うちの妹と友達が一発触発な件
……。
ああ、こんにちは。テオドールだ。
否、俺は一体誰に話し掛けているのだろうか。
まあ、少なくともこうして現実逃避をしないと、やってられない状況である。
突然だが、俺の妹と友達は仲が悪い。
俺には妹が二人いるが、おそらく二人とも仲が悪い。
下の奴に関しては、まあ、それ相応に理由があるからどうしようもない。
ただ、上の方に関しては、
完全に性格の不一致だ。
ただ、互いの利用価値は把握しているため、普段は反発し合うことはない。時々、冷戦状態で火花を散らしているのだ。
「わあ、王子様。こんにちは。」
「やあ、アエラ。元気かい?」
「元気ですよ。クマたちも元気です。」
アエラは周りに浮かぶクマの人形を一つ回して見せた。
それに、にっこりと作り笑いを浮かべると、友達であるエリック。
アエラも返すように微笑む。
「妹がいなくなったというのに、暢気だね。」
「……妹……ですか?」
「……ああ、」
どうやら妹は全て知らないふりをするようで、こてんと首をかしげて見せた。
それに、エリックはふっと、笑って見せた。
「否、君に言っても無駄だったな。」
「はぁ……そうですか?私、もしかして王子様にも私の妹が知られているのかと思いました。」
「……ほぅ。」
本音、何言ってるんだこいつは、と。
隠したいんだか、何が言いたいのだか。
王子は、関心を示すように相槌を打つとアエラの着いていた円形テーブルの向かいの席に座る。
それから、近寄ってきたメイドの一人にお茶を頼み、手を組んでアエラに向き直った。
「続けてくれ。君の妹の話は気になる。」
「あらあら、王子様にお話しするには、些か滑稽な話ですわ。」
「そんなこと無いだろう。私はぜひ聞きたい。」
「そうですか。では、お茶が届き次第お話しさせていただきましょう。」
アエラは、自分のカップを一つ無意味にかき混ぜた。
底に溶け残っていた砂糖のつぶが紅の紅茶に混ざって消えた。
「さて……私の妹の話でしたね。」
「ああ。」
「王子様も、御妹様がいらっしゃるとか。妹の可愛らしさについては、話すまでもありませんね。」
ふっ、と二人して笑う。
はっきり言って、高度な笑いすぎて、そんなに笑えない。
つか、笑えない。
「貴女にとってそうであるように、私にとっても妹は、それはそれは可愛い存在です。」
「そうだな。喧嘩したりはしないのか?」
「喧嘩なんてしませんよ。あちらがどう思っているかは兎も角、私は彼女のことが本当に大切ですもの。」
「へえ……その妹を、易々と手放したのかい?」
「………。さて、何のことでしょうか。」
「しらを切るのかい?続けてくれ。」
「ええ。」
俺は、ずっ、と音をたてて紅茶を飲んだ。
あっちい。
「少しカーブかかった髪も、優しく微笑む口元も、全部全部大好きです。」
「熱烈だね。」
「長い付き合いですもの、永遠に手放したくないくらいですわ。」
「そうか、へえ。」
……これは。あれだな。
話がかみ合ってないな。
エリックもそれに気が付いているのか、微笑みはそのままに、訝しげに眉を歪めている。
「大切な妹ですもの。毎日一緒に寝ていますわ。」
「………なるほど、君の部屋にいるのかい?」
「ええ。」
「君のルームメイト…シャルロッテはさぞ迷惑しているはずだね。」
「あはっ、彼女ったら、妹のこと見ては驚いてますの。それから、私の話を聞いて、先生に行ってくるとか言うから、引き留めるのが大変でした。」
「そりゃそうだ。二人部屋に三人いるのだろ?」
「ええ。私は狭くないので、別にかまわないのに。」
「君がそうでも、彼女は違うのだろう。精々、労ってやりなさい。」
「勿論ですわ。大切なルームメイトですもの。」
二人は同時にカップを持ち上げると、こくりと一つ口のんだ。
アエラは最後の一口だ。
王子がメイドを呼ぼうとして、アエラは、手を上げてそれを制した。
「お代わりは結構ですわ。ティータイムはこれで終わりにしますから。」
「そうか。残念だ、もっと君の話が聞きたかった。」
「そんなに聞きたいのなら、また部屋に遊びに来てくださいませ。妹も交えてお話しいたしましょう。」
アエラのその言葉に、王子はピクリと反応する。
それから、へえ……と目を細めた。
「随分と、大胆だ。」
「ええ。だって本当に自慢の妹ですもの。」
「私を呼ぶよりまえに、君のお兄様を呼んだらどうだい?」
アエラはこちらをチラリと見て、笑った。
なんだよ。
「駄目ですわ。兄様じゃ。」
なんだよ。喧嘩うってるのか?
「そうなのかい?」
「ええ、兄様はきっと興味ないですもの。」
「興味?」
「ええ。彼女のためにドレスを縫ったり、帽子を作ったり、きっと兄様は興味ありませんわ。」
「ふむ。それはたしかに。」
まるで俺が風流ごとの一つも知らない、つまらない男みたいな話ようだな。
事実だ。
俺は、ゲームとクマ以外にさほど興味ない。
その時、校舎の方から彼女を呼ぶ声が聞こえた。
おそらく仲良しの友達だろう。
アエラは其方をちらと見て、王子に目配せする。
察した王子は、どうぞ、楽しかったよ。と、行って良いことを手で指し示した。
アエラは、椅子を引いて立ち上がり、此方に礼を落とすと背を向けて去って行った。
カップだけが、ちょこんと残されて。
「で?どう思った?」
「どう考えても、話がかみ合ってないだろ。」
「だよねえ。彼女、ほんとに妹のこと憶えてるんだよね。」
「バッチリな。」
「はぁーあ。」
王子も紅茶を一気にあおると、おもむろに立ち上がった。
「行くよ。彼女の部屋に間者を忍び込ませる。」
「………うわ。」
「引いてくれるな、友よ。事実は、はっきりさせなくてはいけない。」
「まあ、俺は止めねえよ。」
また、面倒くさいことになりそうだと、俺は小さくため息をついた。
***
暑くて、大変です。
体温も上がって眠たくなるし、座っているだけで汗搔くし、最悪ですね。
では、次の機会に。




