特別編 Part 1
今回は本編冒頭より前の話です。
今日は1月半ば。天界は大雪に見舞われていた。
「んーっと。疲れたー」
私は背伸びをした。新年と言うこともあってか、確認する資料の量が何時もより多い。
「お疲れ様です、ルビエル様。後10枚です」
「えっ……本当?」
「はい」
レナは自信満々に言った。
「あの、ルビエル様。少しお伺いしたいことが有りまして……ルビエル様は【ワシャール】という国を知っていますか?」
「知ってるけど」
「どういう国か教えて欲しくて」
「ワシャールは、天界の南西に位置する国で、そのワシャールの特徴は独特な文化」
「文化ですか……」
「何でも、神を信仰するらしい」
ワシャールの文化の特徴は神界に居る神を信仰する。
「レナ。倉庫にワシャールの詳細情報が載ってる資料が有るから持ってきてくれる?」
「分かりました」
レナは資料を取りに倉庫へ行く。
少しするとレナがフォルダを持ってきた。
「此れですか?」
「うん。此れがワシャールの詳細情報の紙。昔のだけど」
あれを作ったのは、確か10年位前だったかな。
「そう言えば、」
私は手帳を確認する。手帳には1月12日 ワシャールに出張と書かれていた。
「やっぱり、ワシャールに出張しにいく予定がある。レナも行く?」
「はい。私はルビエル様の秘書なので」
「了解。今月の12日だから準備しといて」
1月12日。今日はワシャールに出張しに行く。
私は音声通信を使った。相手はレナ。
「レナ。準備できた?」
『一応出来ました』
「行き方は転移で良い? 早く着くし……」
『大丈夫です。今から、そちらに向かいます』
「はーい」
私は音声通信を切った。
暫くすると、自室のドアがノックされた。
「ルビエル様。入っても良いでしょうか」
「入って良いよ」
自室にレナが入ってきた。
「それじゃあ、もう行こっか」
「あ、はい」
「移動魔法 光速」
光速を使うと、視界が一瞬歪んだ。瞬きをすると、視界に見慣れない光景が広がっていた。
「此処がワシャールだよ」
視界には木造建築や着物と呼ばれる服を纏った人々が歩いている。
「凄い。まるで異世界みたいですね。それで、今から何処に?」
「今から、天界ワシャール支部に行くんだけど……」
私は周辺を見渡した。すると、一つだけ異様な光景のビルが目に入った。高さ200mはある。ワシャールで最も高い建物に加え天界ワシャール支部でもある建物名は【フレースラット】。
「それじゃあ、早速行こっか」
「分かりました」
私は無詠唱の移動魔法を使った。
「こ、此れが天界ワシャール支部ですか……大きい」
天界ワシャール支部は【フレースラット】を初めとする5つの施設で構成されている。
私達は【フレースラット】へ移動した。
【フレースラット】へ入ろうとすると警備員に止められた。
「すいません。身分等をご確認できる物を見せてください。又入室許可証でも構いません」
身分を確認できるものでしょ? 何があったけ。あっ、そう言えば輪があった。
私の頭上に白色の輪っかが現れた。
輪っかの中は階級が分かるように模様がある。
「此れで良い? 一応、大天使官長何だけど……」
「失礼しました。どうぞ中へお入り下さい」
輪っかを見せると、すんなり通してくれた。
「ごめん、この子も入って良い? 私の秘書だから」
「はい、大丈夫ですが、念のため輪を見せて貰えますか?」
「あ、はい。分かりました」
そうレナが言うと彼女の頭上に黄色の輪っかが現れた。
「大天使官長秘書ですね。入室を許可します」
「ありがとうございます」
私達は【フレースラット】に入った。
「【フレースラット】の内装は吹き抜けで、確か……60階建てだった気がする」
「大きいですね。天界本部の高さだけなら3倍位ある……」
天界本部の高さは凡そ70m。【フレースラット】は各国の支部の中で一番大きい。
「今から、一応、ワシャールの国長の所に行くのだけど、国長室の場所がわからない……どうしようレナ?」
「えーっと。誰かに訊くか、案内図を見れば良いかと」
成る程、その手があった。
早速、私達は案内図を探した。なんと、案内図は入口の真横に置いてあった。
「あった! 案内図。えーっとどれどれ?」
私は案内図で国長室の場所を確認をした。しかし、国長室の名前は無かった。
「無いんだけど……」
「国長室の場所をお探しですか? ルビエル様」
困惑していると誰から声が掛けられた。
「貴女は?」
「すみません。自己紹介がまだでしたね。私はワシャール国長の近衛。サーリア・N・ルザールドと申します。以後、サーリアと御呼びください」
「それで、サーリア。国長室は何処にあるの?」
「はい。ご案内します」
私達は階段まで案内された。
サーリアが階段の壁を触ると、地下への階段が出現した。
「どうぞ、此方へ」
私達は、地下へと続く階段を下った。階段を下ると、一本の道に出た。
「何で、案内図に国長室が書かれてないの?」
「国長は反逆者に狙われているので」
反逆者……だからあんなに厳重なのか。
「着きました。此方が国長室です」
サーリアはドアをノックした。
「キーナルド様。ルビエル様をお連れしました」
ドアが勝手に開いた。すると、中から老人が出てきた。
「お久しぶりでございます。ルビエル大天使官長殿。私、キーナルド・スクシャルでございます。どうぞ、中へお入りください」
私達は国長室へ入った。
ソファーに座り、私は質問した。
「キーナルド。反逆者って何?」
「……反逆者とは、自称邪神と繋がっている者達です。我々も策を打っているのですが……奴等は闇魔法を使うので」
闇魔法は天使の弱点。反逆者は堕天使の可能性が高い。
「成る程。その反逆者を私に倒して欲しいから呼んだといことね」
「はい。お願いできますか?」
「大丈夫だけど……」
「有り難き幸せ」
キーナルドは頭を下げた。
「何処に居るか分かる?」
「はい。西の森林に拠点を持っております」
「オッケー。入ってくるね」
軌道を使って、森林にある拠点に転移した。その拠点は古びた屋敷だった。
「此処が拠点ですね」
「そうだね。早速入ってみよっか」
久し振りにルビエルが出てきました。
特別編は約1万字あるので、パート分けします。