星祭りと獅子
干涸らびたミミズが、良く夏場の路上で死んでいるところを見る。
体内の水分がなくなり、鮮やかだったピンク色が濃い赤にも似た色になり、
車や人に知られずふまれ、時に虫に食べられ。
彼等は寂しくコンクリートの上に横たわる。
そんな感じだ。
テストも終わった次の日。
休みである今日、町へ出掛けるものは少ない。
なぜか?
前記したようにみな干涸らびたミミズのようになるからだ。
何時間も机にしがみつき、一点でも多くの点数を拾い上げ、
零れたものを見て、涙をのむ。
精も根も使い果たした学生達は、休みである次の日は死んだように深い眠りにつく。
勿論、そうでない奴もいるが。
寮の中庭、まだ日が上がって数刻なのにも関わらず、しでに疲れ切っただが、芯のある声が響く。
木刀が空を切る固い音と共に。
「やあ!」とも、「はっ!」ともとれる声とともに木刀を振り続けるのは、我らがロエル。
テスト次の日の疲れなど微塵も見せず、いつも通りの訓練をこなしていた。
馬鹿だなぁ。
「ねえ~。ロエルゥ。馬鹿なの?疲れないの?」
「疲れた先にあるのが成長。はっ!」
「脳筋発言やめてけろ……。見てるこっちが疲れるわ。」
「じゃあ、目を瞑れば?」
「瞑ったら寝るだろ。」
「寝れば?」
「駄目だ。今寝たら昼まで起きない。休みの日を一日寝て過ごすなんて勿体ない。」
寝て過ごすのは嫌なのに、ゴロゴロして過ごすのはオッケーらしい。
判断基準がよく分からない。
「アエラ姉も、訓練したら?」
「魔法の?」
「そう。」
「ん~。」
汗をふきふき、ロエルがようやくアエラの隣のベンチに腰掛ける。
そっと水筒を渡すあたり、アエラもお姉ちゃんしてるなあ。
「魔法……あ、魔法と言えば、お祭りがあるらしいよ、」
「祭り?何時?」
「三日後?」
「週末か。」
「うん。」
水筒で喉を潤しながら、ロエルはアエラの話に耳を傾ける。
なんだかんだ、仲が良い二人なのだ。
「星祭りって言うらしい。七夕みたいだね。」
「姉さんの知ってる情報ではなかったの?」
「祭りはあったけど、名前までは。」
「ふーん。続けて。」
「なんか、星の女神様をたたえる祭りらしいんだけど、女性は髪に星飾りを付けて、男性は獅子のブローチを付けて、町を練り歩くらしい。」
「どういう意味が?」
「神話の話みたい。」
曰く、この世界の神話にある星の女神と獅子のお話。
湖の畔に住んでいた星の女神は一頭の白い獅子と暮らしていた。
そこに男が迷い込んで、恋に落ちる。
それを怒った天心様が人を殺そうとするが、星の女神と獅子がそれを阻止し、代わりに命を落としてしまう。
湖に、星の形の髪飾りで縛った女神の髪と、獅子のブローチを付けた獅子の毛を沈め、男も身を投げた。とか?
「凄い話だな。」
「だよね。」
「で?何か事件が起きるわけ?」
「起きる起きる。起きまくりよ!」
皆さん、忘れてると思うけど、一応言っとくと、アエラさんはこれから起きることが分かってるらしいですよ?
天使びっくり……
うんまあ、ここだけの話、分かってる奴だから連れてきた感はあるけども、
そこら辺はあれだ、諸事情だわ。
仕事がスムーズに行くように仕向けたって感じだわ。
へえ、と、相槌を打つと、ロエルはアエラに向き直る。
珍しく真剣に聞くつもりらしい。
「どうなるの?」
「貴方が、殺されまーす!!」
「ん、ついに?」
「うん。ついに」
………。
頭おかしいと思ったそこの貴方。
正解。
天使はさあ、残念ながら未来のこと分からないわけ。
(支給された書類読んでないだけとか言えないけど。)
とにかく、こんなあっさり死ぬとか死なないとか、言えます?普通。
天使はさあ、死とかないし。
死ぬって言うより消滅するって感覚だから、よく分からないけど、人にとっての死ってそんなものじゃないでしょ?
自分の死の方が客観的に見れるとかって奴?
う、う~ん。
「なんで死ぬのかね?」
「王子の親衛隊に殺されるよ?」
「ざすっと?」
「ざすっと。」
「あっそ。」
振っていた木刀の曲線を指でなぞり、ロエルは笑った。
「あはっ、困ったなあ。殺されるのかぁ。」
「まあね。如何するの?黙って殺されるってのも手だと思うよ?」
待て待て待て、
君たちが殺されたら自分が怒られるんですよ?
ねえ、ねえ聞いてます?って、聞こえてないよね。
あのねえ、折角連れてきたのに殺されてみなさい、
自分、上司からぼこぼこにされますよ?只でさえ評価悪くて首の皮一枚って感じなのに。
まあ、自業自得と言われたら言い返せないけど。流石に上司の羽にペンキで色塗ったら怒られるか。
でもさあ、仕事くらいはするってのが自分の評価なわけ、
性格最悪、仕事は出来る。
それで行ってるからマジよろしく。
「痛くない?」
「痛いだろ。でも、姉さんどうにか出来るでしょ。」
「………こういうときだけ人任せ。ロエルが蒔いた種たんだから、最後まで責任持ちなさいよ。」
「じゃあ、手伝って。」
「……。はいはい、可愛い妹ちゃんに頼まれたら、しゃあないね。」
アエラは立ち上がり、んー、と背筋を伸ばす。
ぱきぱきと小さな音が鳴った。
「体鈍って仕方ないわ。おばあちゃんになっちゃいそう。」
「運動不足だね。」
軽く会話を交わしながら、二人は寮の家屋へ戻っていく。
その姿を見るものはいない。
朝早いからでもあるし、
彼女たちの姿隠しがあまりに強力だったからでもある。
***
こんにちは。まりりあです。
新章突入!って感じですぜ。
ロエルさんが主としてやっていくつもりです。
よろしくお願いします。
では、また次回。




