4 目的
「イッタ……二度も撲ったな!お母さんにしか撲たれたことなかったのに!」
「お母さんのはビンタだったでしょ。」
「そう………我らが創造神マミーによる怒りの鉄槌……痛かったぁ。」
「………お母さん。元気かなぁ?」
「病気とかは、まあしてないでしょうね。」
「タフだもんね。」
「おかしいよね。あれは。」
しばし、向こうの世界への郷愁に駆られる。
こうして、兄妹で思いを馳せたことが此方に来てから度々あったが、最近は忙しくてそんなことも無くなっていた。
今では、此方の習慣に慣れ、向こうの生活習慣を懐かしく思う。
最初はあんなにあたふたしたのに。
なんだか、染められてしまったようで悲しく、寂しくもあった……
「って!ぼーっとしている暇はないの!どういうことか一から説明しなさい。」
「え……。長くなるよ?はしょっていい?」
「良いよ。」
「うんと。ここに居る王子様が、恋に落ちてなんやかんやあって結婚して爆発する。」
「…………………………おい。」
「はい。」
あまりにも適当な説明に思わず姉を睨み付けるロエル。
アエラも分かったようで素直に返事をした。
「私の言いたいこと……分かるよな。」
「………承知しております。」
「……うん。そうだよね。お姉ちゃんいいこだもんね?巫山戯たりとかしないもんね。次やったらまじ殺す。」
「すんまそん。」
語尾がまじ殺すなのかと思うほど鈴菜はその毒を吐く。
ロエルの時は、セーブしているみたいだが、姉と自分しかいないここでは、そのたかが外れるらしい。
ここで話された言葉がどう影響したかは分からないが、三人が同じ方向を向いたこの瞬間、何か未来は変わっていった。
「まだ、寝ませんの?」
「……ソフィアン。申し訳ありません。もう、寝ますわ。」
「……………差し出がましいようですが、何かあれば聞きますわよ。」
「……いいのです。」
めくりあげていた袖を元に戻すと、枕元のスタンドライトを消した。
ごそごそと布団に潜り込み、今日一日の疲れを吐き出すように深く息を吸って吐いた。
そっと目蓋を閉じると、昼間の庭で笑う三人の兄妹が瞼の裏に映った。
本当に、楽しそうだった。
「………もし、いい辛いのなら、私が。」
「ソフィアン。いいのです。」
「マリアナ。でも……」
「私は、事を大事にしたくない。分かってくださいますか?」
「え、ええ。」
ごめんなさいと、心の中であやまった。
思ったよりきつい声が出てしまった。
彼女が心から私のことを気付かって心配してくれていることは火を見るより明らかで、私もその優しさに溺れて、何もかもを解決して欲しい。
でも、
自分の感じる痛みを他人に感じさせてはいけない。
自分以外の人間が不幸になることはしてはいけない。
私はまだ大丈夫だから、
他人を傷付けるくらいなら、私はいくらでも傷付くから。
脳裏に浮かぶ母の顔に笑いかけた。
『お母様。私は、これであってますよね?』
声にすらならない問に答えるものは勿論無く、
ただ、想像の母親が何時もより笑みを深めてくれたような気がした。
***
こんにちは。まりりあです。
短いですが、今回はここでおしまい。
次回からは日常編のスタートです。
誤字脱字ありましたらお知らせください。
では、次の機会に。




