昇進
その水色のオーラが仇剣コウルに巻き付くと、仇剣コウルの剣身が水色に変化した。
サンは仇剣コウルを剣身が上にくる様に掲げ、思いっきり地面を斬る勢いで空間を斬った。
仇剣コウルで斬った空間に、楕円の今にも吸い込まれそうな黒い穴が開いた。
サンが仇剣コウルをその穴に刺すと、ワースの左足から血が溢れでた。
仇剣コウルの力を使うには、使用者が大切にしている物や生物が第三者に殺され、尚且つ、殺した第三者に復讐心や敵討ちといった第三者を殺したいという気持ちを持たなければならない。
仇剣コウルの力は、復讐、仇を討ちたい第三者には必ず攻撃が例え、過去や未来でも当たるというものだ。
「痛ぇな。久し振りだ、血を流したのは」
ワースは自身の背後に20の魔法陣を描く。
その魔法陣一つ一つに、フォレスの魔力を上回る程の魔力が使われていた。
「起源魔法 第二章!」
ワースが詠唱したと同時に魔法陣から黒い炎がサン目掛けて噴射された。
〈あのザイルですら負けた魔法だ。流石に……いける筈〉
ワースはそう思った。しかし、現実はそう甘くは無かった。サンは黒い炎を全て聖剣一本で受け止めたのだ。此れには、先程まで強気だったワースですら、冷や汗をかいた。
「聖剣魔法 秘技 仇!!」
ワースが瞬きすると、その視界にはさっきまで20m程離れていたサンの姿があった。
サンはその勢いのまま、ワースの首を切り落とし、返り血を降って落としたのち、鞘に納めた。
「一体、何をしておる?」
少し年老いた男性の声が何処からか聴こえてきた。
その声を聴いたクロは後ろ向く。そこには剣を杖ががわりにしている初老の男性が居た。
「貴様は誰だ!?」
サンは腰を低くし、何時でも反撃できる体勢になった。
「お前に名乗る名のなど無い。と言いたい所だが、まあいい。名乗ろう。私は魔界軍総帥及び参謀幹部のオーロド・ゼル・イキュアゼスじゃ」
「そうか、貴様は敵か、ならーー」
サンは仇剣コウルを鞘から抜き、オールドに攻撃しようとした。が、オールドは杖がわりにしていた剣で直ぐ様反撃し、逆にサンが吹き飛ばされてしまった。
「こやつが、ワースを殺したい奴か。仇剣か……成る程、道理で」
オールドには少し心残りがあった。其れは、ワースを殺したいのら、自分にも傷の一つや二つ位つけれた筈ということ。
今回の仇剣コウルの第三者はクレオカ大佐を殺したワースのみだった。仇剣コウルは第三者が居れば、聖剣の中でも上位に来る程強い、逆に第三者が居なければ普通の剣と同じ。
「少し残念じゃが、これは戦争。慈悲を捨て、一思いにに殺ってしまおう」
倒れ込んでいたサンが起き上がらない様にクロが抑え、オールドがサンの首に剣を当て、殺そうとしたその時、上空から水が流れてきた。
「なんじゃ!?」
サンが上空を見上げると、水色の髪、純白の服を着ていた女性も姿が見えた。その姿にサンは見覚えがあった。クレードの国長にして、大天使官長。そして、この天界の主。ルビーファーストエンジェルだ。
「だれじゃ、貴様!」
オールドはキレぎみで言った。
「そんな事より……」
ルビエルは急降下し、地面に降り立った。
「今さ、その子殺そうとしたでしょ? 言い逃れはできないからね。まあ良いや。起源魔法 終章」
ルビエルはオールドの真下に魔法陣を描く。
その魔法陣から蔓の触手が現れ、オールドの身動きを取れなくした。
ルビエルは魔法で剣を出し、オールドの元へ近付いた。
「くそっ、離れろ!」
オールドは頑張って、取ろうとしたが、蔓は鉄の様に硬く、蔓を動かすことすら出来なかった。
ルビエルはオールドの前に立つと、剣を鞘から抜き、斬る準備をした。
すると、オールドはニヤリと笑い、魔法を使った。
「移動魔法 流星 」
魔法陣が光り、オールドとクロは転移した。
「はぁ、転移しちゃったか……まあいっか。ところで君大丈夫?」
「は、はい……うっ」
先程吹き飛ばされた衝撃で、サンは左手を折っていた。
「全然、大丈夫じゃないじゃん。もう~」
ルビエルはサンに治癒魔法を使った。
サンは聖剣魔法を2度も使い、魔力の大半を使ってしまい、気絶した。
$4日後、天界軍事基地本部治療室$
サンは目を覚ました。サンは周囲を見渡した。治療室に居ることに少し戸惑いを覚えながらも、生きている事に安心した。
1時間後、治療室の扉が開き、治療室にルビエルが入ってきた。
「やっほ~。どう? 調子は」
「はい、骨折している事以外は普通です」
その言葉を聞いたルビエルは「良かった~」と安堵した。
「あっ、一応これ」
そう言い、ルビエルはバックから紙を取り出し、サンに渡した。
その紙にはこう書かれていた。
(昇進について、先の戦いにおいて、貴殿は将補を単独撃破した。この功績を称え、貴殿を中佐に昇進し、第7剣使部隊隊長に任命する。4月28日 大天使長一同)
「ちゅ、中佐……」
サンは喜びのあまり泣いた。
「明明後日、ここで任命式があるから」
ルビエルは治療室をでた。
$4日後、天界軍事基地本部体育館$
サンは任命式に出席していた。
天界軍の任命式は各々ではなく、その一年で隊長や部隊長になった天使全員を任命する。
式場は舞台前に任命者が座る椅子が有り、その後ろに参加者の椅子がある。式は右から順に表彰され、丁度サンの右の天使が舞台に上った。
「ヨウル大尉。貴殿を前部隊長ツルガ少佐に代わり、第8魔導部隊部隊Aの部隊長に任命する」
大天使長が賞状を渡すと、式場全体から拍手の音が聞こえた。
ヨウルは賞状を受け取ると、そのまま舞台を下りた。
ヨウルが椅子に座ると同時にサンは立ち、舞台に上った。
「サン中佐。貴殿を前部隊長故クレオカ大佐に代わり、第7剣使部隊の隊長に任命する」
ヨウルの時、以上に喝采の声や拍手が聞こえた。
無事に式を終えたサンは自室に戻り、寝た。
$2日後、ルーゼット区住宅街$
サンは本部から荷物を受け取り、ある場所へと向かっていた。
1時間程、サンは歩き、ある一軒家の目の前に立ち、チャイムを押した。その一軒家の表札にはミンと書かれていた。
暫くすると、一軒家の扉が開き、中から女性と小さな男子が出てきた。
「はーい。どちら様でしょうか?」
「あ、私。軍の者です」
「はい、どうして軍が家に来るのですか? ところで、旦那は何処にいったのですか?」
「その、旦那様の事ですが、此方を」
サンは封筒から紙を取り出し、女性に渡した。
女性がその紙を見ると、女性は号泣し、その場に足を崩した。
その紙にこう書かれていた。
(御知らせ。第7剣使部隊隊長、ミン・クレオカ大佐の戦死をここに書する。クレオカ大佐は魔界軍将補ワースとの激闘の末、戦死した。尚この書類は原則、遺族に直接軍の者が手渡しする)
「そ、そんな…………旦那が助かる道は無かったのですか!?」
「有りました。直ぐに本土で治療を受ければ絶対とは言いきれませんが、有りました……」
「じゃあ、なんで。治療を受けてないの!!」
「隊長は死を選びました……隊長は死に際に家族にこう言い残しました。必ず生きろと。幾多の試練があっても、必ず乗り越えろと。だって、お前らは俺の家族だ。必ず出来る筈だと。と」
サンはクレオカの遺言を言った。
「何で、貴方が死ぬのよ! 死ぬ時は一緒に言ったじゃない……どうして」
女性は床を叩いた。
「後日、遺産等の書類を郵送しますので」
サンはその場を離れ、天界軍事基地本部へと向かったーー
この襲撃戦の最高現場指揮官であったワースはサンの活躍により死去し、もう一人のクロもオールドと共に退去した。残った魔界軍の残党もその大半が魔界へと戻り、戻らなかった者も第7剣使部隊により始末され、襲撃戦は幕を閉じた。
$ザグロ休養基地$
「隊長……」
サンはボソッと呟いた。
「ん? どうした」
「いや、何でも無い。それより、サン。7日目の日程なのだが……作戦会議でも良いか?」
ルドルフは今回の襲撃により、ある一つの事が頭に浮かんだ。それは、右腕や総帥といったドウラとほぼ同等の力を持った魔使がドウラと一緒に来るかも知れないということ。何故なら、ドウラは去り際に仲間を連れて来て良いと言っていた。ということはつまり、ドウラ自身も仲間を連れてくる可能性が高いという事。
「俺は良いが。アナが怒るぞ、きっと」
「まぁ、その時はそんときに考えるとして、残りは休憩か練習を各々に任せよう。センキ! この事をアナに伝えといてくれ」
「ああ、分かった」
ベルーシ襲撃戦は天魔戦争より、前なのでルビエルはまだ居ます。そして、仇剣コウルはまた何処かで登場します。




