として神剣を扱える天使は、ルビエルやエルは別として、剣聖と呼ばれる天使らのみ。その剣聖らも剣を司る神に認められ、長年の修行を得てようやく神剣が扱えるようになる。
「神剣魔法 天神召喚……」
天剣エルが上空に浮かぶ。それを見たルドルフは「ーーミルクト!? おい馬鹿! やめろ」と止めようとしたがもう遅い。天神召喚は魔法陣を完成させ、詠唱した時点で昇格儀式が始まるから。天剣エルは自ら白色のオーラを放ち、サンの手元へ戻って来た。
「天剣エルでは無いな……今は神剣エルだな」
サンが神剣エルを握った瞬間、「ピリッ」とサンに稲妻が走り、神剣エルをその場に落としてしまった。魔力消費量がサンの魔力を大きく上回ったからである。
「っ…………流石に魔力がヤバイかーー」
サンはその場に座った。練習を中断してその様子を見ていたルドルフはすぐさまサンに元に駆け寄った。
「馬鹿か、サン! 練習前に……」
「すまん、魔癒はあるか? できれば大量に欲しい」
「魔癒か……ちょっと待ってくれ」
ルドルフは、魔法で(魔癒)と書かれた箱を取り出した。箱を開けると、中には小分けされた飴が20個ほどある。その中からルドルフは緑色の飴を全て取り、サンに渡した。
「魔癒はこれで全部だ」
「ありがとう。これで神剣エルを使える」
「本当に神剣なのか? それは」
「これは、時間が経てば天剣に戻ってしまうが、今は神剣だ。持ってみるか?」
サンは神剣エルをルドルフに渡した。
「それじゃあ、少しだけーーって重っ!」
「まぁ、魔力消費量が天剣の数倍はあるからな。俺だって、神剣エルを持つので精一杯だ」
「天神召喚って、持続時間はどのくらいなんだ?
「そうだな……エルの時は一か月だったから、4日くらいは持つんじゃないか? ルビエルの話だと平均的な魔力で1~2日は持つっていったからな。まぁ、ルビエルの言う平均がどのくらいかはわからないが……」
「流石に天使の平均だろ。大天使長の平均や世界創造主の平均かも知れない」
「まぁ、俺は神剣エルでワトを斬るか」
「そうか、じゃあまたなんかあったら言ってくれ」
ルドルフはヴィファの元へ帰っていった。
「よし、再開するか」
サンは神剣エルを持ち、ワトに斬り付ける。衝撃波により、近くにあった木が倒れた。普通の木の人形なら衝撃波で粉々だが、ワトは斬り跡一つあるだけだった。本当の神剣では無いとはいえ天剣よりも強い。なのに、斬り跡一つということはそれだけルドルフはワトの体力を上げたということになる。
「流石に斬り落とせないか……この調子だと斬り落とすのに100回以上いるな。一応、出来るだけはやるか」
サンは神剣エルの剣身に魔法陣を描き、「剣技魔法 斬増」と詠唱する。すると、剣身の先端が黒く光った。サンは再度ワトを斬る。
「先程よりかは、跡が深くなるか……だが、斬増は多く見積もっても後3回が限界。魔癒はもうないし、どうするかーー魔法なしでも天剣よりかは強いからな、なしでやるか」
$4時間後$
ずっと、神剣エルをワトに斬り付けていたことにより、もう少しで斬り落とせるほどまで斬れていた。
「後、一回か……よし! 剣技魔法 斬増」
今まで魔力を温存していたのは最後に使う為である。詠唱すると、神剣エルの剣身が再度黒く光る。そしてーーワトが斬り落とされた。
斬り落とした事を確認すると、サンはその場に倒れ込んだ。
「練習はこのくらいで良いか……明日の為に寝よう。お~い、ルドルフ。もう終わるぞ」
「分かった。じゃあ、ヴィファとワトを消す」
ルドルフは、ヴィファとワトを消し、サンを起こし、寝専11室へ転移した。
11室に戻ると、サンはルドルフはに水を温めてもらい、お湯で汗を流し、着替え、寝た。
ようやく、個人練習パートが終了しました。




