事件現場の担当者達
青息吐息といった様子。
人間というものは、良くため息をつく。
それが気持ちの良いものなのか、それともその逆なのか。
残念ながら私には分かりませんが、彼の表情から読み取るに、後者なのでしょう。
こんにちは、皆さん。
今回は先輩天使が不在のため、急遽私がこうした形で皆様にお伝えすることとなりました。
どうも、新米天使です。
自分はまだまだ天使育成所を出たての若輩者ですが、これから、実地で学んでいく所存でございます。
本当は、先輩のお仕事ぶりをぜひぜひ拝見してみたいところですが、それも叶わぬようなので、
場繋ぎのようなものになりますが、代わりをさせていただきます。
参考書通りのものになってしまい、面白くないでしょうがどうかご容赦を。
少女の殺人事件があったという現場にて、生徒会の生徒達はあたふたとしていた。
彼らとてまだ学生、そんな経験初めてで、右も左も分からないのだ。
まあ、大人だとしても殆どの人がそのような経験はないだろうが。
高等部のモルガーは相変わらず頭を抱えている。
高等部生徒会長が、如何しても血が無理だからと、外との連絡に回るから、どうにか此方を頼んだと、血が大丈夫な数人に任せて行ってしまったものだから、残されたものは大変。
血が大丈夫といっても、長らく死体の近くにいれば気分が悪くなるものは後を絶たず、ひっきりなしに交代していれば人員は足りなくなる。
仕舞いには、大学部、中等部の生徒会役員も引きずり出しての対応となった。
まあ、中等部の一年二年に任せるのは可哀想なので、高学年からだけだが。
流石のモルガーもやはり疲れているのか、先ほどから頭痛は止まないしため息が漏れる。
常日頃、割と無理をしている自覚はあるので、もう沢山だ。
「あの………モルガー先輩大丈夫ですか?」
「………ああ。君は、」
「中等部五年。ケレスです。」
「ケレス……ああ。あの。」
「憶えていてくれたんですか?」
ふわっと嬉しそうな雰囲気を出した少女をモルガーは不思議そうに見た。
なんというか、
この場に似合わぬ雰囲気だったから。
まるで何も気にしていないような。
不思議に思っていたのが顔に出ていたのだろう、ケレスが困ったように微笑んだ。
「おかしい…ですよね。殺人事件に会うのは初めてなんです。でも、親が医者で。遺体は、慣れているんです。」
医者が他人の死になれちゃいけないんですが、ね。と、
寂しそうに微笑んだ。
それから、首を振ると、手に持っていた水筒を手渡してくる。
「これは?」
「大分お疲れのようなので、交代しましょう。それは、私からの差し入れです。ものが食べれそうなら、ぜひのんでください。」
「お茶……かな?」
ケレスはこくりと頷くと、自慢げに指を立てて、ふふん、と鼻を鳴らす。
「ただのお茶じゃないです。薬草類には強いので、特性のお茶です。」
「薬草………苦そうだな。」
「苦くないです!体にいいですよ?」
「……そうか。頂いていこう。」
「はい、お疲れさまでした。」
「ああ。」
ぺこりと頭を下げるケレス。
慇懃で上下関係を表してくれる彼女に、モルガーはある程度の信頼をおいていた。
信じられる人間の一人だったから、その場を任せたのである。
肩の荷が下りたモルガーは一つのびをする。
それから首を左右に振る。
「あー、疲れた。少し仮眠でも取るか。」
ぼーっとする頭を叩き起こすように振ると、寮に向かって歩き出した。
手に持った水筒がチャポチャポ鳴る。
はて、コップはどこにしまってあったか、とモルガーは考えた。
自分の部屋でお茶を飲むことはないし、
実家から持ってきたマグカップがどこにあったかなどもうとっくに忘れてしまっていた。
きれい好きで、部屋の中のものを丁寧にしまってくれている同室の友にでも聞いてみるか、と、
モルガーは久しぶりのポジティブな思考でほんの少し笑った。
息抜きも必要な人間だから、
地獄の仏をみてみるのも、
何もかも忘れる時間も、
やはり必要なのだ。
あと、有能な後輩も。
自分も、精進いたします。




