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物語由来の魔法

あ、こんにちは。

お久し振りです。帰ってこられた天使だよ!!

ひゃっはぁ!!

シャバの空気は上手いぜぇ!

さって、自分がいない間にぃ~なんか、大変なことになってる感じ~?

まったくう!天使がいないと皆駄目だねえ!(まあ、この声は向こうには届いていないわけだけど、)

後輩君がつなげてくれたらしいけど、やっぱり、自分がいないと、この話に花がないというか、いまいち魅力不足だよね!!

やっぱりぃ~自分みたいなぁ~凄腕天使がいないとぉ~

だめだよねぇ~


え?まってないって?

や、やだなぁ~皆、ツンデレ?

あ、はい、

話進めまーす。


こほん、

えー、プラーンと持ち上げられたアエラがようやく口を閉じると、王子はそっと顔を覗き込んだ。

それを、アエラも見上げる。


「落ち着いた?」

「先にこのカオスを始めたのは君だと言うことを忘れないでよ。王子様。」

「それもそうだ。さて、お巫山戯はここまでにしよう。」

「巫山戯てた自覚はあるのね。」

「当たり前だろう。」

アエラを元々座っていたイスに座り直させると、自分も向かいのイスに座る。

真面目な話し合いが始まる雰囲気がその場にいた研究者達の肌をピリリと撫でた。

はっきり言って舐めていた。

たかが学生の、家柄の優るが故に入学したような王子とお嬢さんにどれほどの推理が出来ようかと。

しかしその体から漂う雰囲気も、先ほどとは違う目つきも、

自分たちと大差ない、下手したらそれ以上の知性を感じさせた。


「アエラ、詳しく教えて貰えるかい。その魔法について。」

「んー。あんまりいいものじゃないから、悪用しないでね。」

「わかってるさ。」

アエラは、うー、と唸ると、思い出すように話し始めた。

「去年の秋頃かな、図書館で本を読んでたんだよ。」

アエラの近くに座っていたクマが一匹、するりとその場を離れる。

真っ直ぐ飛んでいった先は西の壁一面に広がった書棚。

クマは暫くきょろきょろした後、ある一冊の本を手に取った。

それは、なぜそこにあったのかも分からないような薄い絵本のようだった。

今まで騒動を無視していたか、自分の仕事に集中していた研究者達はその自動駆動人形に目を奪われている。

クマが持ってきた本をありがとう、と受け取ると、アエラは表紙をエリックに見せた。

「はいこれ。知ってる?」

「………知ってるもなにも、私がここに置いていった本だ。」

「たしかに。王子様がこの部屋で読まれていて、置いて行かれましたのを私があそこに仕舞ったのでした。もう何年も前のことですが。」

「内容しってるなら助かるね。」

アエラは表紙を開き、何枚かページを捲る。

簡単な子供用絵本とはどこか一線を画したそれは、作者も今では分からない古くからある物語の一つだった。

曰く、ある少年王子が国を追われるところから始まる。


『第三王子で器量のよかった彼は、兄二人に邪見に思われ、父王を殺そうとしたという無実の罪で国を追われてしまう。

頭もよく、魔法の才もあった彼は、森の奥深くにすむという大魔法つかいに弟子入りするため森を三日三晩歩き通す。

ようやくその者の家に着いた王子は、一度王子だという理由で弟子入りを断られてしまう。

王国から追放されたにもかかわらず王子という肩書きのみ背負わされた王子は激高し、魔法で姿を隠し、再び魔法つかいの元を訪れる。(姿隠しとはいえ、一歩間違えれば永遠に戻れなくなる高度魔法である。)

勿論、魔法使いはすぐにそれと気づいたが、そこまでする王子の心意気を認め、弟子にする。

それから、慣れない家事を分担しながら、王子は魔法を教わった。

攻撃魔法は殆どなく、生きていくのに役に立つものばかり教えてもらった。

ある日、王子は害虫退治の魔法を教えてもらった。

その魔法をかけられた虫は、暫く生きたまま、巣まで帰り、その場で事切れる。

その虫に紐を結んでおけば、巣のありかが分かりすごと潰せるという代物だった。

しかし、王子は首をかしげた。

巣に帰ってくれるなら、その虫が他の虫を殺すように魔法をかければよいのではないか、と。

王子は密かに魔法をくみ上げ、ある日台所に出た虫にかけてみた。

すると次の日からその種の虫はみなくなった。

これは上手くいった、と王子はそれは喜んだ。

若気の至りか、王子はそれをありとあらゆる虫にかけまくった。

補助道具である杖を一心不乱に回し、魔法をかけまくった。

それから数日、町から生活用品を売りに来てくれていた行商人の姿が見えなく、王子も魔法つかいも病気にでもなったのではと、魔法役を手に国へ行った。

そこに人は一人もいなかったという。』


と言う、用は子供に魔法を安易に使ってはいけないと言うことを教えるための教育絵本だ。

この国ではなかなか馴染みの深いものだが。

絵本にしては少し多いページの鮮やかな絵柄が続く中、あるところで手を止めた。

はい、と二人に見せたのは王子が魔法つかいに魔法を教わるシーン。

「いや~。ここの魔法、ほんとにないのかなぁ~と探してみたわけですよ。」

「どこを探したの?」

「……企業秘密だからね。学校の図書館の奥。あそこ、時々知らない本が増えてるんだよね。謎に。」

「それは、知らなかった。」

「多分私しか知らない。司書や先生も把握してなかったから、蔵書情報書き換えて、始めからあったように目立たないように本に紛れ込ませてるの。」

木を隠すなら森に、本を隠すなら本棚に、と言うわけだ。

学び舎の図書館とはいえ、広すぎるそこは生徒からよく見られる分野も決まっているわけで、

みられない書架は埃を被った物置同然。

「危険ではないのかい?誰かの目に触れたら。」

「触れたとして、読めないでしょ。古代文字だし翻訳魔法使わなきゃ。それに、貸し出された本は私には分かる。毎日見て回ってるから、なかったら気付くでしょ。」

「……そんなもの?」

呆れている王子。

アエラ、時々授業サボって図書室に入り浸ってるもんな~。

そろそろ教師からジッポリ怒られるぞ~。

「んで、その本の中探したらあったわけですよ。見つけるのに三カ月手直しに二カ月。大変だったよ~。」

気怠げに言うアエラ。

クマもどこか疲れたようにふらりと揺れる。


「どんな、魔法だったんだい?」

「んー、私が直したのは物語の王子様が改造する前、時間差で死に至る魔法。問題はその死に方、毒でも、失血死でもない、老衰なんだよ。見た目は変わらない、その身に宿る魂の老化。」

「魂の老化?」

「体が成長すると共に、魂も成長しているのだよ。」

アエラは、おもむろにクマの人形を取り出す。

その人形の胸元でピンク色の宝石が光っていた。

「人の魂って不思議なことにね、ある程度歳をとると、またどこかに帰って行く。それが魂が今世での成長を終えた瞬間なの。」

宝石がほわりと浮かぶと、人形は床にすたりと落ちた。

まるで、魂が抜けたかのように。


「私も最初知ったときはびっくりしたね、無神教徒だから、まさかこんな宗教的な概念が魔法にもあったとは。」

「そうだね。さて、問題は。」


「「これを、誰が知っていたか。」」

同時に互いを指差し言った二人は、

同時に頭をかしげた。

さて果て、どうなることやら。

次回に期待だね!!

では、まった次回~!

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