思索
少々乱暴に腰を下ろしたエリックは、そのまま頭を抱えるように額に手を置いた。
正直、先ほどから頭痛が治らない。
何もかも考えることを放棄したいのに、出来ないもどかしさというか、歯がゆさというか。
兎に角、そう言ったものたちにイライラは募るばかりだった。
「お前、相当疲れてるだろ。」
「……君に比べたら、ね。」
「だろうな。ハーブティーでも飲むか?」
「いれてくれるのかい?」
そんな友達の様子に心を痛めてか、テオドールがいつもなら見せない優しさを見せる。
と言うか、彼は誰かに茶を入れたりなんか絶対しない。
例え、地球がひっくり返ろうが、上司の大天使が堕天なさろうが、絶対にない。
……堕天しねえかな。早めに。
………。
そんな様子に少々驚きながら、彼なりの優しさを享受しようかと、エリックは首をかしげる。
ところが、返ってきたのは違う返事だった。
「俺が茶を入れるわけ無いだろう。」
「……やっぱり?じゃあ誰に頼むの?」
メイド達なら外だけど、呼ぶ?と、エリック。
それにもテオドールは首を振った。
そして、それ以外の人の名を口にする。
恐らくこの場に最も相応しくない人物の。
「アエラに、頼もうかと思う。」
百戦錬磨の王子さんも一瞬顔をしかめる。
それから、表情を取り戻して取り作ったような優声で友に問いかける。
「…………へえ。なんで?」
「否、あいつ上手いから。ついでにケーキ食いたいから買ってきてもらう。」
テオドールの腹がぐぅ……と鳴る。
全く、空気を読む腹だ。
「私は、あんまり会いたくないのだけれど?」
「……?喧嘩でもしたのか?仲直りしなくては。」
「………前から思ってたけど、君相当……嫌。何でもないや。」
わざとか真剣か分からない友達に、エリックは困ったように笑った。
ほんとにこの友達は、
どこまでも自分の考えのはるか上を行く。
そんなところが面白くて、
連んでいるのもあるが。
なんと言っても上流階級の社交界には無い、無垢さがあるように思えた。
厚塗りも上書きもされていない彼自身の性格に、
そっと触れあった温かみが好きだった。
気を抜いても惑わされない安心感に、心から揺蕩んでいるようだった。
心地が良い。
エリックはいつの間にか笑っていた。
この友人に、笑わされたと言ってもいいだろう。
テオドールもそれを見て、立ち上がった。
人の表情は一応読もうとするのが彼のいいところの一つだ。
まあ、全く読めていないのだが。
「兎に角、俺連れてくるな。」
「ああ。うん。もうどうにでもしてくれ。」
「?ハーブ嫌いか?」
天然もここまで来ると態とらしい。
全く、
楽しい疲れだ。だから、此方も戯れ言を溢してしまう。
「そろそろ君の相手も疲れるね。」
「なっ………」
それに、意外にも驚いたテオドールだった。
「何?」
「俺というと疲れるのか?」
「そう言ったね。」
「………俺、返ろうか?」
「え?なんで?」
「疲れるんだろ?」
「は?」
どこか既視感があるのは、
昔の許嫁の女とこんなやりとりをしたからか。
当時まだ幼かった自分にも増してとてつもなくお馬鹿さんだった彼女は意思疎通がまったくと言っていいほど取れなかった。
馬鹿というか、彼女はなんというか。
不思議な子だった。
故に、かみ合うことなど無かった。
当時は、それがストレスだったのだが、どうしてだろうか、友という特別な存在だからこそ、
面倒くさいことも、割と許せる。
「言葉のあやだよ。見解の相違。兎に角、頼むよ。お茶。」
「?おう任せろ。」
どうも納得いかない風の友に、笑みがこぼれる。
本当にこの友は、
どこまでも私を笑わせる。
身に付けてきた作り笑いより、もっともっと深いところから零れ出す笑い。
胸の中のもやもやを掻き消してくれる笑い。
自分は、意外とそれに救われているのだろう。
***
こんにちは。まりりあです。
今回は、話が全く進まなかったですねえ。
おかしいな。
兎に角、次回こそどんどん進めますよ!
では、また次の機会に。




