裏の裏
話は少し遡る。
色々あった魔力検定試験実技大会。
一段落して、犯人も分かって。全てが丸く収まっている……ようにも見えた。
でも、そこまで馬鹿でもなければ、楽観的な思考の持ち主でもないのがこの王子、エリック。
机に向かって、難しそうに唸っていた。
ブツブツ言いながら、手元の紙に何かを書き付ける。
「エリック。言ってたとおりだ。やっぱり、町の粉屋さんから仕入れられた記録がある。」
「同伴者は?」
「基本一人だ。だが、」
「思った通りか?」
「まあ。」
「素直に捕まえられるか?」
「まあ、無理だろうねえ。」
握っていたペンを放り出すと、エリックは背後に立つテオドールに向き直り、ため息をついた。
「君でも分からないかい?この後がどうなるか。」
「展開が読めない。情報が少なすぎる。」
「そうか。そうだよねえ。」
上手く隠すなあ、と、エリックは苦笑いを溢した。
「さあて、明日は星祭りか。」
「可愛い妹達の見守りだな。」
「…………お前は、俺を止めないのか?」
手に持った本を、興味なさげにパラパラとめくるだけのテオドールを、エリックは見上げる。
言わんとしていることは何となく分かるので、テオドールは、何も言わずに二、三度瞬きした。
詰まるところ、妹の関わるらしい事件を大事にしようとしているから、止めないのかと、言うことだ。
「止めないよ。」
「それで、妹やお前の家が被害を被ってもか?」
「まあ、その場合あいつらに非がある。間違いなくな。」
「そんなに割り切れるものか?」
「んー。まあ。」
テオドールは手に持っていた本を一つ叩くと肩をすくめて見せた。
「どうせあいつらのことだ。考えていないこともないだろう。」
「裏に何かあるって?」
「それが何かは分からんがな。逸物どころか、なん持つか抱えているのがあいつらだ。」
「よくもまあ。妹のことをそこまで。」
「あれだよ。お前は忘れてるかも知れないが、俺もまたあいつらの兄弟だってことだ。」
「ん?」
エリックは見た。
テオドールは、そっと
そっと、口角を上げて、
笑っていた。
「あいつらがそうであるように、俺もまた兄弟の一人だ。そして、俺が三人で最も長い間兄弟を見続けている。」
「つまりどういうことかな?」
「俺もまた、お前の恐れる兄弟の一人だってこと、憶えておいたほうが良い。」
「ふーん。何か、考えてるってこと?」
「あるわけ無いだろ。その場で考える。それが俺のやり方だ。」
「はいはい、期待してるよ。」
「で?」
「何が言いたいか分からないって顔してるね。ロエルちゃん。」
「ちゃん呼びですか?王子様。そんなに仲良くなかった気がしますけど?」
「うん。私は君とは仲良くないし、仲良くなろうとも思わない。」
「私が、悪だとでも言いたいのですか?」
「否、言わないさ。悪の定義は分からない。だが、私は人に害あるものを悪と呼ぶさ。」
「あー、シャルロッテのこと?あれは私の企みじゃないの。私は、そうね、あくまで情報屋。手口を流しただけだもの。」
「悪意を持つ人間は他にいると?」
「貴方には言えないけどね。」
美しいドレスが、赤い明かりに映える。
怯えた顔や、驚いた顔の友を振り向きもせず、
私は只前を向いて立っていた。
威圧感、と言う奴だろうか。
とにかく凄い気迫で、身がすくむようだ。
まあ、ここでも私がこう平然としていられるのは、これも全て私が招いたことであるからで、
「で、私は何を話せば良いの?其れとも殺しますか?」
「殺す?大分突飛もないことだねえ。」
「そうでも無いでしょう。私は、いろんな情報をそれはいろんな方に売っています。聞きたいですか?」
「さて、どんな独白で?」
「長くなりますよ?」
裾に縋り付く友達の頭を撫でながら、少女は微笑んだ。
その顔が恐ろしく見えたのは、きっと彼だけではないのだろう。
……。
天使もまた、怖くて仕方がない!!
うっひゃあ~。
次回につづくぅ!




