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第2話 俺が次期魔王?



「それで……なんでアダリナは、俺が次期魔王になることに賛成したんだ?」


 魔王の間を退出した後、俺は四天王一人ずつ話を聞くことに。


 まずは俺のことを引きずった、アダリナ。

 彼女は天魔族だから、背中に黒い翼が生えていた。


 金色の長髪に褐色の肌で、とても妖艶的な魅力に溢れている。


 服はサキュバスか何かと思うほど、とても肌が露出されていて、いつも俺が服を着ろと注意しても聞く気がないようだ。


 いつも口うるさく俺が注意しているから、嫌われていて、四天王から俺を追放したいと考えていると思っていたが……。


「んー? だってシモンちゃん以外に、相応しい人がいないしね」

「いや、いっぱいいるだろ。それこそアダリナだって魔王としてやっていけると思うが」

「うち? あはは、無理無理! うちってそんな立場に立つ柄じゃないからね」

「……まあそうだな」


 俺が言ったのをすぐに否定するようで悪いが、アダリナは魔王には向いてないな。


 彼女は自由に、そして適当に生きている。


 その強さから四天王になっているが、魔王は強さだけじゃなく上に立つ者としての責務が課されるから、それはアダリナには向いていない。


「だが俺じゃなくてもよかっただろ。他の四天王とか」

「そういうのはもう話したからね。まあ、シモンちゃんを抜いての会議だけど」

「だから俺を抜く理由がわからないが」

「とりあえず、もう決まってることだから。魔王様があんだけ言ってるんだから、シモンちゃんも諦めて次期魔王っていうのを認めようよ」

「くそ……今からでも反対して、俺を次期魔王から、四天王から降ろす気持ちはない?」

「ないに決まってるじゃん。うち、これから予定あるから、バーイ」


 アダリナは軽く手を振り、ウインクをしながら飛んで去っていった。

 はぁ、あいつに難しいことを求めたのがダメだったな。


 ただ……次に話す四天王は、俺を次期魔王から、四天王から降ろしたいと思っていることは間違いないはずだ。

 なんせ、俺のことを一番嫌っている奴だ。



「なぁ、ディーサ」

「……なんだ、貴様か」


 四天王の一人、ディーサ。

 白と黒が混じったような灰色の髪をポニーテールにしていて、目はつり上がっていてキリッとした美人だ。


 彼女は獣魔族で、頭頂部からは狼の耳が生えていて、腰の辺りからも灰色の尻尾が生えている。


 服はアダリナとは全く違う、露出の少ないドレス型の鎧のような感じだ。


 一匹狼という言葉がまさに似合う者で、四天王の中で俺のことを目の敵にしている。


 つまり……ディーサなら、俺のことを四天王から追放したいと考えているだろう。


「ディーサ、魔王様を入れての会議、お前も参加したんだろう?」

「ああ、そうだが」

「お前は、俺が次期魔王になることに賛成なのか?」

「賛成などするか馬鹿者が」

「おっ」


 やっぱりそうだよな、ディーサなら反対してくれていると思った。


「貴様が次期魔王になるくらいなら、リューディア様が永遠にその座に就いていただいた方が何倍もいいだろう」

「うんうん、そうだよな」

「だが魔王様の言うこともわかる。貴様が次期魔王になることではないぞ、次期魔王を決めておかないといけないということだ」

「……まあ、そうだな」

「だから仕方なく、本当に仕方なく、貴様が次期魔王というのに了承しただけだ」

「……ん?」


 あれ? ディーサも、俺が次期魔王になることを賛成したの?


「貴様以外に次期魔王が務まる者がいないからだ、本当なら絶対に認めたくないのだがな」

「いやいや、俺以外にもいるだろう? ディーサ、お前が魔王になるのなんてどうだ?」

「はっ、私がか? 戯言を、私などまだまだ半人前、魔王になるなど考えられん」

「それでいいのか? もし俺が魔王になったら、お前が俺の下になるんだぞ?」


 こいつが俺のことを嫌いなのは確かだ。

 だからここまで言えば、俺を嫌いなこいつも考え直してくれて……。


「……本当に、心の底から嫌だが、それも四天王の務めだからな」


 そう言って、ディーサは「ふんっ」と鼻を鳴らして去っていった。

 えー……マジで? 


 ディーサでさえ、俺を次期魔王って認めてるの?


 俺、四天王を降ろされると思ってたんだけどなぁ……。



 あとは四天王の最後の一人に話をしに行くのだが……。


 あの子は絶対に、俺が魔王を降りることを……反対してくるだろう。


 魔王城の一番見渡しがいいテラスみたいな場所が、その子が気に入ってるところだから、そこに行けば会える。

 俺の目論見通り、そのテラスに行くとその子……四天王の一人、イネスがいた。


「あっ……シモンさん!」

「おう、イネス。久しぶり」

「お久しぶりです!」


 テラスの椅子に座り、景色を眺めていたであろうイネス。


 俺が来たことに気づいて、とても嬉しそうに微笑んでくれた。


 イネスは少し身長が小さく、俺と比べると頭一個分ほど低い。


 亜麻色の髪を首元くらいで揃えていて、綺麗に流れている。

 顔立ちはとても可愛く、その笑顔を見るととても癒される。


 服は短パンで短く、綺麗で細い足が出ていて、上も半袖で……露出がとても多いというわけではないんだが、ちょっとドキッとする。


 二人掛けの椅子の真ん中あたりに座っていたイネスだが、俺が来たことで横にズレて、「隣に座ってください」感を出す。

 その仕草がまた可愛いと思いながらも、隣に座らせてもらう。


「イネスは……その、俺が次期魔王になることは、賛成なのか?」

「もちろんです! 逆にシモンさん以外、ありえませんよ!」

「……そうかぁ」


 やっぱりか……。


 この子は俺に対して、ディーサと真反対の感情を持ってくれている。

 それはとても嬉しいんだが……盲目になってもらうのは困るな。


「本当に俺でいいのか? だって俺、イネスや他の四天王よりも弱いんだぞ」

「シモンさんは十分強いですよ! それに、シモンさんのすごいところは、強さだけじゃないですから!」

「そうか?」

「そうですよ! ボクも、シモンさんがいなかったら、四天王になんてなってないですから!」

「いや、それは違うぞ。イネスが頑張ったから四天王になったんだ」

「そ、そうですか……?」

「ああ、もちろん。イネスの頑張りは俺が一番見てきたんだからな」

「えへへ……ありがとう、ございます」


 イネスはとても照れくさそうに、頬を赤くしながらはにかんだ。

 うん、可愛い。


「あっ、シモンさん、そういえばさっきの会議で言ってた言葉、なんですか?」

「ん? なんか気に触ること言ったか?」

「シモンさんが、『四天王から追放』みたいなこと言ってたじゃないですか!」

「あー……そうだな。ぶっちゃけ、今日の会議で俺が追放されると思っていたんだが」

「そ、そんなことするわけないじゃないですか! ボク、シモンさんがいなくなったら……!」

「い、いや、いなくならないぞ? だから泣くな? なっ?」


 慰めるようにイネスの頭を撫でると、しばらくして泣きそうになっていたのが嘘だったかのように、頬を赤く染めて恥ずかしそうにしている。


「ご、ごめんなさい、シモンさん……だけど、シモンさんが追放されるなら、ボクも絶対についていきます!」

「ああ、わかったよ。追放される予定はないから、イネスは四天王の仕事をしっかりするんだぞ」

「はい! わかりました!」


 イネスは満面の笑みで、そう強く頷いた。


 やっぱり……イネスは俺を次期魔王から降ろしてくれる気は、さらさらないだろう。

 こんな可愛い子に好かれるのは、上司としてとても喜ばしいことだな……。


 ――だが、イネスは男である。


 うん、男なんだよね、全く見えないけど。

 はぁ、とりあえず、やはり俺は四天王から追放されることはまだなさそうだ。





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