疑わしきは………
皆様方、こんにちは。
最近は暑く、寝苦しい日々が続いておりますが、しっかり疲れは取れていますか?
天の国はとても涼しく、住みやすいところです。
皆様も、安心して生き、そして此方へ訪れてくだしい。
あ、
勿論、善行を積まなくてはいけませんよ。
閑話休題
此方の学園でも暑い夏にヘトヘトな皆さんが集まっている学内食堂。
夏限定の氷菓子等を目当てに、男女問わず多くの学生が集まっていた。
そして、その中でも一際目立っている少女達がおりました。
「ソフィアン、マリアナ。それ一口頂戴~!!」
「アエラ、では交換といたしましょう。」
「私のもいいわよ。」
「わぁ~い。ん、あんまぁ~。」
「アエラ。口の周りにクリームが。」
「全くもう。落ち着いてたべなさい。」
無邪気に甘味を口に含むアエラと、それを笑う二人の友達。
大分煩くしているがそれを注意する者もおらず、ただ外野からじろじろと見るのみであった。
それだけ見られれば緊張もしようものだが、見られることになれているのか、将又周りをあまりに気にしていないのか。
多くの視線に晒されながらいつもの通りのやりとりをする三人は大物に違いない。
のだが………
「ねえ、なんで私達こんなに見られてるのよ。」
「アエラ、貴方またなんかしたの?」
「えっ?えつ、私?」
急にこそこそ話し出したかと思うと、誰のせいでこんなに見られているのかという話になった。
アエラのせいだと疑って止まない二人に、特になにもしていないアエラ。
困ったもんだと首をかしげる。
それもそのはず、アエラさんに関しては今回何もしていないのですから。
この状況を作り出したのは、
ほんの些細な噂……
『今回の事件ってさあ、さつがいほうほうがよくわからないらしいよ。』
『え?魔法じゃないの?』
『誰も見たことが無い魔法でさ、捜査も難航してるらしい。』
『え?もしかしてアエラさんじゃない。新しい魔法作れるのなんて彼女くらいでしょ。』
なーんて、たわいもない噂が、いやに現実味があるものだから広まり広まりこうなったわけである。
疑わしきは罰せずとも言うので、誰も聞き出すことは出来ないが、それ故じろじろ見られたらアエラもなかなか生きずらい。
「え………、あ、もしかして。」
「何かありましたの?」
「心当たり?」
「花壇の花……勝手に抜いてしまったの皆にバレた?」
「………それか…、!」
「きっとそれですわ。」
違いますね。
噂の中心に居る人物ほど、噂に疎いものですから、アエラはもう意味も分からずにあたふたしているわけです。
「謝りましょう。ね、謝りましょう。」
「だ、誰に?」
「事務員さん?用務員さん?」
「薬学の先生ではないですか?」
「「それだ!」」
「おや、盛り上がっているところ少々悪いね。」
ソフィアンを指さしたアエラとマリアナは声のした方に振り返る。
まあ、振り返らなくても声で分かるのだが、
「っ!すみません。どうぞ此方にお座りになられて……」
「ああ、いいから。マリアナこそ座りなよ。」
「は、はい。」
機嫌がいいのかにこにこしているエリックに、マリアナはおどおどしながら座る。
途端にひそひそ声が止まるところ、エリックはなかなか優秀な王子様らしい。
「さてと、久しぶりだね。」
「うん。今日兄様は?」
「テオドールかい?暑いから川に入ってくるって言ったっきり帰ってこないんだよ。」
「お~。まあ、明日らへんには返ってきますよ。あいつ泳げるし。」
「だといいねえ。」
会話の内容もさることながら、フレンドリーに話すアエラにソフィアンは椅子の下で思わず彼女の太股を摘まんだ。
「ったぁ!」
「アエラ、今すぐその口を閉じなさい。」
「ソフィアン、酷い………痛かったぁ!」
「あ、アエラ、お願い。お願いだから黙って………」
マリアナに至っては半泣き状態だ。
アエラとエリックが関わるとろくなことにならないことは身に染みて分かっている上に、どうやらエリックの父や母にアエラとの関わりをコントロールするよう頼まれているらしい。
王子の婚約者も大変である。
「気にしないで二人とも。私は気にしないから。」
「そうだよね~。ほーらくまだぞ~」
『めっちゃ久しぶりなにょに、くまじぇんじぇんはにゃすことにゃい。』
「くまさんは、今日も元気かい?」
『元気なのだ~!』
それは良かったと笑う王子。
頭を抱えるマリアナを見ないふりして、アエラは王子に問いかけた。
「ところで、なんの用だい。お坊ちゃん」
「今回の事件……魔法解析班が立てられたんだけれどどうも上手く進んでないみたいで。」
「だから?」
「アエラ、君にメンバー入りして欲しくてね。」
如何かな、と指を君で王子は問うた。
くまの人形が一度、二度回転すると、アエラの元にとんでいく。
そのまま肩に座って王子をじぃと見据えた。
「利点がないよ、王子様。」
「魔法のプロとの仕事だ。それでもかい?」
「私は魔法のプロになりたいわけじゃない。なんなら遊び人になりたい。」
「………君という奴は。」
「いいじゃん遊び人!」
そう言う話ではないのじゃないか?と言うのがマリアナの思想だ。
大体、王子に頼まれて断っているのは彼女くらいだ。
王族の頼み=命令だと考えるものが多く。
なんなら、王族反逆罪だと訴えるものすらいる。
アエラは常に危ない橋を渡っているわけだ。
「……分かったよ。アエラ、ちょっとこっちに……」
「ん?」
言われるまま、アエラは王子による。
エリックはアエラの耳元で何事か呟いた。
話が進むに連れ、アエラの顔がどんどん明るくなっていく。
そして、
「ん、分かった、やる!」
「そうかい。そう言って貰えて嬉しいよ。」
「王子は駆け引き上手だねえ。」
「良く言われる。」
二人は手を握り合い、うんうんと頷いた。
このあと、アエラがマリアナに(嫉妬故に)怒られるのは言うまでもない。




